不動産投資で法人融資を引くにはどのような決算書を作るべきか
不動産投資で継続的に融資を受けるために法人の決算書をどのように作ればいいのかの概要について、「法人属性」で不動産の融資を引くには決算書の改善が有効な理由にて述べた。
前項で述べた通り、「①安定的に利益を得ていること」「②債務超過状態ではないこと」をまずは実現する必要がある。
それに加えて、以下の③-⑥の内容についても実現できていると、融資は更に引きやすくなると言える。
③自己資本比率が高いこと
潤沢な資金があることをアピールすれば融資は当然下りやすくなる。
自己資金を増やして自己資本比率を高めることで金融機関にこれをアピールできる。
原則は毎期の利益から自己資本を積み立てることだが、短期的に自己資本比率を高める場合は、債務超過回避の方法と同様、社長個人や血縁者などからの増資を受ける方法がある。
また、社長個人や親類、役員などからの長期借入金を自己資本の一部であると考える金融機関もある。
可能な場合は借入を関係者から行うことで自己資本比率を高め、融資の下りやすい貸借対照表にすることもできるだろう。
④当期利益と減価償却費の合計額が大きいこと
融資の返済原資が豊富にあることをアピールするには、当期利益と減価償却費の合計額は大きい方が良い。
金融機関では決算書から簡易に返済原資を推定する方法として、減価償却費は実際の現金支出を伴わない費用であるため、実際に自由になるキャッシュフローは当期利益と減価償却費の合計であるという考え方に則り、以下のような計算式を使っている。
返済財源(フリーキャッシュフロー)=当期利益+減価償却費
負債の返済はフリーキャッシュフローから行うため、この額が大きければ融資の返済にも余裕があるだろうと評価されるのだ。
更に金融機関からの不動産投資における融資可能額の上限は以下の様に求められていると言われる。
不動産投資における融資可能額の上限額=(当期利益+減価償却費)×20 or 5~10
フリーキャッシュフローに20を乗じる考え方は、金融機関は実物資産の担保がある場合は融資期間は概ね20年程度を想定しているという考え方に基づいているようだ。
一方、5~10を乗じる考え方は、不動産投資以外の一般的な事業運転資金の融資の場合は5~10年の回収期間を想定していることから来ているとみられる。
これは簡便に概算値を得るための式であり、実際の審査ではより細かく計算がされているようだが、概ねの目安を考えるための指標としては有用だろう。
フリーキャッシュフローを大きくするためには、本業でどれだけ利益を出して上の式の当期利益を大きくできるかにかかっている。
そのため、短期的に一気にフリーキャッシュフローを大きくする方法は一概には言えない。
償却の前倒しが認められる場合もあるが、これは税理士などに相談してみた方が良いだろう。
尚、前述のように減価償却費は実際の現金支出を伴わない。
そのため、決算書上赤字になっている理由が不動産など金額が大きい資産を保有していて減価償却費が本業での利益に食い込んでしまっている場合は、赤字の理由を説明できれば考慮される場合もある。
⑤不動産投資専業の法人であること
新設法人は実績が乏しく融資審査のハードルは高くなるので上級者向けになるが、不動産投資専業の法人を設立することも有効な場合がある。
金融機関が計算する返済原資は、基本的には投資対象となる不動産からの収入であるため他事業の運転資金や赤字補填のために不動産収入を使うことは嫌がられる。
そのため、不動産投資専業の法人で不動産投資を行うようにすれば、金融機関に不動産収入の流用リスクは低いとみられやすくなる。
⑥不動産投資事業の実績がわかりやすいこと
既に収益物件を保有し運用している場合は、保有物件の入居率・収支・担保価値などの資料を添付して以下のような実績をアピールすることも有効だ。
・不動産事業の経営能力が高いこと(入居率が高いこと)
・信用棄損を起こしていないこと(物件の担保価値>ローン残債額であること)
・不動産事業が黒字体質であること(収支が黒字であること)
審査が進めばほぼ必ず金融機関側から詳しい資料を求められるので、これらの資料は最初から添付する方が良い。
融資を利用して多くの物件を購入し、短期間のうちに安定的なキャッシュフローを確保したい場合は金融機関からの融資を短期間に、かつ継続的に受けることになるので、スムーズに融資を受けるためにもこの3点は添付資料でしっかり訴求しよう。
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この記事の監修者
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