「節税できる不動産投資」と「儲かる不動産投資」は別物である

2020年12月16日1,957

不動産投資を始める動機が「節税目的」だという人もいるだろう。

書籍や雑誌などでも「節税対策としての不動産投資」の特集が組まれることも度々あるため、サラリーマンにとっては興味深い話題に違いない。

確かにサラリーマンとして働いているだけでは、購入したスーツや靴などが経費となることは当然ない。

だが、不動産投資を行うことで必要な飲食代や資料代、タクシー代などが経費として計上出来るようになるため、サラリーマンにとってはそうした経費化の誘惑が不動産投資に興味を抱かせる一因にもなっているかと思う。

しかし、単純に考えて、利益が出る物件を購入すれば利益が出た分だけ税金を納めなければならない。

つまり「儲かる不動産投資は節税にはならない」ということで、反対に「節税効果の高い物件ほど儲からない物件」と考えることもできる。

考えてみてほしい。

短期的な節税対策になるとは言え、儲からない物件を購入して持ち続けることに不安にならないだろうか?

今回はこの「節税対策としての不動産投資」は「儲かる不動産投資」とは相反する概念だということを説明していこう。

サラリーマンが不動産投資で節税できる仕組みとは?

確かに、サラリーマンが税負担を軽減できるのは、給与所得控除や配偶者控除、扶養家族控除、医療費控除や保険控除、寄付控除(ふるさと納税)くらいしかないのが現状だ。

それが、収益物件を購入すればより広い範囲で経費計上が可能になる。

経費として認められるのは、収益物件に関わる固定資産税・都市計画税などの税金、損害保険料、ローンの利息金利、修繕費、管理会社への委託費などである。

それに加えて、建物の減価償却費が経費になる。

減価償却とは、建物の経年劣化に沿って購入時に支払った建物代金を後から経費化していく会計処理の仕組みだ。

つまり実際に支払っていない金額を経費として計上できるのだ。

それ以外にも、物件を見に行ったり業者さんに会いに行く等の交通費や、業者さんとの情報交換を兼ねた会食代、資料として購入した書籍代なども経費にできる。

特に収益物件を購入した年は、「不動産取得税」や「登録免許税」、「登記費用」「仲介手数料」など多く項目が経費となる。

そのため、初年度は赤字(不動産収入よりも出て行く経費の方が多くなる状態)になる場合が多いのだが、その際の赤字はサラリーマンの給与所得と合算できるため、所得税、住民税を下げることが出来る。

これがいわゆる、「サラリーマンが不動産投資で節税できる仕組み」なのだ。

だが、赤字であればサラリーマン給与と合算して節税となるが、赤字化しない=儲かる不動産投資においては節税にはならず、当然利益が出た場合は税金を納めることになるのだ。

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経費を積み上げて赤字化した場合のデメリット

また、節税効果を大きくする為に、マイカーの維持費や自宅部分の光熱費など様々なものを経費化したとする。

確かに、マイカーの維持費や自宅部分の光熱費は不動産投資で使用しているのであればその割合において経費にすることは可能だ。

ただ、こうして細々と経費を積み上げていって赤字化できたとしても、実は不動産投資において大変なリスクが生じてくる。

それは、融資が付かないというリスクだ。

不動産投資においては融資付けが最も難しく肝心な部分であるのだが、利益が発生しない物件を抱えていると、追加で融資を受けづらくなってしまう。

いい物件があっても融資が付かなければ買うことは出来ない。

多少の節税のために、融資が付かなくチャンスを逃すことになれば、大きな損失であり本末転倒といえる。

収益を上げることが最優先

ここで不動産投資を行う目的を再確認したい。

不動産投資の目的は「収益を上げること」、この一言に尽きるであろう。

そのような前提で優良物件を取得して運営すれば当然、利益が増えて税金の支払いも増えることになる。

税金を納めることは、不動産投資で成功していることに他ならないのだ。

つまり、最初にも述べた通り、不動産投資と節税は相反する関係にあり、双方を同時に成立させるのは難しいと言える。

本当に成功したければ、安易な節税の方向に走るのではなく、儲かる不動産の購入に力をいれるという選択肢を選ぶべきである。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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