不動産の減価償却を使い有利に節税を行う

2020年12月18日896

不動産投資のメリットの中でも見逃せないのは、減価償却によって節税ができるという点だ。

減価償却の仕組みを知る

具体的なメリットについて説明する前に減価償却の仕組みについて知っておこう。

減価償却とは、固定資産(設備・機材など、通常一年を超えて利用されるものである。不動産投資ではもちろん不動産のことだ)を購入した際に購入費用を資産として計上し、その資産が価値を有している期間に購入費用を配分するという会計処理だ。

資産が価値を有している期間のことを減価償却期間、各期間に配分された費用のことを減価償却費という。

減価償却の方法には定額法(毎年同じ額だけ減価償却する方法)と、定率法(前年度の資産残存額に毎年同じ率を乗じて減価償却費を計算する方法)の二つがあるが、定率法は平成10年1月以後に取得した建物については適用できない。

また、土地は一般的に減価しないという前提になっているため、不動産投資においては減価償却は建物にのみ適用される。

イメージを持ってもらうために、1,000万円の不動産を購入したとして、減価償却期間(耐用年数という)が5年(通常はより長い期間と考えられるが単純化のために短い期間を設定した)、減価償却期間満了時の価値率(これは残価率という)が0%の場合の減価償却処理を見ることにする。

【表1 減価償却イメージ 単位:万円】

購入時 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
資産額 1,000 800 600 400 200 0
減価償却費 200 200 200 200 200 0
減価償却累計額 0 200 400 600 800 1,000

この場合、固定資産(=不動産)の価値が1,000万円、減価償却期間が5年なので、1年当たりの減価償却費は1,000万円÷5年間=200万円だ。

表1を見てみると、当初の資産額1,000万円が1年毎に200万円ずつ減価償却費の形で価値が減っている。

減価償却費の額の合計を減価償却累計額というが、減価償却期間の最終年度である5年目で資産額が0円となり、減価償却累計額が1,000万円、当初の資産額と同額となっていることがわかる。

実際の減価償却に当たっては耐用年数の設定が大きく関係してくるが、国税庁のホームページに建物の耐用年数表などが掲載されているので、参考にしていただきたい。

ここで注目したいのは、減価償却はあくまで会計処理上このように購入費を配分する処理であって、減価償却費は実際にお金が出ていかない費用であるということだ。

表1ではキャッシュが実際に出ていくのは購入時の1,000万円だけで、毎年の減価償却費は実際にキャッシュを出す必要はない。

つまり、毎年必要となる減価償却費は、表1でいう減価償却累計額の形で手元にキャッシュとして残るのだ。

この点に着目して、減価償却計画を綿密に立てておくことで、税金の金額をある程度コントロールして合法的な節税策に役立てることができる。

節税を意識して投資を行えば最終的に残るお金をさらに増やすこともできるので、この点について以下の例を読んで理解をしておいて欲しい。

損益通算を利用した節税

損益通算とは、所得税の課税対象となる2種類以上の所得がある場合に、一つ以上の所得が赤字、他の所得が黒字というときに一定の順序で黒字と赤字を差引計算し、利益と損失を合算して計算できるという仕組みである。

不動産投資では減価償却費を毎年の費用として計上できるため、減価償却費を高く設定できる不動産を選べば、不動産所得を赤字に誘導したりすることができる。

不動産所得が赤字であると、他の所得(雑所得など)の黒字から差引できるので、所得税・住民税の課税所得(個人の場合)、法人税・法人住民税の課税所得(法人の場合)を引き下げることになり、ある年に支払う税金額を減らすことができるというわけである。

ただし、不動産を最終的に売却する際には、売買価格(時価)と簿価(減価償却後の資産額)の差額を税金として支払うことになるので、長期的スパンで見ると支払う税金は同額になる。

よって、この方法は税金の支払時期を先送りしているということになる。いわゆる課税の繰り延べだ。

ただし、最終的に支払う金額は同じでも「現在手元にあるお金」と「将来入ってくるお金」では現在手元にあるお金の方が価値は高い。

現在手元にあるお金は銀行に預けておけば利子率は低いとはいえ毎年利子を得ることもできるし、他にもそのお金を使って再投資できるなど、自由に使うことができるため、そのような形でお金を増やすことは立派な節税対策と言える。

含み資産の形成による経営の安定

不動産投資を行う場合、損益通算を利用した税金の繰り延べに加え、含み資産の形成による経営の安定化効果や保険的効果を得ることもできる。

不動産投資以外の事業を本業として行っている場合、本業が好調な時期に減価償却費を多く計上できる不動産に投資することによって、本業の黒字を減らし、減価償却費分を不動産資産として蓄えることができる。

一方、本業が不調な時期に含み資産となっている不動産を売却すると、不動産売却益は損益計算書の特別利益に計上されるため、赤字幅を減らしたり、最終利益段階で黒字決算に変えることもできる。

このように、減価償却には業績の好・不調の波を平準化し、経営を安定化させる効果があるのだ。

では、ここで含み資産の形成プロセスについて見ていこう。

以下の表2は、前述した表1に土地価格の概念を加え、さらに時価(売却可能額)の欄を追加したものである。

この表2の設例では当初土地500万円(土地は減価しないので減価償却期間を通してこの額のまま)、建物1,000万円の資産を購入し、5年間で建物部分を定額法で減価償却するものとする。

不動産簿価額は土地価格+建物価格だ。

イメージの単純化のため、時価は1,500万円で変わらないものとする。

【表2 含み資産の形成イメージ 単位:万円】

購入時 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
土地価格(=簿価) 500 500 500 500 500 500
建物価格(=簿価) 1000 800 600 400 200 0
不動産簿価額 1500 1300 1100 900 700 500
減価償却費 200 200 200 200 200 200
減価償却累計額 0 200 400 600 800 1000
時価 1500 1500 1500 1500 1500 1500

ここで、不動産簿価額と時価の差に注目してほしい。

購入時は1,500万円で同額であるが、1年目、2年目と時が経つにつれて、減価償却累計額と同じ分だけ簿価額と時価には差が生じている。

つまり、時価が変動しないとすると、減価償却累計額の分だけ含み資産が増えていくことになるのだ。

減価償却費は実際にキャッシュが出ていかないので、その部分は現金として手元に持っていることができるため、減価償却累計額は含み資産となるわけだ。

仮に本業が不調の時はこの物件を売却し、本業の赤字を補填できる、つまり本業の営業不振にそなえた保険的効果を得ることができるのである。

ただし、このためには価格が下がりにくく、売却したいときにも買い手が見つけやすい不動産(例えば現在の市況では価格が下がりにくい都心部の築年の古い木造アパートなど)を選んでおく必要がある点には留意したい。

また、土地は減価しないので、物件の建物価格を多く取って、投資対象不動産に占める建物価格、つまり減価償却可能額を増やしておくことも大切だ。

個人所得との通算で所得税減税を図る

この方法は、個人のみが利用でき、法人が不動産を購入する場合には利用できないことに注意してほしい。

不動産の売却益を個人所得と通算することで所得税の減税を狙う方法だ。

日本の所得は下の表3に示すとおりの税率による累進課税となっている。

【表3 所得毎の最高税率(個人)】

所得額 195万円まで 330万円まで 695万円まで 900万円まで 1,800万円まで 4,000万円まで
最高税率 10% 20% 23% 33% 40% 45%
住民税均等割

一律10%

平成27年度からは4,000万円以上の所得額の個人の最高税率は従来の40%から45%に引き上げられることになっている。

この表のように、課税所得額が大きくなると、所得税率も表3のとおり高くなるため、税金額も大きくなる。

この時に、例えば定年、子会社への出向、退職等によって給与所得が激減することとその時期が事前にわかる場合や、法人経営者などで直近の業績が好調なため報酬額が大きいため課税所得が大きくなったが、将来課税所得が激減することが予測できる場合などは、所得が高いときに不動産を購入し、低くなったときに売却することで、税率自体を下げることができる場合がある。

所得の変化に合わせて不動産をコントロールすることで、より大きな節税を図ることもできるということだ。

長期保有で大幅な節税を図る

これも個人のみ利用できる節税策である。

不動産を売却した場合には、その売却益に対して不動産譲渡所得税が課税される。

ただし、この譲渡所得税の税率は、その不動産の保有期間によって税率が大きく変わる。

その基準となる期間は税法上の基準日ベース(譲渡・売却した年の1月1日時点)で5年間、5年以下だと「短期譲渡所得」、5年超だと「長期譲渡所得」として課税される。

短期譲渡所得とされた場合の税率は約39%、長期譲渡所得とされた場合の税率は約20%、まさに20%近い税率の差が出てくる。

表3の所得税率(最高税率)45%+住民税率10%=55%と比較すると、売却を5年以上先送りすることで20%の税率にすることができるので、大幅な節税が可能となるのである。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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