不動産投資の税金3(物件保有時の税金)

2020年12月18日496

晴れて決済が終わり、物件の購入が出来た。しかし、不動産投資の税務処理はこれからが本番だ。

これからは、不動産賃貸業を営む者として、正確かつ確実に税金を納めないといけなくなる。

物件保有時に掛かる費用・税金は以下のものがある。

・固定資産税、都市計画税
・借入金の利息
・管理費用(清掃費、各種メンテナンス費、光熱費)
・リフォーム費用
・減価償却費
・所得税、住民税(個人のみ)
・法人税(法人のみ)

一つずつ解説して行こう。

固定資産税、都市計画税

固定資産税、都市計画税(通称:固都税)は1月1日時点で不動産を保有している人に掛かってくる。

売買した年の固都税は、売主と買主で相談のうえ、一般的には期間按分して負担割合を決める。

その際の起算日は、関東であれば1月1日、関西であれば4月1日となる。

不思議なのだが、関東と関西で起算日が違うのだ。ちなみに、中部地方は1月1日にする方が多い。

売買を6月1日に行った場合、

関東だと1月1日起算なので、売主が12分の5、買主が12分の7

関西だと4月1日起算なので、売主が12分の2、買主が12分の10

という割合で固都税を負担することになる。

税額は、以下の式で計算される。

固定資産税:固定資産税評価額×1.4%
都市計画税:固定資産税評価額×0.3%

この税額が4分割され、3月31日、7月31日、10月31日、1月31日を期限として請求が税務署より来ることになる。

期初に一括納税することも可能だ。

借入金の利息

借入金の利息部分は経費化する。

注意が必要なのは、元本の返済は支出とみなされるので経費化が出来ないという点だ。

返済は単なる資金の返却なので、考え方としては妥当だろう。

管理費用

清掃費、エレベーターや火災報知器などのメンテナンス費、光熱費などは、全て経費として計上される。

リフォーム費用

リフォーム費用は、内容によって処理が変わってくる。

単なる修繕費の場合は、経費として費用計上される。

共用部のデザイン変更など、バリューアップのためのリフォームは、資本的支出となり資産計上される。

他には外壁塗装なども資本的支出になるだろう。

なお、何が資本的支出で何が修繕費化は、税理士の判断を仰ぐ必要がある。

考え方として、少額なものや原状回復に相当するものは修繕費にあたり、価値向上のためのものは資本的支出となる。

例えば、

給湯器の交換、エアコンの交換、クロス・フローリングの交換

などは、全て修繕費だ。

和室から洋室に間取りを変更した場合は、資本的支出になる可能性がある。

玄関をリフォームしてバリューアップを図った場合も、資本的支出になる。

資本的支出になるかどうかは税理士の判断が分かれるところなので、もし資産計上したければやる前に確認した方がいいだろう。

減価償却費

減価償却とは、長期間にわたって使用される資産の取得に要した費用を、その資産の使用期間にわたって費用配分することだ。

簡単に言うと、買ったときに一度に費用化にしないで、毎年少しずつの費用に分けるということである。

例えば、売り上げが1億円の企業が、1億円の自社ビルを買ったとして、その年に全額費用計上されてしまうと大赤字になってしまう。

そしてその翌年以降は、支出はビルの維持費だけになるので利益がかなり出てしまうかもしれない。

これを是正し、耐用年数に応じて少しずつ費用計上するための措置が減価償却だ。

不動産の耐用年数は、以下の通り法律で決まっている。

項目 耐用年数
木造 22年
軽量鉄骨(骨格材の肉厚3mm以下) 19年
軽量鉄骨(骨格材の肉厚4mm以下) 27年
重量鉄骨(骨格材の肉厚4mm超) 34年
れんが・ブロック・石 38年
鉄筋コンクリート 47年

中古物件の耐用年数は、

耐用年数-築年数+築年数×0.2(小数点以下切り捨て)

で計算される。

築15年の重量鉄骨の物件を購入した場合、

34年-15年+15年×0.2 = 22

となり、1÷22=0.046(4.6%)が定額法の償却率となる。

建物価格×4.6%が毎年の償却価格になるのだ。5,000万円の建物なら、230万円が毎年償却可能となる計算だ。

所得税、住民税

個人の所得税と住民税は以下の通り決められている。

給与収入・所得 所得税・住民税
195万円以下  15%
195万円超~330万円以下の部分 20%
330万円超~695万円以下の部分 30%
695万円超~900万円以下の部分 33%
900万円超~1800万円以下の部分  43%
1800万円超の部分 50%

法人税

法人税は、以下の通り決められている。(資本金1,000万円以下の場合。)

所得 法人税
800万円以下 15%
800万円超 25.5%

これに、法人住民税、事業税をあわせた実効税率は約38%になる。

個人の場合、所得額が900万円を超えると法人税の38%を超えるので、不動産賃貸業として法人化した方が良いことになる。

ただし、法人は設立の際や、税理士費用などにお金がかかる。

また、役員報酬は年一回しか改定できないなどの不都合な点もある。

しかし法人の場合はどれだけ所得が増えても実効税率は38%の以上にはならない上に、経費化できる範囲も拡大する。

いつ法人化すればよいかは難しい問題だ。これという回答は存在しない。

しかし本気で不動産投資に取り組むのであれば、いずれは法人化が絶対に必要になる時が来る。

それであれば、税理士費用などの細かいことは考えずに、出来るだけ早めに法人を設立する方が良いと言えるだろう。

不動産売却にかかる税金は?投資用・居住用で異なるポイントに続く

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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