アパート経営で信用毀損を回避することが重要である理由
不動産投資を事業として行って一定規模のキャッシュフローを得たい場合、不動産を追加購入して投資規模を拡大する必要がある。
その際気を付けなければならないのが、「信用毀損」に陥り追加融資を受けられなくなってしまい、追加投資ができなくなってしまうことだ。
「信用毀損」とその回避方法について把握しておく
「信用毀損」とは、ローンの返済残高が投資家の信用力と所有物件の担保価値の合計を超えてしまっており、追加融資が受けられない、または受けにくくなている状態のことだ。
例えば個人投資家が大企業に属していたり、公務員であるなどして金融機関から高い信用力を有しているとみなされる場合、つまり物件価値が低くても本業の給与収入も返済原資として見込んで融資を受けられる場合を考えてみよう。
この場合、最初の物件を購入する際は、たとえキャッシュフローが少ない物件でも金融機関からある程度の融資を受けられる場合が多いだろう。
しかし、2件目の追加投資を行う際はすでに本業からの収入は返済原資として金融機関の勘定に入れられているため、物件の担保価値が融資の可否を大きく左右する。
つまり最初に担保価値が低い物件を購入してしまっていると次の融資は受けにくくなるということだ。
一度信用毀損に陥ると、金融機関から自己資金の積み増し要請を受けるため、追加投資が難しくなり早期に資産形成を行うことが難しくなる。
信用毀損を避けるためには、金融機関の担保価値評価方法を理解して物件の評価額が高い物件を購入することで担保余力を維持する必要があるのだ。
金融機関の物件価値の評価方法には積算評価と収益還元評価がある。
これらについて詳細に知っておくことで信用毀損を回避できる可能性が高くなるため、ぜひ以下で押さえておいて欲しい。
積算評価を理解する
積算評価は「評価時点の土地評価額+評価時点の建物評価額」で評価される。
土地と建物の現在価格を別々に評価しその価格を合算するという方法で、理論値を用いてにストック(資産)を評価する方法と言える。
土地評価額は以下のように求められる。
路線価については国税庁のホームページや全国地価マップ(http://www.chikamap.jp/)などで公表されている。
建物価格は以下のように求められる。
残存耐用年数は「法定耐用年数-築年数」で求められる。
建物の再調達価格は、「評価時点においてその建物を新築するといくらかかるか」表しており、そこから築年に応じた減価額を差し引いて評価時点の建物価格を求めるわけだ。
建物の再調達価格は主に構造によって相場が決まる。
時期によっても異なるが、現在は概ね以下のとおりとなっている。
【表 建物の再調達価格の概ねの相場】
構造 | 再調達価格 | 法定耐用年数(住宅用) |
---|---|---|
木造 | 10-16万円/平米 | 22年 |
S造(軽量鉄骨) | 10-16万円/平米 | 27年 |
S造(重量鉄骨) | 13-18万円/平米 | 34年 |
RC造 | 16-22万円/平米 | 47年 |
SRC造 | 16-22万円/平米 | 47年 |
※S造(軽量鉄骨)については骨格材厚み3mm以上4mm以下のもの。
設例を一つ見て、実際の積算評価額の試算方法を見ていこう。
土地300㎡、路線価は150,000円/平米、建物は築10年のRC造マンションで延床面積1,000平米、建物再調達原価は20万円とする。
土地価格は土地面積×路線価なので300平米×150,000円/平米=4,500万円だ。
建物の残存耐用年数は法定耐用年数47年-10年=37年。
よって建物評価の式に当てはめると、
200,000円/平米×1,000平米×37年/47年=約1億5,745万円
と求められる。
よって、積算評価額は土地評価額4,500万円+建物評価額約1億5,745万円=約2億245万円となる。
実際に融資上限を決定する際は、この積算評価額に70%~100%(借入人の信用度などによって変動する)の担保掛目を乗じる場合が多い。
ここまで読んで、なぜ金融機関が実勢価格とはことなる金額となる積算評価法を採用して資産性を計算しているのかについて疑問に思ったかもしれない。
金融機関からすると、万一返済が滞った場合でも物件を競売すれば積算評価額に担保掛目を乗じた価格で売れると考えられることや、物件概要書があれば評価が簡単できることなどから、担保主義だった時代からずっと採用している計算しやすい方法なのだ。
信用毀損を回避し、純資産がプラスの状態を維持する
金融機関は積算評価額=物件の担保価値と判断する場合が多い。
そのため積算評価額>物件価格であれば担保余力があると判断され融資を受けやすくなり、場合によってはフルローンやオーバーローンも受けられるだろう。
一方、積算評価額<物件価格の場合や、積算評価額<融資額の場合であると担保割れと判断され、信用毀損に陥ってしまう。
金融機関は積算評価額以上の融資を行う場合があると言っても、それは借入た人の他の資産や給与所得も返済余力として計算しているからであり、この場合は2つ目や3つ目の物件に追加投資する場合に融資が受けにくくなってしまう。
そのため、資産を早く形成していくには信用毀損を回避することが重要になる。
信用毀損に注意しながら物件購入をすると、純資産(不動産評価額-借入金額)が常にプラスの状態を維持できることで債務超過も回避できるので、その後の借入の障害にならないという効果が得られるからだ。
金融機関はこれらの評価方法を公開しておらず、物件評価額を示してくれる場合も少ないので、自分で評価方法を把握して信用毀損を回避していくことが重要となる。
収益還元評価についても理解しておくことが必要
金融機関の不動産評価方法には、積算評価に加えて収益還元評価があり、不動産投資事業に積極的に融資をしている一部の金融機関で採用されている。
積極的に融資を受けるためにはこれらの金融機関とはぜひ取引したいところなので、収益還元評価についても把握して欲しい。
収益還元評価は不動産から生じるキャッシュフローに着目して評価額を求めるもので、積算法がストック面からみた評価であるのに対し、フロー面から見た評価と言える。
年間キャッシュフローは以下の式で求めることができる。
年間家賃は、空室率を考慮して「満室想定家賃収入×(1-空室率)」で求められる。
公租公課とは不動産保有にかかる税金、具体的には固定資産税・都市計画税だ。
空室率や年間運営費用はパーセント表記で割合を計算する。
地域や立地条件によっても差があるが、空室率は15%~25%程度、運営費用については15%~25%程度で想定される場合が多い。
実際に設例を設定して年間キャッシュフローを求めてみよう。
物件価格を5,000万円、融資予定金額を3,000万円、融資条件は金利4.5%・ローン期間20年・元利均等返済、固定資産税・都市計画税は50万円と仮定し、満室想定家賃収入500万円、空室率15%、運営費用20%と想定して年間キャッシュフローを求める。
尚、年間のローン返済額は想定される融資条件が分かれば、エクセルでPMT関数を使って求めることができるので、関数辞典などを利用するのも良いだろう。
年間キャッシュフローを求めると以下の通りとなる。
年間家賃は満室想定家賃500万円×(1-空室率15%)=425万円
年間ローン返済額230万円
年間運営費用は満室想定家賃500万円×20%=100万円
固定資産税・都市計画税は50万円
以上の通り求められるので、年間キャッシュフローは以下の通りである。
年間家賃425万円-年間ローン返済額230万円-年間運営費用100万円-固定資産税・都市計画税50万円=年間キャッシュフロー45万円
年間キャッシュフローがプラスなので、収益還元評価では3,000万円の融資予定額は妥当という評価になる。
尚、この設例では最終的な年間キャッシュフローで見たネット利回りが0.9%と低い利回りとなっているが、ローン返済額には金利分に加え元金返済額も含まれているので、この部分が実際は資産として積み上がっていくことは忘れないで欲しい。
積算評価と収益還元評価の関係
金融機関によっては積算評価と収益還元評価のいずれも評価手法として採用している場合があり、担保価値はどちらか低い方の評価額が採用される。
また、積算評価では空室率などを考えないため概ね一定の評価額が得られるが、収益還元評価は空室率などが大きな評価要素となっている。
これによって例えば運営・管理がまずく空室率が大きく実際のキャッシュフローが十分に出ていない場合は、積算評価>融資額となっていても、収益還元評価<融資額となり担保割れと評価されるケースもあるので注意したい。
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この記事の監修者
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