不動産投資家は金利上昇にどう備えるべきなのか?

2020年12月17日1,569

収益物件の融資を受けて物件を購入したのちに金利が上昇すると、収支に大きな影響を及ぼすことになる。

多くの人が融資を受ける際に、変動金利、もしくは3年や5年など一定期間だけ固定金利となる固定選択型の変動金利を選択しているだろう。

変動金利は国が国債として毎月入札形式発行する新発10年国債の利回りの影響を受ける。

日本の財政が更に悪化すると国債の利回りが上昇する懸念が起きるが、これが財政破たんと住宅ローンの金利上昇を結びつけて議論されていることの理由である。

日本の財政破たんを懸念する声は根強くある。

リーマンショック(2008年)以降の金融緩和により、日本を含めた各国の金利は一時的に低い状態になっているが、主要先進国の政府債務残高を見ても日本が抱える借金の額は相対的に大きくなっている。

長期的な視点で見ると国債の利回り上昇に伴って日本の長期金利も上昇する方向性であることは間違いない。

ただし日本国債は9割以上が国内の金融機関や投資家によって保有されているという特殊な状況であり、数年以内に国債が暴落すると考える専門家はあまりいない。

国債の消化を国外の需要に頼っておえり、実質的に破綻したギリシャなどとは、根本的に異なる仕組みで運用されているのである。

金利が上昇したらどうなる?

では、実際に金利が上昇したらどうなるのかについて説明しよう。

メガバンク・地銀をはじめとする多くの金融機関は、1%~2%前後の金利で収益物件に対する融資を実行している。

しかし、融資審査の段階ではリスク金利として4%程度の金利設定でストレスをかけて収支計算を行っていることが多い。

つまり、金利が上昇しても収益が回るだけの物件にしか融資を行っていないという実状があるのである。

1億円の物件を利回り10%、返済期間25年、金利2%で借り入れをして買うと、返済金額(利子+返済)は年間312万円になる。

金利が4%まで上がると返済金額は633万円まで上がるが、これは15%程度の空室率を含めてもギリギリ赤字にはならない水準である。

金利上昇時にはインフレになっているので家賃を上げられる可能性もあるが、物件の家賃は上がらず、金利だけが上昇した想定である。

物件を購入する際は、このように金利上昇時のキャッシュフローがどのようになるのかを、確認しておくと良いだろう。

金利が10%を超えるようなハイパーインフレになることは、その懸念は決してゼロではないものの、まだその状況は想定しづらいという声が専門家の中では優勢を占めている。

先に述べた新発10年国債の利回りが上昇しても、国債はいわゆる固定金利によって金利を支払うので、過去に発行した国債の支払いが急に増えることはない。

長期国債の中には、国債が発行されてから償還(払い戻し)するまでの期間が40年というものもあるからである。

財務省の発表によると、2015年3月時点の国債の平均残存期間は8年0カ月となっている。

日本の経済規模は世界3位の大きさであり、米国債をはじめとする対外債権も多く保有している。

この国の金融システムがハイパーインフレなどにより制御不能になることは、ヘッジファンドなどを除き基本的には誰も望んでいないのである。

楽観的過ぎる見通しを持つことは危険だが、金利負担が増えると、不動産オーナーよりも住宅ローンを抱えている投資家以外の人たちのほうが深刻に困ることになる。

このような事態に陥った際は、過去に存在した中小企業向けのモラトリアム法の個人版などが施行され、金利の減免や支払期間の延長などが認められる可能性もある。

この項で挙げた客観的な事実を踏まえると、数年以内に危機的な金利上昇が起こる局面を迎える可能性は極めて低いと考えることができるだろう。


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この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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