モデルケース別のおすすめ投資!自分にぴったりの投資法を選ぼう
昨今、「老後2000万円問題」や「終身雇用制度の崩壊」など自らお金を蓄える必要性を問う報道が目につくようになった。予期せぬ失職や退職後の生活に備えてお金を増やしたいと考える人も多いだろう。
しかし、うわべの理解で闇雲に投資を始めることや、安易にうまい投資話に飛びつくことは禁物だ。本稿では、投資をするにあたっての心構えや考え方に触れたのち、初心者にもおすすめの投資法の概要と始め方を解説する。また、モデルケース別に事例も紹介する。
目次
1.「投資」で「お金のゴール」にたどり着くための具体的なステップ
もしもお金がたくさんあれば、あなたはどんな生活を送りたいですか?「港区にマンションを買って、高級外車に乗って、時計も欲しい」「毎年家族と海外旅行に行ってその土地の美味しい料理とお酒を楽しみたい」「仕事を辞めて田舎に大きな庭付き一戸建てを買い、ペットとゆっくり過ごしたい」誰しも一度はこんな妄想を膨らましたことがあるのではないだろうか。夢に描く生活を送るために「お金」が重要であることは事実だろう。
一方、「健やかに老後を過ごすためには自分で2000万円を蓄える必要がある」「日本を代表する大企業ですら終身雇用制度を維持できない」などお金の不安をあおる報道も多くなされている。夢に描くような豪華な生活は送れないまでも、家族で慎ましく暮らすためのお金は蓄えたいという人も多いはずだ。
では、その大切なお金はどのように確保すれば良いのだろうか?
お金の貯める手法としてまず頭に浮かぶのは「銀行預金」であろう。銀行預金も「投資」の一種だ。預け入れたお金には預金金利がつくため、預けておくだけでお金が増えていくことになる。実はバブル経済の渦中であった1990年代には普通預金金利は年率5%を超えていた。預金口座に入れておいた100万円が1年後には105万円、2年後には110万円、3年後には116万円になっていた計算になる。ほとんどリスクなく5%の金利を得られる非常に優秀な投資商品であった。
しかし、バブル崩壊後の2000年代以降、日本の預金金利は下がり続け、現在は金利水準が限りなく0%に近づいている。2021年7月の普通預金金利は比較的金利水準が高いインターネット専業銀行でも0.2%程度だ。
このような環境下では、銀行預金口座にお金を預けておいてもお金が増えることはほとんど望めず、預金以外の投資を行う必要があるだろう。
投資でお金を増やすために必要なステップは以下の通りだ。
投資でお金を増やすステップ
ステップ | 内容 |
---|---|
Step1 | 投資とは何か?概要を学ぶ |
Step2 | 投資でたどり着きたい「お金のゴール」を決める |
Step3 | 投資の元手となる資金を確認する |
Step4 | 投資対象とスタイルを選び実践する |
Step5 | 定期的に経過を観察し見直す |
順番に解説する。
Step1:投資とは何か?概要を学ぶ
まず、投資とは何か確認しよう。「投資とは将来の資本①を増やすために、現在の資本②を投じる活動」のことだ。本稿では「お金」を増やすという観点で投資を考える。そのため、「資本①=資本②=お金」と考えて欲しい。将来のお金(資本①)を増やすために、現在のお金(資本②)を投じるのが本稿でいう投資の意味合いだ。
なお、投資①②は必ずしも「お金」に限った行為ではない。例えばお金を増やすことを目的に「自分で頑張って働こう」と思う人であれば、「将来のお金(資本①)を増やすために、現在の自分の労働力(資本②)を投じる」ことになる。あるいは友人関係の質を高めたいので、友人との時間には金を惜しまない、という人であれば「将来の交友関係の質(資本①)を増やすために、現在のお金(資本②)を投じる」ということになる。
いずれにせよ、現在持っている資本を投じて将来何か得ようとする行為が投資だ。
全ての投資には不確実性(リスク)が伴う。現在の資本を投じても、必ず望む結果が得られるとは限らない(下方リスク)のだ。あるいは、望む以上の結果が得られる(上方リスク)こともある。
そして、一般に投資とは、望んだ結果を得られる確率が合理的な範囲になるよう、投資対象と投資方法を選択する行為を指す。なお期待する結果が大きければ大きいほど、不確実性も高まる(ハイリスク・ハイリターン)という性質があると言われている。
これに対し、過度に結果を期待し、過度なリスクをとって資本を投じる行為を投機と呼び、両者は区別される。投機の一例はカジノなどのギャンブルだ。一瞬で投資元本が数倍になるという期待のもと資本を投じるのだが、その結果が得られる確率は極めて低く、かつ期待する結果を得るための手法に合理的な説明がたたないという性質がある。
まとめると、投資とは将来望むだけのお金を得るために、現在のお金を投じる行為で、一定の不確実性(リスク)がある行為のことだ。しかし、その不確実性は投資対象と投資手法を選択することで合理的な範囲におさえることができるということも覚えておきたい。
Step2:投資でたどり着きたい「お金のゴール」を決める
次のステップは、目的とする生活を実現するために将来のいつの時点でいくらのお金が欲しいかを決めることだ。「マイホームの頭金として5年後までに500万円貯める」とか「夫婦二人のゆとりある老後生活のために、15年で3000万円貯める」など人によって様々だろう。
投資を始めるにあたってはこのような「お金のゴール」を具体的に定めることが重要だ。後述する通り、世の中には投資対象と投資手法が数多く存在し、それぞれ特徴が大きく異なる。そのため出発点として何を目指すのかを定めておく必要があるのだ。「お金のゴール」を定めないまま投資を始めると「近所のスーパーに行くためにプライベートジェットをチャーターする」という愚かな道を歩むことになりかねない。
「何を目指して何年後にいくら欲しいのか」まずはしっかり自問してみよう。難しければ、フィナンシャルプランナーなどが書いているライフプランニングの本を参照してみるのも良いだろう。
Step3:投資の元手となる資金を確認する
将来お金を手にするためには、現在のお金を投じる必要がある。自分が投資に回せるお金がいくらあるか確認してみよう。給与振り込み用、貯蓄用の銀行預金にはいくらあるか。眠っているタンス預金も確認しよう。
さらに、毎月投資に回せるお金や、ボーナスなどの臨時収入から投資に回せるお金についても見積もってみよう。
投資対象や投資手法によって、投資を始めるために必要な金額は異なるが、元手となる資金が多いほど、得られる結果は大きくなり、取るべきリスクは小さくてすむのが一般的だ。
Step4:投資対象とスタイルを選び実践する
投資と聞いて思い浮かぶのは何だろうか。代表的な投資対象は株式、債券、投資信託、不動産などがある。しかし、例えば株式をとっても大型株、小型株、国内株、海外株、上場株、非上場株など様々な区分がある。投資用不動産にも一棟アパート、区分マンション、戸建てなど様々だ。
さらに投資のスタイルも実に様々だ。株式では短期集中投資のデイトレード、スイングトレード、長期の分散投資、配当狙いの高配当株投資などがある。不動産では毎月の家賃収入を狙う手法や物件価値自体が高くなることを狙う手法がある。
あまりに組み合わせが多いため、困惑してしまいそうだが、Step2で決めたゴールを実現するためにStep3の資金を元手に投資していくことが基本だ。投資対象と投資スタイルによって投資の結果得られる金額(リターン)とその結果が得られる不確実性(リスク)が異なる。自分はどの投資対象とどのスタイルを選ぶべきか選択が必要だ。
対象とスタイルが決まったら投資を実践しよう。株、債券、投資信託であれば証券会社、不動産であれば不動産会社を通じて購入することが一般的だ。
詳しくは次章「初心者におすすめの投資方法6つと始め方」で解説する。
Step5:定期的に経過を観察し見直す
投資には常にリスクが伴う。一度投資してしまえば、あとは勝手にお金が増えてくれるなどということはないし、仮に増えていても目指すゴールを達成する水準になっているとは限らない。そのため、投資の経過を定期的に観察して、必要があれば資金を引きあげ、他の対象に投資し直すなどの「見直し」を行うことが求められる。もちろん、リスクが低い投資対象、投手手法を選択していれば見返しの頻度は少なくてすむのだが、完全に手放しで良いということはない。忘れずに定期的に見直す姿勢が必要だ。
2.初心者におすすめの投資方法6つと始め方
多少興味を持って「投資」について調べたことがある人なら、極めて奥が深い「投資」の世界には、難解で複雑な投資方法が多数存在することも想像に難くないはずだ。しかし、先述の通り、投資対象と投資手法は投資家自身が設定するゴールと元手資金によって選ぶべきだ。複雑怪奇でリスク管理が難しい手法は豊富な資金を元手にでき、知識レベルの高いプロの投資家がとるべきもので、初心者は決して取り組むべきでない。
ここでは、初心者にも取り組みやすいおすすめの投資を6つ紹介する。
①株式投資
期待リターン:高(年率5%~) リスク :高 難易度 :高 必要資金 :数万円〜数十万円 |
概要
株式とは企業の所有権のことだ。株式を発行する企業は、株式を投資家に買ってもらうことで資金をえて、企業活動を行うことができる。
一方、株式を保有する投資家は保有する株数に応じて、企業の経営に参画する権利を得る。また、企業が利益の一部を投資家に還元する配当金を得る権利も得る。
投資家が得る金銭的なリターンはこの配当金と株式の売却益だ。
個人の投資家は証券会社を通じてめぼしい株式の購入注文を出し、保有期間にわたって配当金を得ることになる(注1)。そして機を見て株式を売却することで購入額との差額としての売却益を得ることもできる(注2)。
注1)企業が稼いだ利益のうちどの程度を配当金として投資家に還元するかは企業の方針による。方針として配当金を出さない企業も存在するし、事業状況が厳しくやむなく配当金を出せない場合もあることに注意が必要だ。
注2)なお、一部の企業は保有する株式数に応じて株主へ「株主優待券」を配布している。例えば食品メーカーが自社製品の詰め合わせを受け取る権利を優待券としているケースもあれば、小売店チェーンが自社で使える割引券を優待券としているケースなど様々だ。株主の中には、配当金や売却益に加えて、この株主優待券を目的に株式を保有する人もいる。
おすすめの投資スタイル
初心者におすすめなのは、日本語で投資情報が取りやすい日本の大企業の株式を配当獲得目的で数年間にわたり保有することだ。馴染みのある企業の株を保有すれば、企業の経営計画、新商品の発売による業績への影響、政治と経済の関係など、これまで気にしなかった情報に関心を持てるはずだ。株式を保有することは企業の一部を保有することに他ならないため、経営目線、投資家目線で企業を捉えるための良いきっかけとなるだろう。短期的な株価の浮き沈みは気にせずに、配当金が払い込まれることを確認すれば、投資していることを実感できるだろう。
もちろん、少額から投資を始めることが前提だ。株式は価格が刻一刻と変動することに加え、企業が上場廃止になった場合など、最悪の場合は保有する株式の価値がゼロになる可能性もある。最悪なくなっても良いと思える余裕資金の範囲で株式の購入を進め、徐々に投資額を増やしていくと良い。
また、株価が買値を1割下回ったら売却するなど、損失を過度に抱え込まないための「損切り」についてもあらかじめ検討しておくと失敗しづらい。
始め方
株式の購入するためには証券会社に口座を作ることが必要だ。数十万円からの少額の投資を前提とするのであれば、SBI証券や楽天証券、カブドットコム証券などのインターネット証券での口座開設をおすすめする。株式の売買には証券会社へ支払う手数料がかかるのだが、店舗を持って運営する対面の証券会社に比べインターネット証券会社の方が、手数料が割安な傾向があるからだ。
例えば「SBI証券」などとインターネットで検索し、証券口座を開設してみよう。最近は身分証明書の含め申し込みの全てのプロセスをインターネットで完結できる場合もあるため、郵送などの手続きなしに手軽に口座開設できる場合もある。
証券口座の開設がすんだら、銀行口座から証券口座へ資金を入金して、実際に株式を購入してみよう。
②債券投資
期待リターン:低(年率1%~5%) リスク :低 難易度 :低 必要資金 :数百万円以上〜 |
概要
債券とは国や自治体、企業などの発行体が資金調達の手段として発行する券面のことだ。発行体は債権の購入者に対して借金を負うという格好になり、債券の発行条件に記された期限が到来すると発行体は債券保有者に対して発行額を全額返金する(借金を返済する)という決まりになっていることが一般的だ。また、発行体は発行期間にわたって債権保有者に対して決められた利率に従って利子を支払うことになる。
債券保有者から見れば、満期まで保有すれば額面金額が返ってくるという約束で発行体にお金を貸し、保有期間は利子を受け取れるということになる。
債券も株式同様に市場で取引されるため需給によって価格が変動する。しかしながら、発行体の信用力が高ければ、利払いの遅れや満期時点の返済(償還)ができなくなる恐れが少ないため、株式ほどの価格変動はなく比較的価格は安定している。ただし、安定している分、期待リターンは比較的小さい(年率数パーセント程度)ことが一般的だ。
おすすめの投資スタイル
株式などの金融資産に比べてリスクが少なく、着実に金利収入を得られる債券投資は、リスクを抑えた投資を希望する人にはおすすめだ。信用力の高い発行体である国や自治体、国内の大企業、米国の大企業などが発行する債券を投資対象としてはどうか。証券会社が募集をしている新規発行の債券を探してみよう。海外途上国の政府が発行する国債や新興企業が発行する社債などの場合、利率が比較的高く設定されることがあるが、利払いが遅れたり、満期が到来する前に発行体が破産してしまったりすることがあるなどリスクも高くなることに注意が必要だ。
債券の場合、株式や投資信託などの金融商品と比べて最低購入額が高いことが一般的だ。数百万円の資金が必要となる場合が多いため、大きな金額を安定的に運用したい人に向いていると言える。
始め方
債券についても購入には証券会社や銀行などの金融機関で投資用の口座を作ることが前提となる。一般に銀行よりも証券会社の方が購入可能な債券の種類が豊富で、ネット証券などで口座を開設すれば、国債、地方債、社債など様々な債券が購入可能だ。
③投資信託/ETF投資
期待リターン:中(年率5%~10%) リスク :中 難易度 :中 必要資金 :数万円 |
概要
投資信託は株式や債券、不動産などの複数の金融商品を投資対象とした投資パッケージ商品だ。個々の投資信託商品ごとに投資対象や運用のスタイルが異なるのだが、対象の選定や入れ替えなどをプロの運用者が担ってくれる。複数の投資対象に分散することで、個別の株式などに投資するよりもリスクを抑えながらリターンをえることができる。さらに、数万円からの投資が可能となるなど初心者でも取り組みやすい特徴がある。
パッケージの中に組み入れる投資対象次第で、株式型、債券型、不動産型などのタイプがある。また、例えば株式型でも先進国株式、エマージング国株式、人工知能関連株式など中心となる株式の特徴によって商品の特徴が異なる。
おすすめの投資スタイル
初心者におすすめなのは、日経平均や米国市場インデックスなど市場平均指数に連動する商品だ。これらの指数に連動する商品は個別の株式や債券に投資するよりもリスクが抑えられているので、安定的にリターンを得られる。さらに、毎月数万円など一定額を積み立てる積み立て投資をすることもおすすめだ。一度にまとまった金額を投資するのではなく、積み立てによって投資するタイミングを分散することで更なるリスク抑制効果を得られる(ドルコスト平均法)。
なお、近年では、投資家のリスク許容度と目標リターンに応じて、投資信託とETFの投資配分を自動的に調整してくれるサービスも存在する。いわゆるロボアドバイザーというサービスで、WelthNavi(ウェルスナビ)、THEO(テオ)などが有名だ。どんな投資信託/ETFにいくらずつ投資したら良いかわからない、という人はこれらのサービスを利用してみても良いだろう。簡単なアンケートに答えるだけで、自分にぴったりの投資配分をお勧めしてくれる。毎月指定の銀行口座から積み立て資金が自動的に引き落とされ、ロボアドバイザーによって運用されるため、手間が少なく簡単に資産運用を始められる。
始め方
投資信託の購入についても証券会社や銀行で投資用の口座を開設することが前提となる。株式や債券と異なり、毎月の積み立ての設定ができることも多いため、合わせて検討したい。例えば、投資信託の購入に充てられる予算金額が毎月3万円ある場合、給与が振り込まれる銀行口座から3万円を自動引き落としして、あらかじめ指定した投資信託の購入に充てるという設定が可能だ。自動引き落としの設定をかけておけば、購入のし忘れなく、着実に投資額を増やすことができる。プロに運用を任せながら、中長期視点で安定的に資産を増やしたい人にうってつけの方法と言えるだろう。ロボアドバイザーの場合は、個別サービスのホームページなどから申し込みすると良い。
注意点は、運用を任せる先(販売会社、運用会社、信託銀行など)に対して報酬を支払う必要があることだ。これらの手数料は運用報酬と呼ばれ、運用中の財産から毎日差し引かれることが一般的だ。中には年間の手数料率が数パーセントになる投資信託も存在する。例えば年間のリターンが7%あっても、手数料率が3%であれば、保有者が得られる実質的なリターンは差し引きで4%となる。購入の際には過去のリターンだけでなく、運用報酬にも目を向け、実質的なリターンの水準を見積もるべきだ。
また、先におすすめした指数連動の投資信託は手数料率も低く抑えられていることが多いのでコストの点でも利点がある。
なお、保有期間にわたり毎日負担する運用報酬とは別に、購入時に一度だけ負担する販売手数料がかかる場合もある。こちらも数パーセントの負担となる場合があるため、よく確認する必要がある。販売手数料の水準は概ね0~3%程度だが、注意が必要なのは、投資対象や運用スタイルが同じなのにも関わらず、手数料水準が異なるファンドが存在することだ。特に指数連動のファンドでは、運用者のスキルによる運用成果の差が出にくいため、内容が同じなのであれば、手数料が安いファンドを選ぶ方が賢いと言える。
コラム1:証券投資の節税策(NISAとiDeCo)
ここまで、株式、債券、投資信託などの金融商品への投資を解説した。実はこれらの投資には得られた配当や金利、売却益にかかる税金が存在する。投資の経験をある程度積んだ人なら、この税金が持つインパクトがいかに大きいかわかるだろう。
例えば株式を保有する期間に得られる配当金は支払われる時点で約20%の税率で税金(所得税、復興特別所得税、住民税)がかかる。株式保有者の口座に振り込まれるのは、税引き後の金額となるわけだ。また、金融商品の売却時に売却益が発生する場合にも同様に税金が発生する。
これら金融商品にかかる税を優遇し、金融商品の購入や自身の資産形成を促すための国の制度が存在する。うまく活用すれば大きなメリットを得ることができる可能性もある。
NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)
NISAは株式の配当や投資信託の分配金、それらの売却益などにかかる税金が一定の条件のもとで非課税になる制度だ。年間の投資額の上限が120万円などに設定されるなどの条件があるが、5年間で合計600万円の非課税枠が用意されている。20歳以上の成人であれば誰でも利用することができるので、これから投資を始める人は是非とも検討したい制度だ。個別株式の売買が可能なNISAの他、投資信託の積み立てに特化した積立NISAなどがある。金融庁や証券会社が詳しく解説しているのでインターネットで検索してみてほしい。
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)
NISA同様に個々人の資産形成を促す制度がiDeCoだ。iDeCoは加入者が自らの資金を拠出し、運用することで将来の年金を自ら形成することを目指す私的年金制度だ。年金を受け取れる(積み立たてたお金を使える)のは60歳以降であるという制限があるものの、毎年の積立額が課税所得から控除されたり、拠出した資金で購入した金融商品にかかる運用益にかかる税金が非課税であったり、年金受け取り時の税金が優遇されたりと税制上のメリットが非常に大きい制度だ。企業年金との併用など、加入に当たっての諸条件があるので、iDeCoの公式サイトで確認することから始めてみてほしい。
④クラウドファンディング投資
期待リターン:中(年率3%~10%) リスク :中 難易度 :低 必要資金 :数千円〜数万円 |
概要
クラウドファンディングは個別具体的なプロジェクトの資金調達を行うための仕組みだ。
個々の企業を対象として資金の提供を行う株式や社債とは異なり、集めた資金の用途が個別具体的なプロジェクトに限定されるという特徴がある。CampfireやReadyfor、Makuakeなどのクラウドファンディング業者が有名で、投資家はこれら事業者のサイトに掲載されている個々のプロジェクトを支援するために一口数千円から数万円の資金を提供することになる。金銭的なリターンやプロジェクトが成功したあかつきに完成する新しい商品を得る権利の獲得を追求する株式型や債券型の投資タイプの他に、単に意義あるプロジェクトを応援することを目的とした寄付型などの投資タイプがある。昨今SDGsやESGなどの社会に良いことを目指す気運の高まりも後押しとなり、寄付目的でプロジェクトを応援する人も増えているようだ。
おすすめの投資スタイル
上記事業者のサイトを見れば実に多様なプロジェクトが存在することに驚くはずだ。これらのプロジェクトは株式でいうところの上場審査など、信用力の審査を経ていないため、プロジェクト主催者を如何に信用し、応援したいと思えるかが投資判断の重要な基準となることも特徴の一つだろう。これはと思えるプロジェクトを見つけたら、少額から応援してみてはいかがだろうか。
始め方
上記クラウドファンディング事業者のサイトでアカウントを作成すれば、誰でもプロジェクトを応援することができる。証券口座開設時に求められた厳格な本人確認が不要な場合もあるため、アカウント開設すれば即日から投資が可能だ。
⑤FX(外国為替証拠金取引)
期待リターン:高(年率10%~) リスク :高 難易度 :高 必要資金 :数百円〜 |
概要
業者に預けた「証拠金」を元手として国際通貨の取引を行うのがFXだ。FXはForeign eXchange(外国為替)に由来した呼び名だ。為替相場に従って、相対的に安くなった通貨を買い、高くなったところで売ることで利益を得るという仕組みを基本としている。また、保有する通貨の金利も収入となる。外貨預金との違いは、拠出した証拠金の数倍〜数十倍の金額の範囲で取引することができる(レバレッジをかけられる)ことだ。この仕組みを使うことで少ない資金で大きな投資効果を得ることが可能にある。一方、損失も大きくなる可能性がある。
おすすめの投資スタイル
少ない元手資金で始められ大きな投資効果が期待できる一方、過度なレバレッジの活用は大きな損失を生むことにもつながる。初心者におすすめなのは、日本円と米国ドルなど、相場感のある通貨ペアの取引を少額、低レバレッジから試してみることだろう。刻一刻と変化する為替チャートの動きが気がかりで仕事が手に付かないということにもなりかねないので、米国の失業統計や、大統領選挙など為替に大きな影響を及ぼすイベントの近辺などでは取引を行わない(ポジションを閉じる)などの工夫をしても良いだろう。
始め方
FXを始めるには専用業者である外為ドットコムやDMM FXの他、FXを取り扱う証券会社などでのFX専用口座の開設が前提となる。開設後、銀行口座から入金を済ませたら、取引対象とする通貨ペアとレバレッジ倍率を決定し、取引を開始しよう。
⑥不動産投資
期待リターン:中(年率3%~20%程度) リスク :中 難易度 :中 必要資金 :数百万円〜 |
概要
不動産を保有することで家賃収入や売却時の売却益を狙う投資を不動産投資という。投資対象はマンション、アパート、戸建て、ビル、土地など多様で購入に必要な金額も数万円から数十億円まで幅が大きい。不動産投資の特徴は、物件の購入にあたって金融機関から融資を受けられる可能性があることだ。例えば、3000万円の木造アパートを購入する際に、自己資金は500万円で、残りの2500万円は銀行からの融資を活用し購入することで、手持ち資金の範囲を超えた物件の取得が可能になり、その分大きな収益を得ることができるというわけだ。金融機関の融資姿勢や購入する物件の評価次第では自己資金を全く入れることなく不動産を取得できる場合もある。
一方、過度な借り入れによって、家賃収入に占める借り入れ返済額が大きくなりすぎると不動産の運営に必要な費用や税金を賄えなくなったり、毎月の収支が赤字になり、手出しが必要になったりするケースもあるため注意が必要だ。
おすすめの投資スタイル
不動産投資の醍醐味はなんといっても融資を活用して手元資金だけでは到底買うことの出来ない大規模な不動産を購入し、毎月のキャッシュフロー(家賃収入と借入返済、必要経費などの差額)を得ることにある。しかし、先述の通り過度な借入は命取りになりかねない。借入を行う前提で大規模な物件を購入し運営していくか、もしくは借入を行わずに自己資金だけで購入を進めるという手法もある。後者の手法では、借入金の返済が発生しないため、空室が出ても手出しをすることなく不動産投資の運営を続けることができる。
始め方
借入を前提とした不動産投資に関心があるのであれば一度コンサルタントや不動産業者に相談してみると良い。物件の斡旋や金融機関も紹介してくれるケースがある。ただし、悪質な業者も多く存在する業界だ。本や動画などでよく勉強してから相談に及ぶことが必須だ。
また、融資なしで数百万円程度の戸建てを購入し、修理したのちに「戸建て賃貸」として貸し出す手法も昨今人気がある。いきなり融資を引くのは怖いが、家賃収入を得ることに関心があるという人は戸建て投資に挑戦してみるのも良いかもしれない。同様に団地などの一室を現金で購入する区分投資は不動産投資の初心者でも始めやすいだろう。現金での投資を希望する場合は、コンサルタントや不動産業者にその旨を伝え、自己資金額や希望するエリアの物件などを紹介してもらおう。
コラム2:「投資」が怖い人でも始めやすいポイント投資
昨今、「ポイント投資」のサービスが多数登場している。ポイントとはショッピングの際に購入額に応じて付与されるおまけのようなもので、例えば楽天市場でネットショッピングしたい際に、付与されることがある楽天ポイントがそれだ。このポイントは1ポイント1円相当として次回以降の買い物に使えるという性質があるものの、現金ではない。
仮想の通貨であるポイントを運用するサービスが「ポイント投資」だ。例えば楽天の「ポイント運用」やPayPayの「ボーナス運用」などのサービスがある。ショッピングなどで獲得したポイントを増やすために、コース(許容するリスクと期待するリターン)を選んで運用するというものだ。コースを選ぶという手軽な操作だけで、ポイントが増減していくという株式や投資信託への投資に似た感覚を体験することができる。
「お金(現金)を投資するのが怖い」という人でも、お金を失うことなく「投資」を体験することができるため、無理なく始めることができる投資の一つだ。
3.あなたはどんな投資を選ぶ?先輩投資家が実践する投資法をモデルケース別に解説
投資初心者向けにおすすめの投資と始め方を解説した。ここでは、これから投資を始める3名をモデルケースとして取り上げ、何を目標にどんな投資を実践する計画なのか見ていこう。
モデルケース1:株式投資を実践中の30代会社員Aさん 目標は10年でセミリタイア |
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・30代前半独身の男性サラリーマンのAさん ・45歳までに田舎でのセミリタイアを目指す ・国内企業の株式500万円分保有 ・10年後に年間の配当所得を120万円得たい ・株式投資を実践中 |
都内在住のサラリーマンであるAさんは、株式投資を実践する30代の独身男性だ。現在の資産は国内企業の株式500万円で、10年後に年間の配当所得120万円を得て田舎でセミリタイアすることを目指している。 Aさんは現在株式を500万円程度保有しているが、今後毎年200万円を目安として購入する株式を増やしていき、10年間で2000万円の株を追加購入する方針だ。Aさんは配当利回り5%程度の国内の高配当株だ。 10年間は得られた配当金を使うことなく、再投資に回し投資規模を拡大することを想定している。 例えば、現在保有する500万円の株式が全て配当利回り5%の銘柄だった場合、税引き後の受け取り配当金は20万円(500万円×5%×(1-税率20%))程度になる。この配当金は保有期間にわたり毎年受け取ることができるので、10年で200万円ほどの配当金収入を見込む。さらに、今後毎年買い増しを行う株式も同様に配当利回り5%程度の銘柄を購入し、配当金で高配当株を購入していく想定だ。 10年後には3000万円程の高配当株を保有し、年間120万円の税引き後配当所得を得ながら、田舎に移住してゆっくりと暮らすことを目標にしている。 |
モデルケース2:投資信託積立中の20代会社員Bさん 目標は自宅購入資金1000万円 |
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・20代前半独身の女性公務員のBさん ・35歳までに自宅購入の頭金1000万円の確保を目指す ・手持資産は現金150万円 ・投資信託で毎月5万円の積み立て投資を計画 |
福岡在住の公務員であるBさんは、20代前半の女性だ。35歳までに自宅を購入する予定であり、頭金の1000万円を今後10年間で貯めることを想定している。 Bさんは住宅の頭金にしたいということもあり着実な資産形成を希望している。そこでBさんが計画しているのは、米国株式の指数に連動した投資信託を毎月積み立てることだ。現在手持ちの150万円に加えて毎月5万円(毎年60万円)を積み立てていく。総投資額は10年で750万円(150万円+60万円×10年)になる。この期間、年平均4%程度の利回りを狙っていく想定だ。想定通りの運用ができれば10年後の資産額は970万円程度となり、ほぼほぼ目標達成という訳だ。 ナスダック、NYダウなど米国株式インデックスは過去10年では概ね年平均5%を超える運用成績で推移しており、Bさんが目標とするリターンは必ずしも積極的すぎるというわけではない。 |
モデルケース3:不動産投資に挑戦したい40代自営業Cさん 老後資金を蓄えたい |
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・40代の子育て男性の自営業Cさん ・65歳までの約20年間で夫婦の老後資金を2000万円蓄えたい ・手元資金は500万円 ・手元資金を活かし金融機関から1500万円を借入、2000万円の不動産を購入する計画 |
Cさんは都内で自営業を営む40代男性だ。現在妻と中学生の子供と3人暮らしだ。20年後には65歳となり公的年金の受給開始年齢になるが、自らも2000万円程度の資金を不動産投資で蓄える計画だ。 目をつけているのは、埼玉県南部にある2000万円の木造アパートで、現状の表面利回りは10%だ。年間の家賃収入はおよそ200万円となる。このアパートを自己資金500万円と銀行の融資1500万円を活用して購入予定だ。 金利3%、20年間で返済した場合、返済額は年間100万円。加えて税金や管理費などを差し引くと、年間の手取り収入は80万円程度となる。 この手取り収入80万円を毎年蓄え、20年間で最大1600万円の収入を見込んでいる。もちろん、経年による家賃下落や維持費用、空室リスクがあるため、実際の収入が小さくなるリスクはあるものの、最低でも1200万円程度の収入が見込まれる。 C さんは、20年後に借入を全額返済したのち、地価と同額の1000万円で売却することを計画している。毎年の家賃収入と20年後の売却益の合計で目標とする2000万円に到達するという算段だ。 |
いかがだろうか。3名に共通するのは「何に使うお金を、いつまでに、いくら貯めたい」という明確な目的と目標を設定し、その実現に向けて自分に適した、現実的な投資手法を選んでいるという点だ。
投資に興味を持った当初は誰しも「株式」「投信」「不動産」などの投資対象や「デイトレード」「高配当株投資」などの投資手法に目が行きがちだが、それらは本来本質ではない。
目的と目標から投資対象と投資手法を選ぶことが肝心だ。
4.まとめ
理想とする生活を実現するために「お金」の計画を立て実践することはとても重要だ。そしてお金を増やす手段として投資が有効であることもまぎれもない事実だ。
本稿では初心者がお金を増やすための手段として「おすすめの投資」について解説したが、文中でも触れたように、どんな投資にもリスクが伴う。下手すると投資したお金を全て失ったり、資産を失い借金だけが残ってしまったりすることさえも起こり得るのだ。
流行っているから、家族や友人の間で話題だからなどの理由で闇雲に「投資」を行うことはおす進めできない。
自分にとっての投資の目的を整理した上で、適切な投資法を選び実践すべきだ。いつまでも思考停止せずに学び続ける姿勢を怠ってはならない。
この記事の監修者
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