レオパレス問題とその後~ “倒産”の可能性!?

2021年05月25日14,154

賃貸不動産大手のレオパレス21が設計・施工したアパートに法令違反が発覚した。問題のアパートは最終的に全国13,000棟以上となり、1万人以上の入居者が引っ越しを余儀なくされるなど社会へ与えた影響は甚大だった。レオパレスは事業再構築を急ぎ財務内容の改善を目指しているが、いまだ未解決の施工不良や、巨額の赤字など状況は厳しく、2021年2月には業績予想を下方修正し444億円の赤字となった。

この記事では「レオパレスの問題」とその根本的な原因、現在の経営状況からレオパレスの倒産の可能性までを詳しく解説する。

1.レオパレス問題とは?

賃貸不動産大手の「レオパレス21」(以下、「レオパレス」)が設計・施工したアパートの施工不良は、屋根裏にあるべき界壁がないなど建築基準法違反に繋がる深刻なものだった。

レオパレスの施工不良は、2017年の「サブリース契約」のトラブルに関する報道をきっかけに翌年5月に報道番組による独自の調査で発覚し、同社に所属している建築士の数人が建築士法に基づき行政処分を下されるなど大きな問題となった。行政処分の対象となった建築士は施工管理を怠り、不正を見過ごしたとして建築士の資格を取り消された。

問題の物件は着工前の設計段階では界壁の設置などが示されていたが、実際には屋根裏に設ける延焼防止用の界壁(仕切り壁)が設置されていなかった。施工不良はこのほか、2種類のボードを重ねるべき天井に一枚のボードのみが設置されている不備のほか、外壁に耐火性能が確認できない資材を使うなどどれも耐火性能や遮音性に問題があるものだった。

問題のアパートは最終的に全国で13,000棟にも及び、改修工事を理由に対象物件に住んでいる入居者が一方的に通知を受けて住み替えを迫られ14,000人もの入居者が突然の引っ越しを余儀なくされた。

問題発覚後は同社と利害関係のない弁護士で構成された「第三者委員会」によって事実確認と原因究明を目的とした調査が行われている。

行政処分を受けるほどの大きな問題に発展したレオパレスの建築不備でしたが、本質的な問題はその経営体質にありました。

2.利益優先の経営体質が根本的な原因に

第三者委員会の報告では問題が生じた根本的な要因を3つ挙げている。一つ目は法令順守を軽視して経営危機からの脱却や事業拡大を優先したこと、2つ目に経営陣のワンマン体制、最後に法令順守の意識やリスク感度、品質問題に対する当事者意識の欠如だ。

レオパレスはアパートの設計・施工から完成後の仲介・管理を請け負う仕組みで、「30年間の賃貸保証」「一括借り上げ」などをうたい文句に主に土地を持っている地主に金融機関から借り入れをしてアパートを建てさせた。

完成後は入居者がいてもいなくても30年間はレオパレスが毎月決まった額をオーナーに支払う「サブリース契約」だったが、アパートの乱立で入居者が減ってしまったことを理由に、10年超の契約については一方的に契約を解除、また10年未満の契約については強制的に減額を求める措置を「終了プロジェクト」として上層部からの指示により組織ぐるみで行っていたことが報道された。

また、着工後に界壁の設置をしない施工不備については当時の社長の指示だったことが外部調査委員会の調査により明らかとなった。社内では創業者である深山氏のリーダーシップやアイデアにより成長した側面があり、経営陣の意向が絶対という風潮があった。一連の問題は周囲の役職者が進言しにくい状況だったため起こるべくして起こってしまった問題であっただろう。

同委員会の調査では、当時の社長の深山氏が法令順守を軽視するイメージが定着していたことが、従業員が法令軽視を正当化する要因となっていたことが指摘されている。レオパレスが自社の調査結果を隠ぺいして発表をしたものの二日後に一転施工不良を認めて謝罪をするなど、法令順守や品質を軽視しても業績拡大を優先させる体質が見て取れる。

2018年の施工不良の発覚から既に数年経ったいま、どのような状況になっているのだろうか。

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3.レオパレスの新たな経営課題とは

施工不良の発覚後は、新たな経営陣のもと事業再建を急ぐものの遅々として進まない修繕や数百億円を超える巨額の赤字など新たな経営課題が浮き彫りとなった。レオパレスは21年3月期の通期業績予想を下方修正した。これで3期連続の大幅赤字となる。

2021年3月期第3四半期の決算発表によると、主に新型コロナウイルス感染拡大の影響により売上・利益ともに計画比でマイナスとなっている。営業利益は165億円の赤字、さらに純利益は250億円の損失となった。有価証券の売却益40億円が出ている一方、固定資産の売却に伴う減損損失37億円、退職金に補修工事関連損失7億円の特別損失が純利益を押し下げた。

新型コロナウイルス感染拡大が売上の低迷に繋がったのは、賃貸事業はレオパレスが「コア事業」として掲げている主要な事業だからだ。

レオパレスの賃貸ビジネスは、前述のとおりアパートのオーナーから「サブリース契約」をして賃貸の仲介・管理から収益を得る構造なので、入居率が下がってもオーナーへ支払う保証した家賃は変わらず、入居率の低下は売上高のみならず利益の減少にも直結する。

入居率は施工不良の改修および募集再開により20年1月末には採算ラインの80%台に回復したものの、主に新型コロナウイルス感染拡大の影響により法人契約のキャンセルが顕著となり同年5月には再び入居率が70%台へ落ち込んだ。

つぎに施工不良に関する修繕の進捗状況はどうだろうか。

新型コロナウイルスの影響による人手不足が要因で修繕完了時期を24年末までに大幅に延期した。レオパレス発表の「明らかな不備のある部屋」の約19万5,000戸のうち、21年1月末時点で改修が完了しているのは全体の21%程度にあたる約42,000戸に留まっている。

(出所:レオパレス21 IRニュース

現状のまとめ
・3期連続、巨額の赤字
・賃貸事業は損益分岐点の入居率8割を下回っている
・施工不良は未解決のまま

4.米投資ファンドからの資金調達もいまだ厳しい状況

一方、店舗の閉鎖や1,000人規模のリストラなどの対策を打ち出し、20年6月末には債務超過に陥るも同年9月末にはソフトバンクグループ傘下の米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループから570億円の支援を受けた。これにより債務超過は一旦解消し危機を乗り切った。

(出所:時事ドットコム)

しかし融資の条件はフォートレス側にかなり有利な内容となっている。総額570億円の支援のうち、新株予約権付きローンの約300億円については借入期間が5年で適用金利は14.5%だ。利息部分だけで最大で年40億円程度の支払いとなり、レオパレスの現在の財務状況では大きな負担となることは否めない。

融資の資金は補修に必要な工事費に約340億円、借入金返済と社債の償還金支払いの200億円に使用する予定だ。しかし、修繕がさらに延期したり入居率の更なる低下などが続くとローンの返済も重荷となり、最悪の場合資金が枯渇してしまうだろう。

(出所:レオパレス21 IRニュース

証券取引所では1年以上債務超過が継続すると上場廃止となる基準が定められているため債務超過の解消は急務でしたが、資金調達によりその局面を乗り切りました。がしかし、これで完全に倒産の可能性は無くなったのでしょうか。

5.レオパレスの倒産の可能性はある?

現預金など手元にあるキャッシュなどの運転資金が不足している企業は倒産する可能性が高い。運転資金が不足する要因は、長年の赤字経営、税金や返済額に関する認識不足や売掛金と買掛金のバランスが取れていないなどが挙げられる。レオパレスはどうだろうか。

レオパレスは21年12月末の決算報告で現預金は576億円と、営業損失等により20年3月末から28億円程度減少したものの、資金調達などにより前期末水準を概ね維持している。また、債務超過についても20年9月末にはフォートレスからの支援により一旦解消した。これらは安心材料となる。

ただし、大幅な赤字の改善は急務で、修繕をなるべく早く進ませることと入居率の回復が切り札となるだろう。

修繕の遅延や入居率の低迷は新型コロナウイルス感染拡大が要因としているが感染症の収束時期は誰にも予測でいない。収束までに数年かかる場合は、別の抜本的な対策を講じない限り経営改善への厳しい道のりであることが予想される。

もし仮にレオパレスが倒産したら入居者やオーナーはどうなるのか。レオパレスは設計・施工メーカーではあるが、アパート自体は各オーナーの所有物であるためこの点は影響がないだろう。

サブリース契約についてはレオパレスが管理会社となっているため、別の管理会社との契約もしくは、入居者とオーナーとの別の賃貸契約への切り替えは必要になるだろう。しかしながらオーナーと入居者が互いに合意できれば入居者は住み続けることができる。この場合、オーナーも引き続き家賃収入を得られるため大きな懸念とはならないはずだ。

一方、修繕が終わらないまま破綻し事業を続けられなくなった場合支払い能力がないだろうから、オーナーが納得のいく補償を受けられるかについては疑問が残る。倒産により修繕や金銭面の十分な補償が受けられないとなれば当然反発が起こることは間違いないだろう。

6.まとめ

この記事ではレオパレスの問題とその根本的な原因、また現在のレオパレスの経営状況から倒産の可能性までを解説した。

新型コロナウイルス感染の収束が救われる道となるが、収束までのしばらくの間は厳しい状況が続くことは否めないだろう。

レオパレスの施工不良が世の中に与えた影響は大きく看過できるものではありませんでした。現在も修繕の遅延などの経営課題が出ており、引き続き動向が注目されます。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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