不動産投資型クラウドファンディングとは?リスクと成功するためのポイント

2021年05月11日308

1万円から手軽に始められる不動産投資手法として、不動産投資型クラウドファンディングが人気を集めている。超低金利、老後資金2,000万円問題などの社会的な背景を受け、資産運用に対する興味・関心が高まる中、なぜ、不動産投資型クラウドファンディングが注目されるのか。この記事では仕組みやメリット・デメリットについて解説していく。

不動産投資型クラウドファンディングの仕組み

不動産投資型クラウドファンディング(※)とは、投資家がインターネットを通じて不動産投資ファンドに出資して収益物件を共同購入し、運用期間中の賃料や売却益から配当を得る投資方法だ。1万円から手軽に始められ、REITや現物不動産と比較して少額で投資できることが特徴だ。

※「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」ことを指す。主なクラウドファンディングの形式には寄付型、購入型、投資型があり、不動産投資型クラウドファンディングは投資型に分類される。

 不動産投資型クラウドファンディングREIT現物不動産
投資対象アパート・マンション・オフィス・テナント・ホテル・その他商業施設など幅広いアパート・マンション中心
物件選定×
分散投資××
流動性
利回り4%前後4%前後投資対象による
運用期間半年~投資家の判断による投資家の判断による
投資金額1万円~数万円~数百万円~
融資活用××

不動産投資型クラウドファンディングのメリットとデメリットについてもそれぞれ解説していく。

不動産投資型クラウドファンディングのメリット

少額から投資できる

不動産投資型クラウドファンディングは、1万円から手軽にはじめることができる。現物不動産投資では、数百万円程度の自己資金が必要になるが、不動産投資型クラウドファンディングは、手元資金でスタートすることが可能だ。

手間がかからない

賃借人(入居者)とのやり取り、管理費の支払い、保険の加入といった大家業については、ファンドの運営会社が行うため、出資者は手間をかけることなく不動産オーナーになることができる。

リターンが安定している

不動産投資における投資元本の評価は、株式等と比較して景気の影響を受けにくい。また、優先劣後方式(※)を採用している運営会社が多いため、安定性が期待できる。

※一般の投資家を優先出資者、ファンドを提供する運営会社を劣後出資者として資金調達し、利益が発生した場合は、優先出資者が優先的に利益を享受し、逆に損失が発生した場合は、劣後出資者が先に損害を負う仕組み。例えば、優先出資:80%、劣後出資:20%の場合は、物件価値が20%低下しても、一般の投資家の元本は影響を受けない。

安心感がある

不動産業界には、超大手企業から個人まで様々な規模の事業者が存在するが、不動産投資型クラウドファンディングの運営会社には上場企業も多い。上場基準を満たしたコンプライアンスやガバナンス体制を持つ運営会社を選ぶことで、安心感を得ることができる。

不動産投資型クラウドファンディングのデメリット

リターンが小さい

不動産投資型クラウドファンディングは、ファンドに共同出資するスキームを活用して少額から投資できることが魅力だが、投資金額が少額なためリターンの額は小さくなる。例えば、想定利回り4%、運用期間24カ月のファンドに10万円出資した場合に得られるリターンの総額は8,000円(税引前)となる。現物不動産投資であれば融資のレバレッジ効果を活用できるので、同じ想定利回りでもリターンの額は大きくなるが、不動産投資型クラウドファンディングではその効果は望めない。もちろん銀行の定期預金等と比較すると高い利回りではあるが、リターンを重視する投資家は物足りなさを感じるだろう。

元本割れの可能性がある

少額から安定的に運用できるのが不動産投資型クラウドファンディングの特徴だが、投資である以上、リスクは必ず存在し、場合によっては元本割れしてしまうケースもある。

成長段階の投資手法である

近年、不動産投資型クラウドファンディングが利用拡大している背景には、2017年に行われた不動産特定共同事業法の改正がある。同法の改正は、規制緩和によって新規参入を促し、新しい不動産投資手法としての定着や活性化を目的としていることもあり、現物不動産投資やREITと比較すると法規制が厳格でなかったり、運用上のルールが定まっていなかったりするのが特徴だ。そのため、例えばファンドの開示情報においてもフォーマットや項目が統一されていないので、投資家は、自分の目で運営会社やファンドを見極めることが重要となる。

投資できない可能性がある

人気のファンドには投資家が殺到して数分で完売することも多く、投資したくても投資できないケースが発生している。投資家を募集する方法には先着抽選2パターンがあるが、抽選方式を採用している運営会社やファンドは少数派だ。

流動性が低い

不動産特定共同事業者であるファンドの運営会社と出資者が商法上の匿名組合契約を締結して行われる不動産投資型クラウドファンディングでは、出資者は自分が出資した事業や投資についての処分権を持たないため、運用期間中の途中解約ができないことが一般的だ。また、解約できたとしても解約金が発生する可能性が高い。一部の運営会社やファンドでは途中解約が可能な場合もあるが、基本的に流動性は低いと考えておくのが良いだろう。

不動産投資型クラウドファンディングのはじめ方

1.運営会社を選ぶ

不動産投資型クラウドファンディングの運営会社は数多く存在し、それぞれ特徴がある。会社規模、上場/未上場、取り扱いファンドの種類、過去の運用実績など、様々な角度で比較してみると良いだろう。代表的な運営会社を紹介する。

Rimple

https://funding.propertyagent.co.jp/

不動産の開発・仕入れ・販売・賃貸管理などを行う東証一部上場企業のプロパティエージェント株式会社が運営を行う。投資対象は、都内中心部のマンションが多く、抽選方式で出資者を募集している。

TREC FUNDING

https://trec-funding.jp/

1950年に創業し、不動産の開発・コンサルティング・賃貸管理やホテル事業を行い東証一部とシンガポール証券取引所メインボードに上場するトーセイ株式会社が運営を行う。投資対象を首都圏エリアの一棟収益不動産に特化しているのが特徴だ。

i-Bond

https://www.i-bond.jp/

首都圏を中心に全国の主要都市で不動産の賃貸、売買、仲介斡旋およびコンサルティング業務を行い、2018年に東京証券取引所JASDAQスタンダード市場へ上場した株式会社マリオンが運営を行う。出資者次第で無期限で運用できる。

2.会員登録

どの運用会社を選んでも基本的な手続きは共通で、パソコンやスマートフォンから必要事項(住所・氏名・年齢・連絡先・年収・金融資産・投資経験など)を入力し、本人確認資料を提出すれば、数日で登録が完了する。

3.ファンドを探して出資する

各ファンドの募集ページには、以下のような情報が開示されている。想定利回り、運用期間などを確認して、自身の投資目的にあったファンドに出資しよう。

ファンド概要

・募集金額

・想定利回り

・想定運用期間

・最小投資金額

・最大投資金額

・募集期間

・収支シミュレーション

物件概要

・物件名称

・物件所在地(住所・最寄駅等)

・土地情報(敷地面積・用途地域・権利形態等)

・建物情報(築年数・構造・面積・戸数・設備等)

不動産投資型クラウドファンディングで成功するためのポイント

安心できる運用会社を選ぶ

不動産投資型クラウドファンディングの注目が高まる中、新規で参入する運営会社も多く、今後もその傾向は続くと予想される。少額から手軽にはじめられてリターンが安定している投資手法である一方で、最悪の場合は運営会社が破綻して出資金を失うリスクも想定されるので、まずは安心できる運用会社を選ぶことが重要だ。

開示情報が多いファンドを選ぶ

投資家が正しい投資判断を行うためには、ファンドの情報がしっかりと開示されていることが大前提となる。また、不動産投資クラウドファンディングは、基本的に1つのファンドで1つの不動産に投資する仕組みで、REITのようにリスク分散が行われていないケースが多いので、開示情報を元に自分がどんな収益物件に投資しているのかを事前にしっかりと把握するようにしよう。

相場を知る

都内のオフィスビルであれば3.54.2%、都内のワンルームマンションであれば4.3%というように、不動産投資の利回りには相場が存在する(※)。投資の世界では、基本的にリターンとリスクの大きさは比例するので、投資家自身が相場観を持ち、開示情報を元にファンドを選別していくことが重要だ。

※一般社団法人 日本不動産研究所「第43回不動産投資家調査」(202010月現在)

https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2020/11/55cfc65f3c8677e103dea6ef2e7f9d13.pdf

複数の運営会社を活用する

不動産投資型クラウドファンディングで投資効率を高めるためには資金を効率的に運用することが重要だ。逆に資金が運用されず手元にある期間が長くなると投資効率は低くなってしまう。不動産投資型クラウドファンディングでは、運営会社一社あたりが提供するファンドの数はそれほど多くないため先着や抽選から漏れて投資できなかったり、出資金額に上限があるため希望の金額を投資できなかったりというケースも発生する。その状態を回避するには、複数の運営会社を活用することが有効だ。運営会社に会員登録すれば新規のファンドに関する情報が随時届くので、複数の運営会社からできるだけ多くのファンド情報を収集し、資金の効率的な運用を目指そう。

不動産投資型クラウドファンディングは新しい投資手法であるため法規制も厳しくありません。そのため運営会社は本当に信頼できるものか、公開情報は正しいものか自分の目で慎重に判断をする必要があります。

まとめ

少額から手軽にはじめられ、銀行預金よりも利回りが高く、ある程度の安定性が期待できる不動産投資型クラウドファンディングは今後も注目を集めるだろう。また、最近では、海外不動産に特化した運営会社も登場など、サービスの広がりとともに市場の拡大が予想される。

ただ、不動産投資型クラウドファンディングは少額投資である以上、どうしてもリターンの額は小さくなりがちだ。リターンを重視する人は、融資を活用したレバレッジ効果が期待できる不動産投資もおすすめである。

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この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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