アパートの外壁塗装費用は600万円!修繕しないほうがいい理由

2020年12月16日7,293

アパートの外壁塗装をする際に気になるのが費用や期間だ。アパートの外壁塗装に必要な費用は約600万円程度かかることが多いが、果たしてやるべきなのだろうか?本記事では外壁塗装に必要な費用・期間に加えてやるかどうかをどのように判断するか解説を行う。

外壁塗装を検討する際にまず考えるべきは「本当に外壁塗装をやる必要があるのか」という点だ。仮にもし「毎月雨漏りが発生するような状況」なのであればすぐに外壁塗装の工事を実施する必要があると言えるだろう。

ただし、「空室率の改善」「家賃アップ」を目的にした外壁塗装の場合、費用対効果が合わないことがほとんどだ。

アパート経営は投資なので、外壁塗装も投資の観点で考える必要がある。

どうしても外壁塗装をやらなくてはならない事情がなければ、よくよく費用対効果を検証してやるべきかどうかを判断するべきだ。

アパートの外壁塗装費用や期間の目安は?

アパートの外壁塗装工事を行う際の費用と期間の目安からみていこう。

外壁塗装費用の目安は600万円!素材によって耐候年数と価格が変わる

アパートの外壁塗装の費用は、塗装面積だけでなく、塗料の種類や階数によっても変わってくる。そのため、一概には言えないが、だいたい600万円程度かかると思っておけばよいだろう。

外壁塗装用の塗料にはそれぞれ耐候年数(問題なく使用できる期間の目安)というものがあり、耐候年数が長い塗料ほど1缶あたりの価格が高く、塗装費用も高額になってしまう。

また、建物の総階数が2階、3階と高くなると、そのぶん足場が増えるため費用は高くなる。足場は総工費の4分の1程度を占めることが多く、総費用へのインパクトは大きい。

塗料の価格はメーカーや業者によって異なるが、一般的に次の表が目安となる。安い塗料を頻繁に塗り直すより、多少高くても1回の塗装を長持ちさせたほうが結果的に費用をおさえられることもある。

塗料の種類 耐候年数 価格(1缶あたり)

アクリル

約4年

5,000~15,000円

ウレタン

約6年

5,000~20,000円

シリコン

約8年

15,000~40,000円

光触媒

約12年

20,000~50,000円

フッ素

約12年

40,000~100,000円

ピュアアクリル

約15年

50,000~70,000円

無機配合型フッ素

約16年

40,000~100,000円

無機ハイブリッド
(変性無機)

約18年

50,000~120,000円

 

外壁塗装に屋上防水費用は含まれない!

アパートの外壁塗装工事をする際に屋上防水工事を追加で行うこともある。外壁塗装費用と屋上防水費用は別の工事なので、別途費用がかかる。屋上防水も工事の方法によって価格と耐候年数が変わってくるため、物件の状態にあった工事方法を選んだほうがいい。

外壁塗装と同様に、工事価格はメーカーや業者によって差があるが、おおむね次の表のようになる。

工事方法 耐候年数 価格(1㎡あたり)

ウレタン防水

約10~13年

2,500~7,000円

FRP防水(繊維強化プラスチック)

約10~15年

4,000~7,500円

塩ビシート防水

約12~15年

2,100~7,500円

アスファルト防水

約12~20年

5,500~8,000円

アパートの外壁塗装にかかる期間はどれくらい?

アパートの外壁塗装にかかる期間は、50~60坪程度の大きさであれば約2~3週間程度だ。ただし、雨の日が続いたり、気温・湿度の影響で施工ができなかったりすると、期間がのびる可能性もある。

注意したいのは、工事の期間が短ければ良い業者というわけではないことだ。なかには、施工期間をできるだけ短くしようと、本来気温や湿度の関係で塗装ができない日に無理やり施工をする業者も存在する。

また、入居者や近隣住民への説明が必要な場合もあるので、遅くとも2か月ぐらい前から準備を進めたい。なお、住民への説明は工事を行う会社がやってくれるため大家が自分でやる必要はない。

外壁塗装シミュレーション(築35年の物件)

外壁塗装にかかる費用は、塗料代プラス「足場代」と「施工費(人件費)」だ。足場代は、高所で作業を行う職人の安全を確保と施工品質を保つために、外壁塗装工事では必須となる設備だ。また、足場とともに飛散防止ネットが貼られるため近隣の建物へ塗料が飛散するのを防ぐ役割がある。

塗料の価格だけでは、外壁塗装費用の全体イメージがつかめないだろう。ここでは、築35年の物件の外壁塗装を行った場合、実際にいくらかかるのか、シミュレーションを「工事見積書」を用いてみてみよう。

項目

内容

築年

35年

部屋数

24室(ファミリータイプ)

延床面積

約1,000㎡

階数

3F建て

施工内容

外壁塗装、廊下内部塗装、ベランダ塗装

※屋上防水は含まれない

 

上記のケースでは、外壁塗装と廊下の内部塗装でおおむね618万円の費用がかかる計算になる。

ベランダ塗装と廊下塗装は多くの場合外壁と同時に行う。なぜかというと、外壁だけ綺麗なっても、外壁からせり出しているベランダや外廊下の部分の塗装が古いままだとちぐはぐに見えてしまうからだ。また、ベランダなどから雨漏りが発生しないとも限らないため、やるなら同時に行うのがいいだろう。

外壁塗装をする場合、まず高圧洗浄機を使って全体を綺麗にしてから、下地となるプライマーを塗る。そのあと二度塗装をすることが多い。今回の見積もりでは総額618万円に対して高圧洗浄費23.5万円、塗装費が319.3万円、足場が143.5万円、その他費用が131.7万円となった。

今回の例では延床面積が1,000㎡の物件に対する見積もりなので、自分の物件で検討する際は面積を割り戻して費用が妥当かを検証してみるといいだろう。500㎡の物件なら半分程度の費用(300万円前後)が目安となる。

外壁塗装はどのようなケースにおいてやるべきなのか?

外壁塗装を必ずやらなくてはならないとすると、それは次のような場合だ。

  • 外壁塗装を行うことを見込んで、高利回りの物件を購入している
  • 外壁の劣化がひどく、大規模な修繕がその都度必要になっている
  • 売却が決まっており、売主が外壁塗装を行う契約になっている

雨漏りなどの修繕が発生しているケースについてだが、目安として年4回以上対応が必要な修繕が発生しているのであれば外壁塗装を検討したほうが良いかもしれない。年4回以上雨漏りが発生しているならいま修繕が発生していない箇所についても相応に傷んでいることが予想される。

上記のケースに当てはまらないような「空室改善」や「物件のバリューアップ」を目的とした外壁塗装を検討しているなら要注意だ。

なぜなら、先述の通り外壁塗装を行うと600万円という多額な費用が発生するため、多少の家賃アップしか見込めない場合、費用対効果が合わないからだ。

外壁塗装による費用対効果のシミュレーション

外壁塗装を行った際の費用対効果について具体的にシミュレーションをしてみよう。

24部屋あり家賃の平均が5万円の物件があるとする。外壁塗装により、家賃が仮に全部屋3,000円アップするとしても年間86.4万円の収入増にとどまる。これを618万円の投資で実現しようとすると利回りは13.9%となる。

実際は、すでに入居している部屋の家賃が外壁塗装により上げられることはないので、半数が入れ替わったとしても6~7%程度の投資になると考えたほうがいい。

もし今現在すぐに外壁塗装が必要な理由がないのであれば、フリーレントを設けたり家具家電付きにしたりなどの対応にお金をかけたほうが費用対効果が良いことが多い。

アパートの外壁塗装みんなの悩みQ&A3つ

アパートの外壁塗装工事の際、費用のほかに「本当に修繕したほうがいいのか」「塗装業者はどうやって見つけるのか」「色は何色がいいのか」など疑問がでてくるだろう。ここでは、これらの疑問に答えていく。

Q1. 管理会社に「外壁塗装をしたほうがいい」と言われたが、修繕するべき?

築35年の木造アパートを所有しています。現在、8室中空室が3室ある状況です。先日、空室をなくしたいと管理会社に相談したところ「外壁塗装をすれば、外観が綺麗になるので入居者が入りやすい」と営業マンに言われ、施工を迷っています。たしかに、壁の見た目は黒ずみが目立っていてきれいではありません。修繕したほうがいいでしょうか?

A. 雨漏りなどのクレーム対応以外は修繕しないほうがいい

結論からいうと、このケースでは修繕しないほうがいい。

営業マンの意見は投資家視点でないため、「塗装費用を何年で回収できるか」という費用対効果は考えられていない。投資としてアパート経営をしているなら、必ず費用対効果を考えなければならない。外壁塗装工事は、数百万円単位の費用がかかるため、場合によっては数年分のキャッシュフローが一気にとんでしまう。

雨漏りをしているなど居住に影響がある場合をのぞいて、見た目が悪いからという理由だけで数年分のキャッシュフローをつぎ込むのは費用対効果がとても悪い。外壁の修繕をしたからといって、家賃をあげられるわけではないため、致命的な欠陥がなければ修繕はしないほうがいいだろう。

[関連記事] 収益物件の大規模修繕(外壁塗装・屋上防水)はどのタイミングで行うべきか

Q2. いい工事会社はどのようにみつければよいか?

所有しているアパートの外壁塗装を検討しています。費用の見積もりをとりたいのですが、 安くて良い工事会社はどのようにして見つければよいでしょうか?

A. 工事会社は管理会社に依頼するか自分でネットで探す

管理会社に依頼すれば、塗装工事をお願いする会社から見積をとってくれるだろう。いそいで対応が必要な場合はそのまま発注してもいいが、高いお金を払うことになるので自分でもネットで探して相見積もりをとったほうがいい。費用についてはこの記事に掲載している金額を参考に比べると相場よりも高いか安いかがわかると思う。

【工事比較サイト】

Q3. 塗装する色はどのように決めるべきでしょうか?

現在の白地の外壁が古くなり黒ずんでいます。やるならお洒落な色に変えたいと考えていますがどのような配色にすればよいでしょうか?

A. あまり奇抜になりすぎない色にしよう

外壁の色は、依頼すれば工事会社から配色の案をだしてもらえる。外壁の色は、インパクトがある色(明るい青とか赤)だと周りからも目立つため、入居者募集をする際にプラスになる可能性がある反面、濃い茶色や黒などのほうが経年劣化が目立ちにくい。目立つ色でなくとも入居づけは可能なため、経年劣化が目立たないほうを優先すると頻繁に外壁塗装をしなくてすむ。

アパートの外壁塗装をする前に費用対効果を考えよう!

アパートの外壁塗装を行う際は、何を目的に修繕を行うのかを明確にしよう。

ただ「見た目がきれいになるから」という理由では、数年分のキャッシュフローを無駄にしてしまう可能性がある。修繕は致命的な欠陥以外は行わず、費用対効果を考えて必要最低限にとどめたい。

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この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
詳細プロフィール

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