絶対に買ってはいけない投資用不動産の3つのパターン

2020年12月17日8,034

物件価格が格安であれば、どんな悪条件だろうとも検討の土台には乗る。

このように、投資家は全ての判断をリスクとリターンの関係から説明が出来ないといけない。

殺人事件があった物件でも、沿岸部で津波の心配がある物件でも、震災で土地が液状化した地域でも、利回りが20%以上あったとしたら、家賃を下げて満室運営するという選択肢が考えられるのだ。

その他にも、3点ユニット、プロパンガス、バランス窯、洗濯機置き場ないなど物件の悪条件は色々ある。

しかし値段を下げれば入居したい人というのは、案外と多くいるものなのだ。

決して「利回りが良ければ何でもいい」というわけではない。

物件のデメリットが利回りによりカバー出来ることと、利回りが良ければ何でもいいという話は、決してイコールではないからだ。

買ってはいけない物件の代表パターン

利回りが良ければカバーできる悪条件は多いが、収益性がいくら高い物件でも、買ってはいけないケースはある。

以下が、代替不可能な悪条件の代表的なものだ。

・反社会的勢力の事務所がある

・違法物件

・特定の工場や大学に入居者を依存しているが、それらが移転する計画がある

上記のケースにおいては、検討せずに購入を取りやめた方がいいだろう。

1点目の反社会的勢力が近くにいるケースだが、金融機関は金融庁の指導により反社会的勢力との付き合いを厳しく制限する様が、近年特に顕著だ。

物件の中に反社勢力の事務所があるのは論外だが、近隣にある場合でもNGとなるケースはある。

どのくらい物件の近くにあるのかの明確な基準はないが、例えば物件の隣に暴力団事務所がある場合は、融資の審査で問題視される場合がほとんどだ。

マンション経営する上での実務的な問題として、これらの反社会勢力の構成員と揉め事が起きた時の対処法も明確ではない。

どのようなことが起きるかわからないので、管理会社も管理をしたがらない可能性が高いのだ。

これらを勘案すると、反社会勢力の物件は検討するだけ時間のムダなので、分かった時点で検討から外すのが賢明だ。

違法物件は出口戦略が描けない

次に違法物件について述べよう。

ここで言う違法物件とは、建築基準に従っていなかったり、登記されていない建物があったりする物件だ。

一番多いのが容積率オーバーの物件だ。

容積率と言うのは、土地面積の広さに応じて延べ床面積の上限を設定している建築基準のことだ。

容積率200%の場合、土地が300㎡であれば、延べ床面積が600㎡までの建物しか建てられない。これらの基準は用途地域ごとに決まっている。

容積率オーバーの物件のほとんどが、あとから建て増しをしたりした物件だ。

もしくは、建築確認を役所から取ったあとに設計図を変えてしまうような、悪質な対応を新築時に行ったケースもある。

こういう物件は、基本的に銀行融資がつかない。

ノンバンクなどで借りられたとしても、売る時に買い手がいない(買い手もノンバンクを使うしかない)という状態になるので、購入出来る人が非常に限られる。

このような物件は、概要資料を見た段階で避けるのが無難だろう。

大阪などではこのような違法物件のマーケットが確立されている地域もある。こういう違法物件を、特定の金融機関を使って購入する手法も実際には存在するが、特定の地域でしか再現性がない。

容積率・建ぺい率オーバーでも、既存不適格の物件は検討しても大丈夫だ。

既存不適格は、用途地域が建物建設後に変わってしまった場合などに発生する。

当初は容積率が400%だったので300平米の土地に1,000平米の建物を建てたが、その後準工業地域になり容積率が100%になってしまった場合は既存不適格になる。

これは違法物件ではないので、融資付けも問題ないケースは多い。

入居需要を工場や大学に依存している物件はリスクが高い

最後に、工場や大学が移転する計画がある場合について解説する。

前に述べた反社会勢力の物件と違法物件は、最初から検討から除いて大丈夫だ。

しかし大学や工場の移転計画等あり、周辺の需要が大きく変わることが予見されている物件については、最初から検討から外す必要はないが、慎重な対応が求められる。

賃貸需要を工場や大学に大きく頼っているにも関わらず、それらが移転することがわかっている物件は、ほとんどの場合現オーナーも物件の需要がなくなるのではないかという懸念を持っている。

そのような心配から、物件を売りに出しているケースがほとんどだろう。

しかし、もしかしたら他に違う売却理由がある可能性もあるので、詳細な確認が必要だ。

大学や工場の移転計画がある物件は、反社や違法物件と違い、利回りがもの凄く良ければ検討してもいいかもしれない。

入居者がほとんど大学生で、その大学が3年後に移転するのであれば、先行きはかなり怪しいと思わざるを得ない。

実際にこういう物件のほとんどが、厳しい状況を移転後に迎えている。

1990年代前半までは学生の数も多く、バブルで金余りだったこともあり、大学周辺の不動産会社は一人暮らし希望の学生で2月には行列が出来るという光景が各地であった。

大学生の需要はいくらでもあるので、あえて住みにくい部屋を作って入退去の回転を上げ、敷金・礼金で儲けるという手法を取る大家もいたらしい。

こういうよこしまな気持ちで建てられた物件は、そもそも住みにくい間取りになっていたりする。大学が移転すると、当然ながら大打撃を受ける。

実際に、単身用の空室率が、かつて大学があった周辺全体で非常に高いエリアと言うのは存在する。

ただし、利回りがかなり高い(=物件価格が非常に安い)物件であれば、家賃を下げて会社員など他の層を呼び込むことが可能なケースもある。

リスクを背負うことには変わりないが、有り余るリターンが望めるのであれば、チャレンジするという選択肢も有りだろう。

楽観視は禁物だ。一つの大学や工場に需要を頼っているというのは、それだけリスキーなことなのだ。

周辺の不動産会社から綿密な聞き取を行い、少し目線を変えれば大丈夫だという確信が得られた場合に限り、購入を検討してみても良いと思う。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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