「法人属性」で不動産の融資を引くには決算書の改善が有効な理由

2020年12月17日3,363

金融機関から法人として融資を受ける場合経営者個人の属性評価に加え、「法人属性」、つまり事業内容・決算内容・法人所有資産などの評価も融資判断の大きな要素とされる。

金融機関が注意深く見るのは、業種や経営計画に加えて貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書などの決算情報、帝国データバンクなどの信用調査機関による調査内容、それに加えてもちろん経営者の資質などだ。

この内融資判断で特に重視されるのは決算情報である。

粉飾決算をしないことは当然だが、決算書を上手に作ることで、有利に融資を受けられる可能性が高くなるのだ。

融資を受けやすい決算書とは

融資を有利に受けやすい決算書とは、金融機関から貸し倒れリスクが低いという評価を受けられる決算書のことだ。

ここで注意して欲しいのは、金融機関から融資を受けたいのか、節税したいのかの目的は決算書を作成するに当たって事前にはっきりさせておくことだ。

多くの中小企業は節税重視の決算を行っているようだが、これと融資を受けやすい決算書とは相反する場合があるからだ。

融資を受けやすい決算書は、

  1. 安定的な利益を得ていること、
  2. 債務超過ではないこと、
  3. 自己資本比率が高いこと
  4. 当期利益と減価償却費の合計額が大きいこと
  5. 不動産投資専業の法人であること
  6. 不動産投資事業の実績がわかりやすいこと

この6つのポイントをできるだけ多く満たす決算書だ。

以下で各項目の説明をする。

①安定的な利益を得ていること

「直近3期が黒字であること」は法人として不動産投資用の融資を受けるほとんどの場合で必須と言って良い。

節税目的ならば、赤字法人は法人税の支払い義務がないため、実際は利益が出ていても役員報酬を高めに設定して赤字決算にすることが中小企業では広く行われている。

しかし、金融機関から融資を受けるならばこの方法はやめなければならない。

金融機関の融資判断は基本的に決算書類上だけで見られるため、決算書上赤字の企業は利益が上がっていないとみなされ、貸し倒れリスクが高いと判断されるからだ。

極力黒字を維持して融資を受けられるようにしたいが、だからと言って節税と両立させようとしてわずかな黒字決算としても、金融機関からの評価は良くならない。

節税目的で役員報酬を高めに設定するなどしていたため赤字になっていたが、現在は黒字決算に変更中という場合は、赤字決算の理由をきちんと説明すれば直近3期全てが黒字ではなくても考慮してもらえる場合もあるにはあるが、やはり避けた方が良いだろう。

融資を受けやすい決算と節税目的の決算では根本的に方向性が異なるため、どちらを目的とするのか明らかにしておくことが必須だ。

②債務超過ではないこと

貸借対照表上債務超過となっていれば金融機関からの融資はまず受けられないことはほぼ当たり前のことになっている。

債務超過とは、貸借対照表上「負債の総額>資産の総額」となっている状態である。

会社の経営上、損失>利益の赤字体質の状態が続くと、株主の出資した資本金やそれまで蓄積した利益剰余金・資本剰余金などに損失額が食い込んでしまい、債務超過となる。

金融機関から見ればこの状態は当然貸し倒れリスクが高いという評価になるので、融資はまず受けられない。

現在債務超過ではなくても直近3年程度以内に債務超過状態に陥ったことがあるだけでもかなり審査は厳しくなるので、債務超過に陥ることは回避しよう。

債務超過を回避する方法には以下のような方法がある。

【債務超過を回避する方法】

方法 内容
増資

例えば身内や血縁者、若しくは社長個人の資金を会社の資本金として投入する方法で、短期に債務超過を回避できる。
但し、社長個人以外の至近を資本金にする場合、会社乗っ取りを防ぐためにも持分比率などを事前に検討すること。

代表者や役員からの借入金を資本金に振り替えたり、債務免除をする(デッド・エクイティ・スワップ)

役員や代表者・外部出資者からの借入金はキャッシュとしてすでに会社に入っているが貸借対照表上は負債の部に計上される。これを債権者からの同意を得て純資産の部の資本金へ振り返れば負債を軽減して資本を増やすことができ、増資と同様の効果が得られる。

但し、株式と引換えの資本金振替えの場合は持分比率などの検討を要するのは増資と同様。

債務免除の場合も外部債権者などは自社株を要求する場合が多い。

遊休資産を売却して借入の返済に充てる 不要な資産があれば売却し、負債の繰上返済などに充てれば短期に負債を解消できる。
経営体質を改善する

節税にために意図的に赤字決算にしていた場合は、本来は利益を出しており黒字決算とできているはずであるので、決算方針を変えれば良い。

経営自体が利益が出ていないのであれば経営体質を根本的に変える必要がある。

不動産投資で法人融資を引くにはどのような決算書を作るべきか」に続く

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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