不動産を用いた「フロー型」「ストック型」の資産運用とは?

2020年12月16日2,591

不動産投資を行う際に金融機関からの融資を利用すると、2種類の資産形成が同時に進行する。

それは「フロー型資産」と「ストック型資産」だ。

一般的には不動産投資からの利益は「ストック型資産」であると見られているが、細かく見ていくと「フロー型資産」と「ストック型資産」に分けて考えることが出来る。

今回はこの2つの資産が形成される流れと、その運用方法を説明していきたい。

フロー型資産=キャッシュの獲得

まず、不動産投資の年度単位のお金の流れを示した下の図1を見て欲しい。

【図1 年度単位のお金の流れ】

年度単位のお金の流れ02

ここで注目して欲しいのは、「利益」「費用の支払い」「ローン返済」が全て家賃収入から生み出されている点だ。

そして、総収益である「年間家賃収入」から、「運営費用」と「ローンの返済額」を引いたものが最終的な「純利益」=キャッシュとなる。

投資物件を適切に運営していくことができれば、このように毎年純利益がキャッシュで残るということだ。

この最終的な純利益=キャッシュを、「フロー型資産」と呼ぶ。

フロー型資産は一般的に、株式投資やFXなどを運用して得た一回限りの収入のことを指す。

ただ、ここでは所有物件を運用して得られるキャッシュを、不動産投資における「フロー型資産」だと考えてもらいたい。

この、キャッシュ=「フロー型資産」を蓄えて、次の物件購入の資金とするのが、不動産投資を拡大するにあたって大切なポイントだ。

そのため、キャッシュ=「フロー型資産」が出ない物件を購入してしまうと、次の物件購入が出来ずに、不動産投資拡大のスピードは格段に落ちてしまうので注意したい。

また不動産投資において、年々発生する建物の減価償却費は経費として控除できる。

減価償却は理解しにくい概念のひとつだが、つまりは購入時に支払った建物代金を後から経費化できるということだ。

もちろん、経費にできる額は建物の耐用年数などによって変わってくるが、この減価償却費によって税金の支払いを少なくでき、ひいてはより多くのキャッシュ=「フロー型資産」を残すことが可能になるのだ。

大量のコイン,お金

ストック型の資産構築はローン返済から生まれる

一方、融資を受けると毎年のローンの返済額が発生するが、このローンの返済によって形成されるのが「ストック型の資産」である。

下の図2を見て欲しい。

【図2 ローン返済における位置づけ】

20170512image01

ローンの返済には当然ながら、元本の他に金融機関に支払う金利が上乗せされる。

金利分はそのまま銀行の利益となり、手元に残らないお金だと理解して頂けると思う。

しかし、この元本返済分が「不動産価格の取得」になり「ストック型資産」の形成につながるという考え方は、理解しにくいのではないだろうか。

分かりやすく説明のするために下の図3を見て欲しい。

図3では不動産購入金額を全額融資で賄ったとし、20年目で全額ローンを返済したとする。

【図3 ストック型資産形成のイメージ図】

20170512image02

5年目、10年目、15年目…と元本の返済額が積み上がっていくことで、徐々に自分の資産が拡大していくイメージだ。

購入当初は、不動産購入金額を全額融資で賄っているため、不動産の価値は言わば全額借りたもの、いわゆる負債である。

しかし、20年目に元本の返済が全て終了して負債を完済すると、不動産が全て自分の資産となる。

このように「ストック型の資産」の形成は、ローンの返済を通じて自分の資産が拡大していくことを指す。

前段でも説明したが、ローン返済の原資となるのは基本的には投資した不動産を運用することで得られる家賃収入だ。

つまり、家賃収入からローンの返済を行うことで、自分の資産を増やしていっていることになるということだ。

別の言い方をすれば、キャッシュではなく不動産の形で貯蓄をするのが「ストック型の資産」の形成方法であると言える。

このように、キャッシュである「フロー型資産」と、不動産資産である「ストック型資産」の2種類の資産形成を同時に、しかも金融機関からの融資で行うことができることが、不動産投資の大きな利点の一つだと言えよう。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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