不動産投資ではROIよりもCCRを重視した投資を行う

2020年12月17日16,619

不動産投資ではROIよりもCCRを重視して物件購入を行う必要がある。

簡単に言うと投下資金を早く回収してキャッシュを積み上げる投資を行うということだ。

用語の意味は重要ではないが、この概念を理解することは融資を使って不動産投資を拡大していくうえで必要だ。

是非覚えておいてほしい。

ROIは借り入れを含めた投資総額の利益率を測る

ROIとはReturn On Investmentの略で、日本語では「投資利益率」と呼ばれる。

ROIは、一般的なビジネスや投資の世界では良く使われわれている財務指標なので、知っている人も多いだろう。

株式投資などをする際のファンダメンタル分析(企業情報の基礎分析)をする上で、非常によく使われる指標の中の一つだ。

ROIは、投資額に対してどれだけ経常利益を生み出しているかを測る指標で、

ROI = 利益÷総投資額(自己資本+長期負債)×100

で計算される。

簡単に言うと「投下した資金からどれくらい効率的に利益を得ているか」を測るための指標だ。

この値が高ければそれだけ効率がいい投資が出来ているということになる。

総投資額(資本金+借入)が100億円の会社があり、利益が2億円/年の会社があるとすると、

ROI = 2÷100×100 = 2%

になる。

CCRは自己資金の回収率を測ることが出来る

この項でもう一つ説明する指標であるCCRは、Cash On Cash Returnの略で、

CCR = 利益 ÷ 自己資金

で計算される。

自己資金が1,000万円、利益が100万円/年の物件を買った場合、

CCR = 100 ÷ 1,000 = 10%

となり、投資の回収が1年で10%進む(回収までに10年掛かる)ことがわかる。

CCRは株式投資では全く使われない指標なので聞いたことがない人も多いと思うが、不動産投資では良く使われる。

別の用語でROI似た指標のROE(Return On Equity)がある。こちらは分母が自己資本のみとなる(借入金は含まれない)ので、CCRとほぼ同義だ。

不動産投資に馴染みがない人は、CCRよりもROEの方が聞いたことが多いかもしれない。

不動産投資では資金を「自己資金」と「借入資金」に分けて考える必要がある。

企業分析と同じくROIを使ってしまうと自己資金と銀行融資の資金を一緒に考えることになってしまうので不都合だ。

これでは自分が捻出した自己資金で投下したお金が何年で回収できるかがわからない。

CCRが大きければ大きいほど、短い期間で自己資金が回収できることになる。

なぜ不動産投資ではCCRを重視するべきなのか?

不動産投資を始めたばかりの段階では、出来るだけCCRが高い投資を行いキャッシュの回転を速くすることが重要だ。

手元にすぐ使いえる流動性の高いキャッシュが多くあれば、次の展開はいくらでも考えられる。

逆に良い物件をいくつか持っていても、自己資金がカツカツで次の物件の諸費用を貯めるのに3年や5年掛かっていては、不動産投資拡大の成長が止まってしまう。

これでは上手くやっているとは言い難い。

突発的な設備故障などで、資金が必要となるリスクにも対応できない可能性が出て来るので、非常に危険だ。

具体的な例を挙げようと思う。

以下の5,000万円のRC物件を購入したとする。

価格 5,000万円
利回り 10%(家賃収入500万円/年)
頭金 1,000万円
諸費用 350万円(物件価格の7%)

頭金+諸費用は1,000万円+350万円なので1,350万円の自己資金を投下して購入したことになる。

管理・税金の費用を家賃の20%、空室率を10%、金利2%(融資期間25年)と設定すると、年間の税引前利益(キャッシュフロー)は172万円になる。

1億円当たりで換算してもキャッシュフローは344万円となるので、数字は全然悪くない。

しかし、これは頭金を入れた上でのキャッシュフローだ。

CCRを確認してみなければならないので計算してみよう。

CCR = 172万円÷1,350万円 = 12.71%

自分の貯金から捻出した1350万円の投資が回収できるまで、100÷12.71=7.8年掛かる計算になる。

投資回収までの時間が7年以上も掛かってしまっては、良い不動産投資が出来ているとは決して言えない。

利回り10%で融資期間も25年ある良いRC物件を買えているのに、このように効率の悪い投資になってしまっている理由は、融資の割合が低く自己資金を多く入れているからだ。

回収に8年近く掛かるのであれば、利回りが下がってもフルローンで買える物件の方がまだマシだ。

繰り返しになるが、不動産投資の唯一にして最大のメリットは、「融資が引けること」だ。

不動産が株や債券に比べて、リスクの割にリターンが高いわけではない。不動産が資産として優秀なわけではないのだ。

少ない自己資金で大きな物件を購入出来ることが不動産投資の優位点なので、このポイントを忘れてしまってはいくら利回りの高い優良物件を買えたとしても意味がない。

投資の初期段階ではキャッシュを得るためにCCRを重視するべき

もう一つ具体的な例を挙げよう。

価格 5,000万円
利回り 9%(家賃収入450万円/年)
頭金 ゼロ
諸費用 350万円(物件価格の7%)

利回りが0.8%下がり、頭金を100万円にした場合の例だ。

最初の例と同じ条件で計算すると、税引き前利益(キャッシュフロー)は83万円になるので89万円も減ってしまっている。

これは利回りが下がったことで借入比率が上昇したことも影響している

キャッシュフローを1億円当たりで換算しても166万円だ。ギリギリ合格点かどうかのラインだろう。

しかしながら、CCRは23.77%となった。4年強で自己資金の回収が可能だ。

利回りが下がったにも関わらずCCRは上がり、自己資金の回収という面からは、最初の例よりも優秀な数字になったことに注目して欲しい。

CCRが25%近いので、約4年程度で回収できる。

ちなみに利回りが同じ10%であればCCRは34%を超える。これなら3年以内に投下資金の回収が出来る。

不動産投資で大きな収益を上げたいのであれば、投資を成長させる段階でにおいて、極力自己資金を使わない投資をすることが求められる。

例え利回りが15%を超える優良物件を持っていても、自己資金を物件価格の4割や5割投下してCCRが10%以下になってしまいようであれば、投資回収までに10年も掛かることになる。

これでは次の物件は当分の間購入出来なくなる。

CCRは最低でも30%以上を基準にし、出来ればCCR100%以上(オーバーローン)を目指したい。

CCRとROIを組み合わせる

ここまでCCRの重要性について説明してきたが、CCRも決して万能な指標ではない。

総投資額に対して、どれだけ利益幅があるのかはわからないので、借入金の多寡の割にどれだけ利益が出ているかがわからないのだ。

この欠点を補完するのが

「1億円あたりのキャッシュフロー」 や 「ROI」だ。

これらの指標は費用対効率を測ることが出来るので、CCRと併用して使うと良いと思う。

物件を検討する際は、

「CCR30%以上 かつ 1億円当たりのキャッシュフロー150万円以上(ROI1.5%以上)」

などの基準を設けて、物件の選定を行うと良いだろう。

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この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
詳細プロフィール

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