「耐用年数」の謎!木造住宅は22年を超えても住み続けられるのか?

2020年12月14日65,859

木造住宅の「耐用年数」は22年と定められているが、それを超えると住めないほどの欠陥がでてくるのか?そもそも「耐用年数」とはなんのために定められているのか?

今回は、多くの人にとって不明確な「耐用年数」について、疑問を解決しながら具体的に説明していきたい。

耐用年数とは?

不動産投資における耐用年数とは、法的に定められた「建物を使用できる期間」のことだ。不動産だけでなく、機械や船舶など固定資産全般に対しても使われる。

耐用年数の3つの使われ方

まず、建物構造別の耐用年数をおさえておこう。 スクリーンショット 2017-09-25 10.08.11

簡単にいってしまえば、単純な造りの建物(木造、軽量鉄骨など)は耐用年数が短く、頑丈な建物(鉄筋コンクリート造など)は耐用年数が長い

では、この「耐用年数」とは一体どういう時に必要になってくるのか。

必ず覚えておきたいのが、つぎの3つの使われ方だ。

  1. 「減価償却の計算」の時
  2. 「融資期間の計算」の時
  3. 「実際に使える年数」の目安

これら3つの使われ方を、1つずつ具体的にみていこう。

「耐用年数と減価償却」の関係

 耐用年数はそもそも「減価償却資産が利用に耐える年数」と定義されている。

「減価償却資産」とは、時の経過等によって価値が減って行く資産のことであり、「減価償却資産」を購入した場合、その代金を数年にわたって費用として計上できる。

「減価償却資産」は年数を経るごとに価値が下がっていくため、その下がった分を「損失」として費用計上できるという考え方だ。

たとえば、40万円で購入したパソコンの耐用年数が4年であれば、下記の図のとおり4年間にわたって毎年10万円ずつ費用にできる。

スクリーンショット 2017-09-25 10.08.58

「減価償却資産」は各資産ごとにその耐用年数が定められており、これを「法定耐用年数」という。

公式では国税庁のサイトから確認できるが、項目が多く時間をかけて探しても見つからない場合も多い。

全力で耐用年数を検索します」というサイトを使うと、資産名を入力するだけで耐用年数を確認できるのでオススメだ。 

ちなみに「土地」自体は時の経過などで価値が減らないと定義されているため、減価償却資産ではない。

つまり「耐用年数と減価償却との関係」をまとめると、減価償却に関係する耐用年数は正確には「法定耐用年数」とよばれており、国税庁で項目ごとに決まっているということだ。

木造の建物の場合、法定耐用年数は22年なので、「22年間で徐々に価値が減っていき、22年を経過すると価値が0円になります。また、木造住宅の建築代金は22年かけて毎年費用に計上することが可能です」という意味が含まれているのだ。

個別の価値は考慮されない考え方だが、金融機関ではこの「法定耐用年数」がアパートローンの目安に使用されることが多い。

cost cut  

「耐用年数と融資期間」の関係 

つぎに、「耐用年数と融資の関係」だ。先に述べたように、金融機関の融資期間と「法定耐用年数」は密接な関係性がある。

基本的に金融機関がアパートローンで融資する期間は、「法定耐用年数」内であるとされている。

とくにメガバンクは耐用年数をこえた物件への融資に厳しいのだが、一方、「地銀」や「信用金庫」などは管轄地域内であれば検討してもらえる可能性もある。

つまり、「法定耐用年数=融資期間」とは一概に言えないということだ。

金融機関の融資への考え方は、簡単にいえば「債務不履行になった時に、物件を差し押さえて損を出さなければいい」というものだ。

建物は法定耐用年数をオーバーしていて価値が0円であっても、土地には値段がつく。

金融機関によって土地の評価法はさまざまだが、一般的な積算法で算出すれば、相続路線価格の7〜8割が土地の担保価値とみなされる

(路線価は国税庁のサイト「財産評価基準所 路線価図・評価倍率表」から検索できる)

たとえば、築30年の木造アパートが5,000万円で売りにだされていたとする。

木造アパート自体は価値が0円とみなされても、土地が4,000万円と評価されればその担保価値分を金融機関は融資してくれる。

なぜなら、先に述べたとおり、所有者がローンを返済できなくなった時、金融機関は担保になっている土地を売却すれば回収ができると計算するからである。 

また、築10年の木造アパートだと本来なら最大12年間の融資しかつかないが、15年、18年と融資期間が「木造=22年」を超えて伸びる場合もある。

これは不動産投資家のこれまでの実績や、物件自体の価値などを金融機関が個別に考慮して、かさ上げしてくれるのである。

ここで「耐用年数と融資期間の関係」をまとめよう。「法定耐用年数=融資期間」はアパートローンの基本ではあるが、例外も多く存在する。

ただ、その例外となるためには、下記のような条件が必要である。

  • 物件がでた時にすぐ相談できる担当者が「地銀」や「信用金庫」にいる
  • アパート経営で実績がでている
  • 検討している物件が、土地値に近い優良物件である

もし、まだなんの実績もなければ、「法定耐用年数」内の物件を探す方が融資付けは格段にスムーズにいくだろう。

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「耐用年数と実際に使える年数」の関係

これまで木造の法定耐用年数は22年だと説明してきたが、実際に22年をこえると不備が多く発生するのだろうか?

もっと身近なものでいえば、パソコンの法定耐用年数は4年で、普通車の法定耐用年数は6年である。これらをこえると問題が多く発生するかというと、そんなことはない。

建築現場で使われる考え方で、「物理的耐用年数」という言葉がある。

これは、「建物躯体や構成材が物理的あるいは化学的原因により劣化し、要求される限界性能を下回る年数」とされている。

また、「経済的耐用年数」という言葉もある。

これは、「継続使用するための補修・修繕費その他費用が、改築費用を上回る年数」とされており、適切な補修・修繕がされていれば「経済的耐用年数」は伸びていく

たとえば、同じハウスメーカーで作った同じ間取りの物件でも、日々の清掃や大規模修繕の回数、ペットの有無などでこの「経済的耐用年数」は変わってくるということだ。

ここで、「耐用年数と実際に使える年数」との関係をまとめると、実際に使える年数は「法定耐用年数」ではなく、「物理的耐用年数」「経済的耐用年数」に強く影響されるということだ。

ちなみに、実際の住宅の平均築年数が調査されているが、一般社団法人「住宅生産団体連合会」の調べによると平成16年度は平均築年数36.8年で建て替えが行われていることがわかっている。 

結論:耐用年数=住めなくなる年数ではない

耐用年数には「法定耐用年数」「物理的耐用年数」「経済的耐用年数」の3つの使われ方があり、そのため混乱が生じやすいことが分かっていただけたかと思う。

不動産投資に深く関わってくる「減価償却」と「融資期間」では、「法定耐用年数」が指標に用いられているので、おもな法定耐用年数である「木造=22年、鉄骨造=34年、RC造=47年」は覚えておきたい。

また、実際に住める年数は「物理的耐用年数」と「経済的耐用年数」がかかわってくるが、日々の清掃や適切なリフォームなどによってこの年数をより長くすることもアパート経営の大切な事業の一環だ。

この3つの耐用年数の使われ方の違いがわかっていると、不動産投資において必ず必要となってくる「減価償却」や「融資条件」など知識が、より実践的に理解できるようになるだろう。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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