「耐用年数」とは何なのか?計算方法と利用場面をすべて解説!

2020年12月14日1,988

不動産投資を進める上で理解することが欠かせない用語のひとつが「耐用年数」である。

金融機関の融資をや減価償却の計算など広範囲にわたり「耐用年数」は使われているからだ。

注意が必要なのは耐用年数は使われる場面よって微妙に意味合いや年数そのものが変わってくる点だ。

この記事では耐用年数とはそもそも何なのか?」から始まり、計算方法、使用用途、注意点などのイロハを紹介していきたい。

「耐用年数」とは一言で言うと何なんのか?

耐用年数とは、「通常の維持補修を加える場合にその減価償却資産の本来の用途用法により通常予定される効果をあげることができる年数、すなわち通常の効用持続年数のことをいい、その年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)とある。

この文章では大変分かり難いが、簡単にいうと資産が実際に使用出来ると想定されている年数のことを「耐用年数」と旧大蔵省(現財務省)は定義している

耐用年数は不動産に限らず幅広い資産で定められており、例えば、プリンターなどの有形資産から、特許権などの無形資産まで定められている。

今回は不動産投資において必要な「住居用不動産」「事業用不動産」の耐用年数に関する知識について解説する。

なお、この旧大蔵省が定めた耐用年数は正確に言うと「法定耐用年数」と呼ばれる。

不動産の法定耐用年数について

住居用不動産というのは不動産投資で最もメジャーな戸建て、アパート、マンションなどであり、住居用不動産は建物の構造ごとに分かれており、下記の様に定められている。

①鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、又は鉄筋コンクリート造(RC造):47年

②れんが造、石造、ブロック造:38年

③金属造、鉄骨造(S造) ※骨格材肉厚4mm超え:34年

④金属造、鉄骨造(S造) ※骨格材肉厚3mm超え4mm以下:27年

⑤木造、合成樹脂造:22年

⑥木造モルタル造:20年

⑦金属造、鉄骨造(S造) ※骨格材肉厚3mm以下:19年

⑧簡易建物:10年

⑨堀立造、仮設建物:7年

以上が住宅用建物の耐用年数となる。

ここでよく疑問に思われるのは、「重量鉄骨造と軽量鉄骨造どれにあたるか?」という質問である。

建築業界や不動産投資でいわれる重量鉄骨造は肉厚4mm超えのものをいい、軽量鉄骨造は4mm以下のものを指す場合が多いため、たいてい重量鉄骨造であれば法定耐用年数は34年、軽量鉄骨造であれば法定耐用年数は27年、または19年をさす。

この場合、軽量鉄骨造は27年と19年のどちらかとなるため、肉厚が何mmであるかの確認はとても重要である。

また東日本大震災以降、一部のエリアでは震災で避難していた人が元の住居に戻った後に避難民向けの簡易建物や仮設建物が販売されるケースがある。こういった建物の法定耐用年数はあまり知られていないため、木造や鉄骨造(骨格材3mm以下)の法定耐用年数で試算されるケースがある。しかし、本当は簡易建物であれば10年、仮設建物であれば7年と別に法定耐用年数が定められているため、その耐用年数で試算する必要がある。

事業用不動産の耐用年数について

事業用不動産の耐用年数は、建物の構造の他に事業用途ごとに分かれており、住居用不動産に比べて、種類が多く定められている。ここでは建物の構造の他、不動産投資で多い事務所用、宿泊所用、飲食店用、旅館用、店舗用の5つの事業用途に分けて解説をしていく。

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、又は鉄筋コンクリート造(RC造)

①事務所用:50年

②宿泊所用:47年

③飲食店用:34年

④店舗用:39年

⑤旅館・ホテル用

 ・木造内装部分の面積が3割を超える:31年

 ・その他:39年

れんが造、石造、ブロック造

①事務所用:41年

②宿泊所用:38年

③飲食店用:38年

④店舗用:38年

⑤旅館・ホテル用:36年

金属造、鉄骨造(S造) ※骨格材肉厚4mm超え

①事務所用:38年

②宿泊所用:34年

③飲食店用:31年

④店舗用:34年

⑤旅館・ホテル用:29年

金属造、鉄骨造(S造) ※骨格材肉厚3mm超え4mm以下

①事務所用:30年

②宿泊所用:27年

③飲食店用:25年

④店舗用:27年

⑤旅館・ホテル用:24年

金属造、鉄骨造(S造) ※骨格材肉厚3mm以下

①事務所用:22年

②宿泊所用:19年

③飲食店用:19年

④店舗用:19年

⑤旅館・ホテル用:17年

木造、合成樹脂造

①事務所用:24年

②宿泊所用:22年

③飲食店用:20年

④店舗用:22年

⑤旅館・ホテル用:17年

木造モルタル造

①事務所用:22年

②宿泊所用:20年

③飲食店用:19年

④店舗用:20年

⑤旅館・ホテル用:15年

その他

①簡易建物:10年

②堀立造、仮設建物:7年

以上が事業用不動産の法定耐用年数である。

同じ構造物でも事業用途ごとに異なり、法定耐用年数に大きな差が生じる例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用と旅館・ホテル用不動産では最大19年もの法定耐用年数の差が生じることになる。

特に昨今では、不動産投資で民泊から派生して旅館業簡易宿所の営業許可を取得して旅館業を営む者が増えており、そうした人には特に確認が必要な部分である。

2つ以上の用途に共用されている不動産

2つ以上の用途に共用されている不動産とは、マンションの1階だけ店舗のケースやビルの1階が店舗で2階以上が事務所用のケースなどである

この場合の耐用年数は面積が広く占めている用途・構造の法定耐用年数を適用する

鉄筋コンクリート造5階建の不動産で、1階と2階が店舗、3~5階が住居であった場合を例として説明しよう。

この例の場合、鉄筋コンクリート造の店舗用の法定耐用年数は39年で、鉄筋コンクリート造の住居用の法定耐用年数は47年の2つが考えられる。そこで店舗用と住居用のどちらの法定耐用年数を適用する判断するために、各用途で使用されている面積を計算する。

1フロアの面積が全て同じ100㎡と仮定した場合、店舗用で使用している面積は100㎡×2フロア=200㎡となる。一方、住居用で使用している面積は100㎡×3フロア=300㎡となり、住居用の方が占める面積が広いため、この不動産の主要な用途は住居用と判断することが出来る。

主要となる住居用の法定耐用年数を適用するため、この例の不動産の法定耐用年数は47年ということとなる。

なお、この通達の特例で「1つの建物を2以上の用途に使用するため、当該建物の一部について特別な内部造作その他の施設をしている場合については、これを用途ごとに区分しないで、当該建物の主たる用途について定められている耐用年数を適用する。」(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-2-4)とあるが、この特例のみを知って法定耐用年数を誤って計算する人がいるため補足する。

この特例は例えば、鉄筋コンクリート造の5階建のビルディングのうち1階から4階までを事務所として使用し、5階を劇場として使用するために、5階のみ特別な内部造作を行ったというケースが該当する。ここでいう特別な内部造作とは、劇場として使用するために劇場用の防音、防振構造という特別な造作を建物内に造ったということである。

そのため、この特例は通常の造作には適用されない例えば旅館用途の鉄筋コンクリート造の建物内部を木造の和風様式にしたとしても、建物と内部造作物を分離して、木造建築の法定耐用年数を適用することは出来ないのである。

耐用年数を過ぎた不動産はどうなるか?

「耐用年数を過ぎた不動産は使用出来なくなるのか?」という疑問を持つ人も多いと思う。結論からいうと、そんなことはない実際、不動産ポータルサイトなどで調べて頂いても分かる通り、木造築70年などの超が付く築古物件も普通に賃貸に出されて使用されている。

要するに公的に使用出来る期間を定めたというだけで、実際に使用出来る期間はメンテナンス次第で伸ばすことは可能なのである。

では、この法定耐用年数はそこまで重要ではないのでは、と思われるかもしれないが、法定耐用年数を過ぎた不動産は次のケースに影響を及ぼす。

金融機関(銀行、信用金庫等)に融資を打診するとき

不動産投資をおこなう上で、まずはじめに耐用年数が話に挙がるのが金融機関に融資を打診するときである。

金融機関が不動産投資への融資可否、また融資内容を決めるときに使われるものが積算価格

積算価格は土地の価格+建物の価格で計算される。土地の価格は国土交通省や国税庁など、国によって定められた価格と土地面積をかけた積で割り出される。

それに対し、建物の価格を計算するときには再調達価格、延べ床面積、そして耐用年数をつかって割り出される。

再調達価格とは、同等の建築物を建てる場合にかかる費用のことだ。それぞれの建築構造に対して決められた単価に延べ床面積をかけると建築物の新築時の価格が求められる。

ちなみに再調達価格は

鉄筋コンクリート(RC)

20万円/m2

重量鉄骨(S)

18万円/m2

木造

15万円/m2

軽量鉄骨

15万円/m2

といった具合で定められている。

しかし再調達価格と延べ床面積だけで求められた建物価格には大きな欠損がある。「建物とはだんだん劣化していくものである」という概念が計算式の中に組み込まれていないのである。

たとえば、上記の再調達価格と延べ床面積を用いて計算された新築鉄筋コンクリート造アパートの建物価格が3,000万円と評価されたとする。しかしこのままでは5年後も20年後もこの建物価格は変わらず3,000万円という評価になる。これでは建物の価値を正しく評価することができない。そのために計算式に新たに組み込まれたものが耐用年数である。

上記鉄筋コンクリート造のアパートでは耐用年数は47年となる。この場合、アパートは建築から47年後に建物としての価値がゼロになるという共通認識のもと建物の価格が評価される。

つまりこのアパートが築10年となったときには、新築時と比べて

(47-10) ÷ 47 = 約 78.7%

の価値であるということである。具体的な数字で表せば

3,000 × 0.787 = 約 2,362万円

の評価となるのだ。

金融機関は土地価格と建物価格を合算した積算価格を用いて融資の詳細を決める。

その積算価格を割り出すときにも耐用年数は必須になる項目のひとつなのだ。

確定申告や決算を行うとき

これが法定耐用年数の勉強をしなくてはならなくなる最も多いケースではないだろうか。

不動産を所有すると、毎年必ず個人では確定申告、法人では決算を行う必要がある。

この時に法定耐用年数と一緒に現れるのが減価償却費の計算である。

なお、減価償却における耐用年数は、今まで説明してきた法定耐用年数と少々考え方が異なるため、注意して欲しい。

まず、減価償却とは減価償却資産を使用可能な期間の間、分散して費用計上する方法のことである。

減価償却資産とは、国税庁の確定申告書作成コーナーにて「減価償却資産とは、事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具など、一般的に時の経過等によってその価値が減っていく資産」と記載されている。

不動産投資における減価償却資産は不動産(建物のみ)のことである。

つまり、不動産投資における減価償却とは、不動産を購入した際に一括で費用計上すると、購入年のみ経費計上が大きくなるため、減価償却における耐用年数までの期間で分散させて減価償却費という勘定項目で経費計上しよう、という方法である。 

何年分散させて、減価償却費をいくらにするか算出するために、耐用年数が必要であるのである。

この減価償却を行う上での耐用年数を算出するために法定耐用年数が必要であり、以下の方法で算出する。

【築年数が耐用年数に到達していない場合】

耐用年数=法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%

【築年数が耐用年数を超えている場合】

耐用年数=法定耐用年数×20%

法定耐用年数と減価償却における耐用年数は、少々考え方が異なり混同しやすい部分であるため、注意が必要である。

なお、減価償却費の計算はここでは話が長くなるため、また別の機会で説明をすることとするが、減価償却の計算ミスにより費用を過剰に計上したことが発覚した場合は、申告漏れ扱いとなり追徴課税が課されることとなる。

耐用年数の計算を誤ると、減価償却の計算が間違っていなかったとしても、減価償却費は誤った金額が算出されるため、耐用年数についてもしっかり理解することが必要である。

耐用年数を正確に理解して、失敗を避けよう

耐用年数は、銀行の融資と確定申告や決算で頻繁に登場するとても基本的な用語である。

特に不動産投資において重要な銀行の融資と確定申告とで必要となる知識である為、必ず理解しなければいけない用語の一つである。

いち不動産投資家として、金融機関を渡り歩く際や確定申告をおこなう際にスムーズに本題に進むためにも耐用年数は正しく把握しておく必要がある。

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この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
詳細プロフィール

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