不動産売買における瑕疵担保責任とは

2020年12月17日828

不動産売買には瑕疵担保(かしたんぽ)の問題がどこまでもついてまわる。

「瑕疵(かし)」というのがやや聞きなれない言葉だということもあり、間違って理解している人も多くいるようだ。

「瑕疵担保責任」とは、売買契約において隠れた不具合(これを瑕疵と呼ぶ)があった際に、売主が買主に対して賠償責任を負うことを指す。

瑕疵担保は個人間では重視する人は少ないが、業者間の売買では大変重視される。よりシビアな取引を行っているからだ。

個人対宅建業者の取引では瑕疵担保責任は2年間発生する

瑕疵担保責任は民法の第570条に規定があり、瑕疵を知ってから1年間の権利行使期間が買主には与えられている。

ただしこの場合、例えば瑕疵を知ったのが購入から5年後であっても民法上は瑕疵担保責任が発生してしまうため、不動産売買の契約においては、土地・建物の引渡しの日から2年間を瑕疵担保期間と定めることを宅地建物取引業法で別途規定している。

民法では補えない実務的な面の問題を、業法で補完しているのだ。

2年間の瑕疵担保期間が発生するのは、宅建業者が売主で個人が買主の場合だ。

このケースにおいては、契約書にどのように書かれていようと、2年間の瑕疵担保責任が売主となる宅建業者側に発生する。

「プロの宅建業者が素人の個人に売るのだから、いかなる場合も2年間は責任を持ってください」ということだ。

個人が売主になっている場合は、瑕疵担保期間は自由に当事者間で定めることが出来る。

一般的には3か月~2年の間で期間を定めることが多い。この場合、瑕疵担保責任は免責(ゼロ)にすることも可能だ。

ただし買主側は瑕疵担保を設けてほしい場合が多いので、契約交渉の場では3か月を目途に折衝を開始することが多い。

上記は中古売買においての説明になるが、新築売買については別の法律が適用される。

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)により、買主保護がより強化されることになるのだ。

売主は新築住宅の引き渡しの時から10年間にわたって、構造耐力上主要な部分等に関する瑕疵担保責任を必ず負う必要が出て来る。

何が瑕疵にあたるのか?

では具体的な「瑕疵」(かし)にあたる不具合とは何なのかという話に移ろう。

瑕疵にあたるのは、買主も売主も知らなかった隠れていた事案だ。

白アリ、給排水設備の故障、雨漏り、腐食などがこれにあたる。土地の土壌汚染、埋蔵物の発見なども、隠れた瑕疵にあたる可能性がある。

気を付けたいのが、これらはあくまで売主も知らなかったことが対象だという点だ。

白アリの存在を知っていたにもかかわらず、それを告知していなかったとすると、疵担保責任の有無ではなく単なる告知義務違反になる。

これは契約違反なので、手付金倍返しとなる可能性がある。

中古物件を「現状有姿売買」とする場合、これらの瑕疵担保にあたる事案が免責になる契約だという説明を、仲介業者から受ける場合がある。

結論から言うと、これは間違った説明だ。

意図的に間違った解釈を促すような説明をしていると言ってもいいぐらい悪質だ。

「現状有姿」とは、契約時の状態から自然的に変わった状態で決済を迎えることになっても、売主は責任を負わないことを意味する。

中古物件の売買の仕様は明確に規定するのが難しい。契約から決済の間に入退去が発生したり、極端な話だが共用部の電灯が切れたり設備が摩耗したりする。

不具合が発生して修繕履歴が増えるかもしれない。

そのような、通常の使用により自然的に発生した仕様変更の発生については問わないというのが、現状有姿売買なのだ。

契約時に白アリがなくても、決済時に発見される場合がある。売主も予見できていなかった事態なので、その場合は自動的に売主理由による契約破棄(手付金の倍返し)になるわけではないということだ。

欠損や不具合があってもそのままの状態で売買が行われ、売主は買主からクレームを受けないという意味では決してない。

これらが告知されていなければ、瑕疵に当たる。

過去にシロアリなどの駆除履歴があった場合は、それが売買時において全く問題がなくても告知する義務がある。

それを隠していた場合瑕疵を意図的に隠したとみなされ、告知義務違反により契約破棄(手付金倍返し)の対象となる可能性がある。

個人対個人の売買においても、瑕疵担保は3か月以上つけてもらった方が良いだろう。

特に土地の売買においては、その土地を更地にする際などに双方が意図していない不具合(埋蔵物が見つかる、前の建物の基礎がそのままになっている など)が発覚することがあるからだ。

自分が買主の場合は瑕疵担保期間を長くしよう

ここまで読めば容易にわかると思うが、自分が買主の場合は出来るだけ長い瑕疵担保期間を設定した方が有利となる。

ただし現実の不動産売買の現場においては、良い物件であるほど不動産会社(業者)が競合となる場合が多くある。

自分が個人で物件を購入する場合、同じ物件を宅建業者である不動産会社が瑕疵担保免責で買うという条件で出したとすると、同じ金額で買付を出しても条件的には不利になってしまう。

割安な良い物件を見つけて、それをどうしてもそれを購入したい場合は、瑕疵担保免責を条件にしてプロと同じ土俵で買付を入れるのも、買付を入れる際のテクニックの一つだ。

売主が業者の場合、意外とこの「瑕疵担保免責」の条件が効く場合が多くある。

「瑕疵担保免責」をやみくもに利用するのは大変危険だ。

瑕疵担保が免責になることのリスクをしっかり理解し、その上であえて使っていいと思う場合だけにしよう。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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