現地調査と買付申込書の提出はどちらを優先するべきか

2020年12月17日332

物件の現地調査では、物件の基礎や躯体に問題がないか、清掃などメンテナンスの具合、屋上防水の状況、外壁にクラックや水漏れの跡などがないか、反社会勢力など問題のありそうな入居者がいないかを確認する。

この作業を怠ると、後で痛い目に合う可能性が高くなる。

しかし、地方の物件を検討する場合、本業の仕事があって、すぐに現地に行かれない場合もあるだろう。

土日が休日の会社員であれば、物件が出てきた次の週末に現地に行くことも可能かもしれないが、たまたまその週の週末に予定が入っていたりすると、翌週末にずらす必要がある。

そうこうしているうちに別の人から買付申込みが入ってしまい、悔しい思いをすることになる。

毎週このように買えるかどうかわからない物件の調査のため各所に訪れていると、交通費などの出費もバカにならない額になる。

見に行く前に現地不動産会社に電話してヒアリングをする

解決方法としては、物件を見に行く前に、概要資料とレントロールの情報から収支計算を完璧に行っておくことにより現地に行かなくてもこの問題を解消することができる。

 よく、現地調査をしてから収支が合うかを計算しはじめる人がいるが、これでは遅すぎる。

机上の計算で検討すべき内容は、現地に行く前にすべて行っておくのである。

収支計算を行う際に特に重要になってくるのは、現地で入居者募集を行っている不動産会社への電話でのヒアリングである。

物件の最寄り駅またはターミナル駅周辺の不動産会社数社に電話して、次のことを確認しよう。

・想定家賃で空室を埋めることができるか

・募集をかけたらどのくらいの期間で埋められるか

・ターゲットとする入居者の属性は何か(会社員、学生など)

・駐車場・駐輪場は必要なだけの数があるか

・周辺の同じような物件の空室率はどの程度か

・生活用品を買える店などは近くにあるか

・敷金・礼金・広告費はどの程度必要か

入居希望者から見た物件の姿を知るためにも、賃貸付けを実際に行っている不動産会社へのヒアリングは絶対に必要である。

ヒアリングは物件購入における最も重要な作業なので、このプロセスは確実に行う必要がある。できれば複数社行うと良いだろう。

 収支計算をして十分に利益が出ることがわかり、不動産会社へのヒアリングでも問題がなければ、現地に行ってない段階で買付申込書を売主に出してしまおう。

この段階までたどりつく物件はかなり貴重なので、まずは物件確保を優先したほうが良いのである。

買付申込みを入れる際にはひと言伝えることが重要

では、現地へはいつ行くべきなのかというと、買付申込みを行い、優先的に交渉権を得られそうな感触が出てきてからで十分である。

インターネットのマップサービスを利用すれば、物件の外観や傷み具合などは大体わかる。

現地に行かずとも、綺麗で手間がかからなさそうな物件なのか、修繕が必要そうなのかはある程度予測ができるのである。

ただし、現地調査に行って問題が発覚するケースもなくはない。建物の基礎が傾いていたり、問題がありそうな入居者がいたりするような場合である。

これらのことが現地に行ってからわかった場合に備えて、買付申込みを入れる際に「まだ物件の現地調査をしていませんが、それでもいいですか?」と、ひと言仲介会社に言っておこう。これでダメだと言われるケースは、実際はあまりない。

現地に行ってから問題が発覚したらそれを理由に買付を撤回することになるが、よほど大きな問題が出ない限りそのまま進めることになる。

リスクがまったくないやり方ではないが、時間をかけて現地調査を行い、その間に物件を確保しそびれる可能性を考慮すると、こうしたやり方のほうが良い物件を購入できる確率は上がる。

特に、遠方のエリアをメインに検討しているのであれば、このように現地調査は最後に行うようにすると効率的に物件探しに取り組めることになるでだろう。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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