不動産売買契約書のチェックポイントとは?

2020年12月16日1,091

買付証明書提出・交渉権獲得後、売主と交渉の上で契約に関する合意に至れば、いよいよ売買契約となる。

売買に当たっては不動産売買契約書を作成する。

不動産売買契約書は通常、仲介業者が重要事項説明書と併せて作成してくれる場合が多い。

非常に重要な書類であるから、不動産売買契約書は以下の点をしっかりチェックしよう。

売買物件及び授受する金銭について

1.売買する物件の内容・面積など

土地については所在・地番・不動産登記法上の地目・地積をチェックしよう。

地目とは「宅地」「山林」など、その土地の用途のカテゴリーである。

地積とは登記簿上の土地面積だ。

地積については登記上の土地面積と実測面積に差がある事もあるので注意したい。

その場合は実測図のを手配してもらえるのかチェックしておいたほうが良いだろう。

建物については所在・家屋番号・登記上の種類・構造・床面積などをチェックする。

床面積は登記簿上の床面積である法床面積と建延面積をそれぞれチェックしておきたい。

2.売買金額と支払時期

売主との交渉によって合意された売買金額・支払時期に認識の相違がないかチェックしておこう。

尚、不動産売買契約書に土地・建物の価格按分が書かれていることもある。

建物の価格割合が大きいと減価償却費を大きく取ることができ、税務上有利になると言える。

ぜひ併せてチェックしよう。

3.契約解除の場合の取り決めと違約金の額

違約金は概ね売買代金の20%以内の場合が多い。

契約解除の取り決めをする場合は不動産売買契約書上にきちんと金額が明示されているか確認しておこう。

4.手付金による解除の定め

特段の取り決めがない場合、一般的には下記のように解除を認めると定めている。

  • 買主は手付金放棄
  • 売主は手付金倍返し

5.融資特約に関する定め

大多数の人が金融機関からの融資を利用すると思うが、融資が否認された場合は物件代金を支払えなくなり契約違反となってしまう。

それを避けるため、万一融資が下りなかった場合に契約を白紙撤回するという特約が融資特約解除条項である

売買契約書には融資特約について、想定している条件があれば詳細に記載しておく。

記載内容は融資を申し込む金融機関、金利、融資期間などだ。

融資特約を定めなかった場合、どのような影響があるのか。

自分が希望する金融機関から融資を認められなかった場合を想定してみよう。

売主側が例えば金利が高い・融資期間が短いなどの、買主にとって不利な条件での金融機関を紹介することがある。

そしてそこから融資が下りてしまう場合があるのだ。

実際にあった事例として、売主から紹介された金融機関で融資を受けて契約しなければならないこともある。

このような不利な契約を避けるためにも、不動産売買契約書には融資特約を必ず定めるようにしよう。

6.各種負担金や清算金について

所有権移転や物件引渡しと同時に、売主・買主間で清算する金額がある場合もある。

その場合は残代金の支払い時に清算するのが一般的だ。

収益不動産の場合は、下記事項についても精算条件を確認しておこう。

  • 賃料・敷金に関する取り決め
  • 固定資産税・都市計画税などの公租公課
  • 管理費・光熱費など物件運営費用

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売主・買主の契約履行上の責任について

1.危険負担

危険負担とは、売主・買主いずれの責任でもない事由、例えば天災などによって建物が棄損したり倒壊したりした場合の責任をどちらが負担するかという定めである。

不動産売買は、契約締結から売買代金の支払い、物件の引渡しまでにある程度の期間を要するのが一般的だ。

なので、契約後に万一のことがあった際にどちらが責任を負うかということだ。

契約締結後物件引渡しまでに万一の事故がある場合もあるので、しっかりと内容を確認しておこう。

2.瑕疵担保責任

瑕疵担保責任とは購入した不動産に隠れた瑕疵、つまり目に見えない基礎部分が破損していたなどの欠陥があった場合、その責任をだれが負うのかという定めである。

これを明確にしておかないとトラブルの原因になるのでよく確認するようにすること。

尚、不動産業者が売主の場合宅地建物取引業法により物件引渡し後最低2年間は売主である不動産業者が瑕疵担保責任を負うこととされている。

その他、新築物件で売主が建設業者や不動産業者の場合売主が瑕疵担保責任を負う期間は引渡しから10年間に引き延ばされている。

3.抵当権などの第三者の権利について

物件に関して第三者の抵当権などが付着している場合はどうすべきか。

まず所有権移転時までにこれらの権利が抹消されることが明記されているかは必ず確認しよう。

また、第三者の権利で考えられるのは抵当権だけではない。

例えば隣接地の所有者が物件内の敷地を通ることができる地役権などが付着している場合もある。

これらの権利内容についてももう一度確認しておこう。

そしてもしこういった第三者権利が付随している場合は、売買金額に影響することも考えられるだろう。

よって、これらの負担付の売買金額であることに売主と認識の齟齬がないかも確認するようにしよう。

不動産売買契約締結の前に

不動産売買契約を締結後も融資契約を行う金融機関との金銭消費契約締結前であれば、所定の違約金を払うなどで契約を撤回することも可能ではある。

しかし前述のように売買金額の20%以内や手付金放棄など、高額な違約金の支払いが必要になってくるので、気になることがある場合は売買契約を締結する前に問題を解決しておこう。

不動産売買契約書で確認すべき事項は以上のように多岐にわたり、それらの確認には相応の労力もかかるだろう。

しかし不動産は取り扱う金額が巨額であることから、売買契約後の様々なリスクを回避するためにも売買締結前にしっかりと確認しておくべきである。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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