収益物件の概要資料・レントロールの目利き1(栃木鉄骨物件)

2020年12月17日1,265

概要資料には売り出している物件の基本的な内容が全て書かれている。

ここに記載されている情報は漏らさず確認し、どのような内容が掛かれているかを理解できるレベルの知識がないといけないだろう。

概要資料に統一的なフォーマット(様式)は存在しない。各不動産会社が独自の様式を用いて作成している。

この項を参考にして、まずとにかく沢山の概要資料を見て欲しいと思う。

慣れてくれば、

「この物件は収益性は良いが積算が弱い」

「この概要資料には○○の情報が足りない」

などということが、一目見ただけでわかるようになる。

「一目」というのは10秒以内だ。ここまで出来れば初心者からは脱せられていると言えるだろう。

まだ不動産投資を始めたばかりなのであれば、少なくとも数百以上の物件の概要資料をまずは読んでみることをお勧めする。

では、具体的な概要資料を見ながら見方を説明をしよう。

栃木県の物件だ。

まずは上から順に土地の部分からから見ていこう。

所在地は栃木県の某市だ。

地積は2つに分かれて登記されているが、合計の961㎡だけ見ておけば大丈夫だ。

権利の部分は「所有権」になっているが、借地の場合は「借地権」となっている。

利回りがやけに高い物件は、土地の権利が所有権になっているかの確認が必要だ。借地権であれば見送っていいだろう。

ここを見落とすと後から落胆することになるので、特に利回りが高い都心物件などは注意して見よう。

借地権となっていた場合は借地料をレントロールから引いて計算する必要があるが、融資付けで難が出るケースが多い。

次に建物だ。

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構造は鉄骨で平成4年築となっている。

築20年以上の物件なので、残存価値は鉄骨造の法定耐用年数34年から計算すると、10年程度しか融資期間が取れない可能性がある。

融資期間短いと、その分だけ家賃に対する返済の比率が上がる。キャッシュフロー面が厳しそうな案件だ。

床面積は238.48㎡だ。部屋数は12なので、20㎡以下の狭いワンルームまたは1Kであることがこの時点でわかる。

建物の積算は、

建延面積(238.48㎡)×再調達価格(鉄骨は18万円)×残存年数(11年)/法定耐用年数(鉄骨は34年)

という計算式で求める。積算評価の計算方法がわからなければ物件評価1(積算評価)を見てほしい。

この時点で路線価を調べていない場合、土地値がいくらかはわからない。しかし土地の㎡単価が10万円を超えることは地方では稀だ。

慣れてくるとこの時点で、この物件の積算評価額は売価である6000万円を大きく下回ることが感覚的にわかる。

銀行融資が厳しい可能性が高い。

次に「制限」の項目を見てみよう。

都市計画は「非線引き区域」となっており、市街化区域にも市街化調整区域にも属さない区域となっている。かなり奥まったエリアにある物件だろうということが想像できる。

続いて建ぺい率と容積率を見よう。

建ぺい率(けんぺいりつ)とは、土地に対して建物が建っている部分が占める割合だ。

建ぺい率が50%の場合、100㎡の土地には50%にあたる50㎡分が建築面積になる。

これは延床が50㎡までの建物しか建てられないというわけではなく、簡単に言うと建物の1F部分が50㎡以下であれば問題ない。

45㎡×3F建てで、延床が135㎡の建物は建設可能となる。

次に容積率だ。

200%となっているので、土地の面積×200%が建物の延床面積以下となってないといけない。

238.48㎡×2は、延床面積の961㎡を下回るので問題ない。

この物件は地方にある駐車場付きの物件だ。土地が比較的広いこともあり、建ぺい率・容積率ともに問題はなかった。

次に施設の欄だが、ここでまず見るべき点はガスがプロパンになっている部分だ。ガスは通常、プロパンガス(LPガス)か都市ガスのどちらかだ。

ただしオール電化でIHを使っている場合はガス自体が引かれていない。

一般的な認識として、プロパンガスよりも都市ガスの方が安いとされている。プロパンガスは入居者から敬遠される場合もあるのだ。

しかし、プロパンガス会社は交渉すれば付帯設備などをサービスで提供してくれる場合もあるので、不動産投資の場合は一概に都市ガスの方がいいとは決して言い切れない。

私もそうだが、大家としてはむしろプロパンガス物件を好む人も多い。

プロパンガスについて詳しく知りたい場合は、アパート経営でプロパンガスを選ぶべき理由を参照して頂きたい。

水道は公営だ。地方では井戸の物件も少なからずある。

次に下水だがこの物件は浄化槽が付いている。浄化槽とは汚水を浄化して側溝などに流す方式だ。

この部分が「下水道」となっている場合は、汚水を下水道管に直接流し、市町村が運営する浄化センターに集めて浄化して河川に流している。

浄化槽の方が年間のメンテナンス費用は高くなる。

次にレントロールを見よう。

現状家賃でも利回り14%近くまでいくので収益面は悪くない。

家賃のバラつきも少なく、地方都市の1Kで家賃が3万円前後であれば、今のままでも十分競争力がある賃料となっている可能性がある。

敷金を預かっている部屋は少ないので、この水準の家賃帯ではあまり敷金は取れない地域の可能性が高い。

以上で、物件の概要資料は大体見終わった。

収益性はまぁまぁだが、築年数が経過していて積算が大幅に足りない物件だ。購入はNGだという判断を下して良いだろう。

一応、収支計算もしてみよう。

詳しい計算方法は、キャッシュフローの計算方法を参照して欲しい。

路線価3万円/㎡、金利2.5%(元利均等)で計算している。

想定融資期間が11年と短いので、空室率85%時のキャッシュフローがマイナス57万円になっている。

これでは融資は引けないし、属性を利用して無理矢理引けたとしても出口で買い手が見つからずに困ることになる。絶対に買ってはいけない物件だ。

鉄骨であるにも関わらず建物が古いことが、キャッシュフローが出ていないことの原因だ。積算評価額も4,272万円と売価を大きく下回っている。

この物件は検討から外すのが賢明だ。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
詳細プロフィール

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