不動産投資のリスク(金利上昇・損害賠償)

2020年12月17日582

不動産投資には様々なリスクがあるが、この記事では投資をする上で特に注意するべき「金利上昇」と「損害賠償」のリスクについて述べる。

金利上昇リスク

返済原資を家賃収入として融資を受ける場合、金利上昇は大きいリスク要因であり、以下のような対策を取って回避すべきだ。

 (1)融資前のシミュレーションを詳細に行う

現在は低金利が長く続いているが、長期化したデフレを払拭するための政策効果によるところが大きい。

今後、アベノミクスの政策効果によって経済がインフレに誘導されることがあれば融資の金利も上昇する可能性が高い。

多くの金融機関でも貸出時にストレステストなどの審査をしているが、自分でも返済シミュレーションを行ってどの程度の余裕があるのか把握しておくべきである。

試算方法は収益還元評価同様、「年間キャッシュフロー=年間家賃-年間ローン返済額-年間運営費用-公租公課」の考え方で良い。

また、エクセルでPMT関数などを利用すればローンの年間返済額や、最終的な元利合計支払額も把握できる。

 (2)繰り上げ返済で金利返済分を減らす

金利は返済額を大きく左右する。

繰り上げ返済で元金を減らせば、金利返済分の絶対値が低くなるので、結果的に金利変動リスクを下げることができる。

繰り上げ返済のためには自己資金が必要となるが、場合によってはこの方法も考慮しよう。

(3)固定金利ローンを選ぶ

借入時に金利を固定しておけば、金利上昇リスクは無視できる。

だが、固定金利ローンは金融機関に金利上昇リスクを転嫁することなので、長期の固定金利ローンを組める金融機関は少なく、金利固定期間は3年から5年程度、変動固定金利を選ぶのが関の山であろう。

金利固定期間があっても、金融機関は金利スワップでリスクヘッジしているため変動金利よりも固定金利の方が金利が高い。

また期間中解約には違約金を請求されるため、短期での物件売却を考えている場合には固定金利にすると動きが取りにくくなる

よって、現状は固定金利より一般的に金利が低い変動金利を選び、利子支払の差額を繰り上げ返済用自己資金としてプールしておくことが有効な選択肢になるだろう。

損害賠償リスク

不動産を所有していると、法律上は所有者責任と呼ばれるリスクが発生する。

例えば、建物の外壁や屋根材などが落下して人に怪我をさせてしまう、建物の給排水設備から漏水し入居者の家財を損傷してしまう、などである。

これらの損害賠償義務は物件所有者が負うことになる。

損害賠償請求訴訟などを起こされる場合もあるので、その場合時間や精神面などでも負担が大きくなってしまう。

よって、以下のような対策を取ってリスクを回避する必要がある。

(1)設備の点検・補修

建物設備の点検・補修を定期的に行っておけば外壁の落下や漏水などのリスクは防ぐことができる。

管理会社に委託しておけばよいが、管理会社の業務遂行状況は定期的に自分の目でチェックするようにするべきであろう。

尚、法律で定期点検が義務付けられている設備は以下の表の通りである。

【法律で定期点検を義務付けられている主な建物設備】

建物設備 内容
消防設備

 

  • 消防用ポンプの状態
  • 火災報知機・非常ベル・消火器の設置状況及び性能
  • 消火栓の放水圧力
  • 避難ハッチなど避難経路の確保状況 など
  • 以上の点検を年2回行い消防署へ届け出る
貯水設備

 

  • 蓋の固定状況
  • 水槽に付随する機器(ポンプなど)
  • 水質検査 など
  • 年1回点検し保健所などに報告
昇降機

 

  • エレベーターは年1回の定期点検を行って特定行政庁(市区町村町か県などの知事かは自治体による)あてに届け出る

 (2)損害保険に加入する

検査や点検をしていても損害賠償責任が発生してしまった場合には、施設賠償保険に加入しておくことで損害賠償リスクを回避できる。

施設賠償保険は、火災保険などの総合保険のオプションとして用意されている場合も多いので、確認しておくと良いだろう。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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