「売買契約書」と「重要事項説明書」で確認するべき内容
収益不動産を購入するための売買取引では、「重要事項説明書」と「売買契約書」の二つの書類に実印を押印することになる。
「重要事項説明書」は売買予定の不動産に関する内容と取引事項について書かれており、買主が仲介会社から口頭で内容の説明を受けて押印する。
「売買契約書」には、不動産取引に対して売主と買主が合意する事項について記載されており、こちらは売主・買主両者が押印する。
本来であれば、買主が重要事項の説明を受けてから購入を検討し、後日売買契約に至るという流れになるが、実際は手間の問題からほとんどのケースにおいて重要事項説明と契約は同日に実施される。
売買契約は、売主と買主およびそれぞれの仲介会社が一堂に会して契約書を交わすやり方と、売り主と買い主が別々の日に持ち回りで契約を行うやり方がある。
どちらでも問題はないが、売主の顔を見ながら契約書の内容を確認したほうが、契約書に載せるほどではないが気になることがあった場合に、直接聞くことができる。
不動産の売買契約書には、売買に関するすべての内容が記載されている必要がある。
決済予定日が近かったり、売買の仲介を行う不動産会社が怠慢だったりすると、契約日が近くなった段階で慌てて契約書を作成するということもよくある。
このような場合でも、必ず事前に契約書内容をしっかりと確認しよう。少なくとも1週間前には契約書のドラフトを仲介会社から入手し、すべての内容について納得がいくまで精査する必要がある。
目次
契約書の内容で特に気をつけるべき点
1.概要資料等に記載がなかった説明事項の確認
概要資料には細かいことが書き切れないため、接道状況や近隣との取り決めなどについては契約の段階で初めて明らかになる事項が存在する場合がある。
また、最初の段階で制約事項を多く開示してしまうと買主の意欲が減退してしまうため、不利な内容はあえて後出しにするという少しズルいやり方をする仲介会社も少なからず存在する。
不利な状況がないか仲介会社に確認するとともに、自分でも契約書の内容をすみずみまで確認しよう。
2.レントロールと賃貸契約書の突合せ
契約締結時点のレントロールは、必ず契約書に記載してもらおう。
また、レントロールと賃貸契約書の突き合わせ、レントロールが正しいかどうかの確認も行う必要がある。
レントロールに記載している賃料が間違っていることが、決済して管理会社と引継ぎを行う段階でに発覚することが稀にあるからだ。
その場合は差額を利回りで割り戻して、売主に減額請求する必要がある。
利回り10%の物件のレントロールが実際よりも3000円安かった場合は、3000円×12か月÷10%で36万円を請求するという計算になる。
レントロールが間違っていた場合にこのような請求を行うことは、契約の場であらかじめ伝えておいたほうが良いだろう。
3.支出項目の確認
すべての支出項目の確認を必ず契約前に行おう。
共用部の水道代、電気代、エレベーター費用などは問題ないが、ケーブルテレビやインターネットに加入している場合は設備の費用負担がある場合があるので、すべての費用項目を売主から聞き出してもらおう。
これらの確認は収支計算をする上で大変重要となるので、契約する直前の段階で確認するのでは遅すぎるぐらいだ。
4.引き継ぐべき付帯契約の確認
収益物件を保有していると様々な業者と契約を行うことになる。管理会社、エレベーターメンテナンス会社、プロパンガス会社、清掃会社などである。
売主がこれらの会社と長期契約を結んでいる場合、新たな買主とも契約の継続を求めてくるか、設備費用の一括支払いを求めて来る場合がある。
契約書に記載のない契約は引き継ぐ必要はないが、プロパンガス契約の途中解約時に違約金などがある場合、後から売主ともめる可能性があるため契約の段階で確認しておく必要がある。
敷地外に駐車場を借りている場合や携帯電話の基地局契約がある場合などについても、契約期間などについて確認をしよう。
重要事項説明書と売買契約書は早めに内容の確認を行う
契約時に確認すべき内容について説明したが、契約書に必ず記載されている融資特約(融資が下りなかった場合に契約解除できる特約条項)の期限や瑕疵担保責任(物件に隠れた欠陥が見つかった場合の対応)なども、問題がないか見ておく必要がある。
売買契約で重要なのは、とにかく早めに重要事項説明書と売買契約書のドラフトをもらい、内容を確認することである。
不動産業界は、何に関しても大ざっぱさが許される風潮があるため、契約書を買主に見せるのが契約日当日でもおかしくないと考えている仲介会社も多く存在する。
他の業界から見ると、とんでもない話のように聞こえるが、悪気なくそのように進めてしまう場合もある。
ただし、そのような慣習をうまく利用して、買主にとって多少不利益であっても、そのまま契約日当日に丸め込んで進めようと考える不動産会社もいるため注意が必要である。
この記事の監修者
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