大規模修繕のリスクを気にする人は、不動産投資の本質を理解していない

2020年12月18日1,471

不動産投資をやっていると、大規模修繕の出費について聞かれることがある。

「どのようなタイミングで大規模修繕を行おうと思っていますか?」

「大規模修繕のための毎月積み立てはやっていますか?」

などだ。

大規模修繕が大きな支出を伴うことはみんな知っているので、そのことをリスクだと感じているようだ。

私は築20年以上の物件を複数持っており、築30年以上の物件も持っている。

築30年の物件は、壁を一度も塗り替えていない。

新築時から30年間、一度も大規模なメンテナンスをしていないのだ。

さすがに、雨漏りや水漏れなど多少の問題は出て来るが、もの凄く緊急を要する事態にはなっていない。

大規模修繕の予定はなく、しばらくこのままにしておくつもりだ。

私が外壁の塗り替えなどの大規模修繕をしないことの理由は、費用対効果が合わないからだ。

20戸以上あるファミリー物件の外壁を塗ろうとすると、600万円程度は掛かることになると思う。

仮に600万円掛けたとしても、築20年の以上の物件であれば、家賃は全く上げられないだろう。

それであれば、内装だけ綺麗にして、だましだましやっていた方がマシだ。

外壁を塗らないからと言って、明日から住めなくなるような問題が発生することはないのだ。

水道の配管も同様だ。年月が経てば劣化はしてくるし、破裂することもあるかもしれない。

だからといって、大規模な予防的措置をする必要性が私にはわからない。

日本のリフォーム会社は優秀だ。水漏れがあっても、即座に場所を特定して修理をしてくれる。

それで直るのであれば、毎回発生するたびにその対応を繰り返せばいいだけだ。

何故私がこのようなやや場当たり的な考えを持っているかと言うと、そもそも家賃が安いセグメントで勝負をしているからだ。

月5万円で駐車場付きのファミリー物件に住んでいる人は、外壁が多少汚れていようと、機能的に問題がなければ満足して住んでくれるのだ。

もちろん、汚い状態よりは綺麗になっていた方がいいに決まっている。それは入居者も私も同じだ。

しかし、外壁を塗ったから家賃を1万円上げさせて欲しいと入居者にお願いしたところで、全く取り合ってもらえないだろう。

誰もうれしくならない対応をやったところで、単なる自己満足にしかならないのだ。

これが10万円以上家賃を取るグレードの高い物件だったら、様相は変わってくるかもしれない。

ほとんどの中古物件は、多少の汚れや機能劣化があっても、無理して直さずにそのままにしておいた方が、収益性は高く保てるのではないかと思う。

大規模修繕が即時に必要な物件というのは、実はあまりないのだ。

ましてや、いきなり大規模修繕をやらなくてはならない事態に直面することなどは、決してないのだ。

そうとは言え、どうしても大規模修繕をやらなくてはならないケースは、物件を保有し続けていれば今後出て来るとは思う。

その際は、大規模修繕のお金をキャッシュアウトさせたままにしておくよりも、速やかに売ってしまって利益を回収した方がいいかもしれない。

もちろん、その時点の相場がどうなっているのかや、買主がいるのかどうかという問題はある。

しかし、キャッシュフロー的には、大規模修繕と売却を同時にやった方がいいことは間違いないだろう。

大規模修繕について無計画でいるのは良くないが、このように出口戦略と合わせて考えていれば、不動産投資をする上でのリスクにはなり得ないのではないかと思う。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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