アパート経営を始めるための資金はどれくらい必要?

2020年12月14日9,962

自己資金と年収がどれくらいあればアパート経営やマンション経営を始められるのかは、私が多くの人から聞かれる質問だ。

日本でもアパート経営がブームになり、不動産を買っている人も多く、書籍や雑誌で不動産投資がとりあげられる機会も年々増えている。

そのような人たちをみて、自己資金が少なかったり年収が低くても、アパート経営を始める方法はないか?と考える人が多くなっているのだろう。

アパート経営に必要な自己資金の最低ラインは“300万円”!

結論からいうと、アパート経営を始めるための自己資金の最低ラインは300万円くらいだと考えている。「年収500万円で自己資金300万円」これが不動産投資を始めるうえでの一つの基準だ。

購入する物件を数百万円の規模にしぼれば、もっと少ない年収・自己資金でも始められなくはない。

ただし、設備故障など突発的な出費があった際のことを考えると、手元の資金が少ないのはかなりリスキーだ。やはり、300万円程度はつねに手元にないと、アパート経営をしていくのは厳しいと思う。

自己資金がゼロでも不動産投資を始めることはできるか?と聞かれることもあるが、自己資金がまったくのゼロという状態で不動産投資を行うことは正直むずかしい。

やり方によっては完全に不可能ということではないが、自己資金がないというのは不動産投資においてかなりのマイナス要素である。

そのマイナスをカバーできるだけの圧倒的な行動力と知識、戦略がもとめられる。自己資金がゼロでもやり方を探りたいという人は「アパート経営は自己資金ゼロだと厳しい!最低何万円でできる?」の記事を参考にしてほしい。

なぜアパート経営で自己資金が重要視されるのか

なぜ、自己資金の多い少ないが不動産投資を始めるにあたって重要視されるのか。それは、不動産投資の最大の特徴である金融機関から「融資をうける」というところにかかわってくる。

不動産投資では、数百万円〜数億円の物件を金融機関から融資をうけて(資金を借りて)購入・運用する。その際、一般的に物件の1割程度を頭金として現金で支払う必要があるのだ。

また、一時的に頭金さえ払えればOKというわけではなく、数年、数十年と長期的にみて、アパート経営を継続、ひいては金融機関に借りたお金を返済し続ける能力があるのかということをトータルで判断される。

それにあたり、自己資金が多く年収がよければ、返済能力が高く不意のアクシデントにともなう出費にも対応できるという判断材料の一つにしてもらえ、融資をだしてもらいやすくなるのだ。

自己資金は多いほうがいいが、使うべきではない

融資をうけるにあたって、自己資金の額は重要視されるが、実際にその自己資金を使うべきかはまた別の話だ。私は、自己資金はできるだけ使わないことを常々おすすめしている。

アパート経営を軌道にのせ投資規模と利益を拡大していきたいのであれば、できるだけ少ない自己資金で融資をうけることは、実際の自己資金が多い少ないに関係なく重要なことだ。

たとえ自己資金を5,000万円もっていたとしても、1棟5,000万円の物件をキャッシュで購入してしまえば、次の物件を買うことができないため、それ以上投資を進められない。

さらにいうと、5,000万円の物件に頭金1,000万円を投入して購入したとしても自己資金を使いすぎだ。たとえば、税引き後の手残りが100万円だったとすると、投下した頭金1,000万円の回収に10年もかかる。

投資回収の利回りが10%の金融商品だとすると、リスクや手間のわりにリターンが少ないと私は感じてしまう。

潤沢な自己資金があったとしてもそれを温存し、いかに融資を使いレバレッジを効かせて物件を買い進め利益をだしていくかが、アパート経営の醍醐味であり手腕の見せ所でもあるのだ。

しかしながら、仮に毎回フルローンをうけられたとしても、購入時には手付金として物件の5%~10%程度を売主にあずける必要がある。

また、不動産取得税や火災保険などの費用も物件価格の7〜8%必要になるため、自己資金として自由に動かせるお金は、やはりある程度は必要なのが現実だ。

自己資金や年収が少なくてもアパート経営の融資はうけられるのか?

融資のイメージ

そもそも、私がすすめるアパート経営手法は、割安な1棟ものの中古物件を見つけ、自己資金をできるだけ使わずに銀行から融資をうけて購入するという方法だ。融資がうけられなくては始まらない。

このやり方を実践するのであれば、4部屋しかないなどよほどの極小物件を除き、最低でも2,000万円以上の価格帯の物件をねらうことになる。

中心となる価格帯は、RC(鉄筋コンクリート造)なら5,000万円以上だ。この規模の物件を融資なしで現金購入できる人は少ない。

1億円の物件で頭金が1割必要だとすると、自己資金は1,000万円ないといけない。この規模の金額を支払うのはキツイ人も多いと思う。貯金などの手持ち資金が2,000万円あってもやや心もとない。

日本政策金融公庫・商工中金などの政府系の銀行をうまく使えれば、年収はさほど問題視されず融資をうけられる可能性がある。

これらの銀行が、メガバンク・地銀・信用金庫など民間の金融機関が融資をしないスキマの企業や個人に融資することを目的としているからだ。

女性支援の特別融資や創業時の特別融資枠があることからも、これら政府系の金融機関の役割がほかの金融機関とは少し違うということがわかると思う。

基本的に、中小企業の支援を目的としているので、何億円もの融資をうけることは原則できないが、高利回りの木造物件などの購入には適しており、金利もさほど高くない。

ただし、融資年数は比較的短く、日本政策金融公庫だと耐用年数にかかわらず通常10年、長くても15年だ。

地銀や信用金庫を利用するなら、年収は最低500万円必要だと考えてほしい。700万円あれば選択肢はかなり広がる。

親に資産があるなどの理由で年収が少なくても融資をうけられる可能性はあるが、400万円台の年収だと政府系の金融機関を使うことになるだろう。

自分がどんな金融機関を使うことができるのかは、「不動産投資ローンの融資を受けられる金融機関一覧(年収別)」を参考にしてほしい。

アパート経営がスタートできれば自己資金を借りることもできる

アパート経営を始める際の自己資金は、最低ラインが300万円となるが、いったん物件を購入し、アパート経営を始めることさえできれば、その後の自己資金はどうにか工面できるケースもでてくる。

不動産を所有していれば、運転資金のために融資をひける可能性があるからだ。

私は実行していないが、日本政策金融公庫において1,000万円程度の運転資金を借りる目的で融資をうけることがブームになった時期があった。

以前は、政策金融公庫から少額の運転資金を借り入れた場合、個人の信用情報にその借入情報が載らなかった。そのため、ほかの銀行に融資打診に行った際、あたかも自己資金が増えているかのようにみせることができたのだ。

その後、日本政策金融公庫が信用情報に借り入れ履歴をすべて載せるようになったため、このような使い方はされることは少なくなった。

このケースは一例にしても、不動産をもっていることで金融機関から融資をうけやすくなることは事実だ。資金がなく不動産投資を始められないという人は、まずスタートの300万円をどうにか確保するところを目標にしよう。

アパート経営では「熱意と行動力」が資金力を上回ることもある

私が会ったことがある人には、数百万円の自己資金しかないにもかかわらず、半年で5棟(3億円以上)購入した人もいる。簡単ではないが、トライしつづければ道は拓ける可能性があるのだ。

年収が高く自己資金が多い人が、不動産投資において有利なのは間違いない。しかし、そのような人がいい物件を購入しているとは限らないのが実状だ。

選択肢が多いだけにどんな物件でも買えてしまうので、不動産産会社から筋の悪い物件をつかまされている人も多くいる。年収が高い人のほうが、変な物件を購入している割合は多いのではないかとさえ思う。

むしろ、限られた制約のなかで最善を尽くしている人のほうが、都内で利回り13%以上などの超好条件の物件を購入しているケースを多くみかける。

最低限の年収や自己資金は必要だが、そこから先は不動産投資にかける熱意と行動量が成否を分けるというのが率直な実感だ。

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普通のサラリーマンから計5億円以上の物件を購入してきた私の経験から得たノウハウや融資の最新情報、非公開物件情報などをあますことなく配信している。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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