良い物件があっても不動産会社が自社で購入しない理由
収益不動産の話をすると、下記のような感想を述べる人がいる。
「世の中に上手い話はないと思います。良い物件があるなら、なぜ不動産会社が自社で買わないのですか?」
この手の思考をする人は危機察知能力が高いサラリーマンタイプの人に多く、失敗をすることを何よりも嫌う。
その点においては、投資に向いている性格だとも言える。
この考えの根底には、
「不動産会社は、自社で買わないようなダメな物件だけを流しているだけだろう」
という、ある種の懐疑が根底にある。
しかしながら、実際に不動産投資をやっている人でも、何故不動産会社は自社で買わないのかという疑問について、明確に答えられる人は少ないのではないだろうか。
不動産会社の収益構造とは
不動産仲介会社は、そもそも仲介手数料を生業にしている会社である。
仲介会社の収益構造は単純で、事務所の賃料、人件費などの固定費が経費としてかかり、成約時に3%取る仲介手数料が主たる収入源になる。
計算してみるとわかるが、月一回5,000万円の物件を片手仲介すると約150万円が入るが、社員が3人いて事務所費用等が別途掛かっているとすると、トントンぐらいになってしまう。
より大きな物件を扱うか、月に何本も仲介を行うような体制がないと赤字になってしまうのだ。
自社の顧客の数が限られ、物上げ(売り物件探し)と顧客探しの両方を営業マンに頼っている会社は、労働集約型の側面が強い事業形態だ。
常に手数料を稼いでいないと会社は回らなくなり、利益幅の向上は個々の社員をスキルアップさせて業務の効率化を図ったり、案件の成約率を上げるしか方法がない。
仲介会社は、事業資産をストックする形態のビジネスではなく、労働集約で稼ぐフロー型のビジネスの側面が強いのだ。
それゆえ、例えば都内で利回り12%で5,000万円という良い条件の物件があったとしても、そのまま購入して自社で保有しようとは思わないのが普通だ。
いくら希少性が高い都内の高利回りでも、利回り12%の物件を融資を引いて購入すると年間の利益は100万円ほどだろう。20棟ぐらいを保有していないと、社員3人分の給料を賄うまでにはならない。
そうなると、5,000万円の物件を買い取って6,000万円で売ったり、仲介をして150万円を即金で入手した方が、会社のキャッシュフローは安定する。
転売して利益を上げられそうな割安な物件であれば、自社で一旦買い取ることを行うかもしれない。
そうなるとやはり割安な物件というのは存在しないことになるが、買い取りをすると自社が売主となるので、不動産会社には買主に対して瑕疵担保のリスクが発生する。
不動産会社が買い取る時も現金ではなく銀行融資を使う場合が多いので、時間が掛かってしまうとそもそも買えないリスクも出て来る。
仲介する場合と利益が変わらなそうであれば、さっさと顧客に買わせて仲介手数料を即金で得る方が得だと考えても全く不思議ではない。
個人でもいい物件は見つけられる
先の説明の通り、不動産会社は、必ずしも自社で買わないようなダメ物件だけを顧客に流しているわけではない。
市場に出ている不動産は、そもそもの値付けが高過ぎる物件が70%以上を占める。
このような物件は高く売れれば売るというスタンスで売主が出しているので、成約しないまま市場から消える場合も多い。
市場価格の物件が25%ぐらいあり、多くの人がこの価格で購入することになる。
残りの5%が、転売業者や割安な物件を求める投資家が買う物件で、我々はこのような物件を狙う必要がある。
良い物件は情報量の多い不動産会社が持って行ってしまうという事実は動かしがたいが、それはあくまでも総論だ。個別論ではない
それを覆すだけの努力をすれば、必ず良い物件を購入することは出来る。
経済学の理論の中には、市場が完璧に機能していて、全ての人が全ての情報を入手していれば価格は常に最安値で一定となるということを前提にしているものが多くある。
経済学の用語で言う「効率的な市場」が形成されている状態だが、実際に生活してみるとそんなことは現実的には起こらないことがわかるだろう。
みんなスーパーより値段が高くてもコンビニで物を買うし、高額な商品も定価販売のデパートでしか買わないという人も多く存在する。
逆に、季節家電やモデルチェンジ前の製品などが、赤字スレスレで相場よりかなり安く電気屋の店頭に並ぶこともある。
不動産も同じように、色々な要因により安く売りに出される物件は必ず存在する。
そのような物件は決して多くないことは事実だが、プロの投資家を目指すのであれば、少しでも割安な物件を見つけ出して買う努力をするべきだと思う。
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この記事の監修者
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