3種類の媒介契約におけるメリット・デメリット

2020年12月16日1,978

不動産を売却する場合、通常は仲介業者に依頼することになるが、この仲介業者と売主との間の契約を「媒介契約」という。

媒介契約には大きく分けて3種類の契約方法があり、それぞれ下記のような特徴がある。

3種類の媒介契約の特徴

1.専属専任媒介契約

売主は一社の仲介業者に取引の仲介を任せる。

売主が自分で買主を見つけても自由にはその買主と契約交渉ができず、仲介業者に手数料を支払わなければならない。

2.専任媒介契約

売主は一社の仲介業者に取引の仲介を任せる。その点は専属専任媒介契約と同様である。

ただし売主が自分で買主を見つけた場合、売主はその買主と自由に契約交渉ができ、仲介業者に手数料を支払う必要はない。

3.一般媒介契約

売主は同時に複数の仲介業者に取引の仲介を依頼できる。

売主が自分で買主を見つけ契約交渉することも可能である。

以上3つの媒介契約の特徴を押さえたところで、次はそれぞれの媒介契約により仲介業者が負う責任をみていこう。

媒介契約の種類によって仲介業者が負う義務の違い

媒介契約の種類

契約の有効期間では「専属専任媒介契約」と「専任媒介契約」が最大で3ヶ月であり、媒介契約締結からレインズへの登録までが5日以内(「専属専任媒介契約」)、または7日以内(「専任媒介契約」)と義務づけられている。

ちなみにレインズというのは、不動産会社がお互いの物件情報を共有するために設けられた情報システムであり、指定流通機構に会員登録をしている不動産会社だけが利用できる。

ここに物件情報が登録されると多くの不動産会社に情報が行き渡り、物件情報を手に入れた仲介会社が買主を見つけるという流れになる。

この時に売買が成立すれば、下記の図の通り、買主はその情報を提供してくれた仲介会社に仲介手数料を支払い、売主は自分が契約した仲介会社に仲介手数料を支払う仕組みになっている。

また、売主から依頼を受けた仲介会社が買主を見つけた場合は、売主と買主の仲介会社は同じで1社のみとなる。

新仲介の図式

一方「一般媒介契約」は契約に有効期間はなくレインズへの登録義務もない。

3種類の媒介契約のメリット・デメリット

それでは上記を踏まえて、売主の立場から見たメリット・デメリットを考えてみよう。

まず「専属専任媒介契約」のメリットは、仲介会社にとっては売却できれば確実に手数料収入が得られる契約であるため、仲介会社の意欲が高いのが一般的である。

また契約の有効期限が最大で3ヶ月間のため、仲介会社は期間内に買主をみつけようと売却の優先度を上げて販売活動を行う可能性も高い。

次に「専任媒介契約」だが、上記の「専属専任媒介契約」と同じく1社だけに仲介を依頼する契約であるため、基本的なメリットは上記と同様である。

さらなるメリットとしては、売主が自分でも買い手の目処はたってはいるが、よりよい買主を探したい時に利用しやすい点が挙げられる。

3つめの「一般媒介契約」では、複数の仲介業者に依頼をすることが出来るため、情報の流通度は一番高い。

先の2つの媒介契約に比べて仲介業者の優先度が下がる点は否めないが、逆に「一般媒介契約」では契約の有効期限もないため、急いで売る必要がない場合は情報を多方面に流すことによって、よりよい条件の買主を探すという方法もある。

しかし、それぞれの媒介契約において、デメリットもまた背中合わせであることを知っておかなければならない。

「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」では1社のみが売主の窓口になるにも関わらず、仲介業者が負う責任は驚くほど軽い。

売主への報告義務が1週間に1回(「専属専任媒介契約」)、または2週間に1回(専任媒介契約))あるのと、先に説明したレインズへの登録義務のみである。

そのため、仲介業者がどの程度の労力をかけて買主の募集を行っているかまでは報告の対象に入っていない。

極端に言えば、物件情報を近隣の不動産会社にFAXしているだけであっても、それすらせずにレインズに物件情報を登録だけして問い合わせをただ待っている受け身の状態であっても、「情報提供を行っている段階です」などと売主に報告すれば十分なのだ。

しかも、この報告は口頭で説明するのではなく、メールやFAXでも構わない。

これでは十分な責任を負っているとは言えないだろう。

「中小業者だから、そんなことが起こる。大手の不動産業者なら、情報網も広いだろうし間違いなく業務を行ってくれるだろう」と安易に考えることも危険である。

確かに大手の不動産業者は全国ネットワークで事業展開していることが多く、情報網も広い上に営業マンも多く抱えてはいるだろうが、それ以上に多数の売却依頼が集まる。

扱う依頼件数が多くなれば一件ごとにかけられる時間も労力も少なくなってしまうのも当然だ。

また、大手不動産業者の営業マンは重いノルマを課されていることが多い。

そのため、自分のノルマ達成のためにより高額な、より大きな不動産の売却に注力する傾向があり、その他の案件にかける時間が極端に少ないということも良くある話だ。

大手有名企業だから安心だろうという意識で仲介業者を選ぶと、売主は思わぬ不利益を被ることもあるのだ。

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仲介業者と契約を結ぶ前に確認すべきこと

それではどのような媒介契約を選ぶのがよいだろうか。

ここで重要なのは媒介契約の種類ではなく、契約前の事前確認だ。

より有利な条件で売却したいのであれば、契約を結ぶ前に仲介業者と以下の3つの事項について確認しておく必要がある。

1.具体的にどのような方針で売り出すのかという「営業方針・営業戦略」

2.営業ターゲットはどのような買主なのかという「見込み客の設定」

3.いつまでに、何を、どのように行うのかという「処理計画」

これらの3項目を確認して、納得のいく準備をしてくれる仲介業者かを見極めたい。

もしこれらの基本的事項について十分に説明できないような仲介業者だった場合は安易に媒介契約を締結せずに、時間をかけてでもより信頼できる仲介会社を探した方がよいだろう。

この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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