不動産投資でリスク・失敗を回避しながら月50万円を得る方法

2020年12月16日7,314

目次

1.なぜ不動産投資は会社員に向いているのか

圧倒的に会社員に向いている投資は、収益物件購入による不動産投資だと私は思っている。

普通の会社員が月50万円の利益(家賃収入-経費-返済)を得ることも十分可能だ。

そう考えるのには、二つの理由がある。

第一の理由として、他の株・FXなどの投資や副業に比べて掛ける時間が圧倒的に少なくて済むことが挙げられる。

ただし簡単ではないことは明示しておきたい。

ネガティブな話から入るが、優良物件を探して購入するのはそれなりに大変だということは覚えておいてほしい。

ネットで毎日物件を探して、週末は不動産会社に行ったり物件を見に行ったりする時間を確保する必要があるからだ。

「これは買いだ!」

と思うような優良物件が見つかったとしても、その物件に融資を受けて買うことになる。

そのために、銀行を見つけるために、またしても奔走することになる。

ここまでやっているにも関わらず、結局融資付けので売り止めになってしまったりすることも多く、そうなるとまた一から探しはじめないとならない。

物件を見つけてから決済して不動産の所有権が移転するまで、順調に行っても2か月ぐらいは掛かることになる。

銀行や証券会社に頼めばすぐに買えてしまう株や投資信託と違い、不動産売買は買主と売主が1対1で条件を取り決めて売買を行うので、購入までに非常に多くの時間を要するのだ。

価格についても、株や投資信託のようにみんなが決められた公示された価格と言うものはない。

不動産市場にも相場はあるが、実際の売買金額は買主と売主が合意すれば、基本的にはどんな価格であっても取引可能だからだ。

不動産は1つとして同じものは存在しないため、売買のルールも最低限の基準が宅建業法で決まっているだけで、価格を始めたとした詳細な売買条件は、その都度決める必要があることも特長的な点だと言える。

また、投資する金額が大きいこともあり、買主であるあなたと売主である現オーナーの他に、不動産会社の営業マン、銀行の融資担当者、司法書士など沢山の人が関わって来る。

そうなると、必然的に一件の売買を行うのに、非常に長い時間が掛かることになるのだ。

一旦売買が終了し、マンションやアパートの所有権が買主であるあなたに移転した後も、空室があればそれを埋める計画を立てたり、リフォームが必要であれば手配したりする必要がある。

ここまでの話を読み、

「不動産投資は時間が掛かるので、普通の会社員が取り組むのは大変なのではないか?」

と思ったかもしれない。

しかし、長いスパンで考えるとその様相はかなり異なって来る。

満室になり、アパート経営が安定してくると、オーナーがやるべき仕事はあまりなくなってしまうからだ。

入居者からの入金や問い合わせを専門の管理会社に任せた場合、主な仕事は月一回送られてくる入金レポートのチェックぐらいになる。

自分で物件を毎週見に行ってもいいが、何回見に行ってもほとんど変化がないので、すぐにやる必要がないことがわかるだろう。

不動産投資をやるには大きい金額を扱うことになるため不安に思うかもしれないが、慣れて来ると時間も掛からず安定する状態を作れるので、精神衛生上も非常に良い種類の投資となるのだ。

また、家賃は価格硬直性があるため、景気によって左右されることがあまりない。

今月6万円の家賃を徴収している部屋があれば、3年後もそのまま6万円の家賃で入居してもらえる可能性が高いのだ。

賃貸マンションに住んでいれば、家賃の金額が変わらないことは当たり前なことだと思うかもしれないが、投資の視点から考えるとそうでもないことがわかる。

株・投資信託・FXの場合は株価・基準価額・為替レートがそれぞれ毎日変化する。

値上がりや値下がりに一喜一憂しながら売買を繰り返すのは、本業を持っている会社員には体力的にも精神的にも大変な負担がかかることになるのは想像に難くない。

投資活動によって本業の会社員の仕事にも影響が出てしまっては、元も子もないと言える。

不動産投資は、物件を買うまでに労力や精神的負荷が掛かるものの、一旦買ってからは手間がかからない上に日常生活において常に気に掛ける必要もない。

買う前の段階で収益がどの程度入るかがある程度精緻に予測できるので、忙しい会社員にとって非常に向いている投資だと言えるのだ。

会社員に向いていることのもう一つの理由は、会社員の信用力を使って金融機関から融資を引けることだ。

不動産は安いものでも1千万円以上する場合が多く、一棟物であればその多くは3,000万円以上する。

それ故、個人も法人もほとんどの人が銀行から融資を引いて物件を購入することになる。

アパートローンの融資審査では、物件そのものの収益性や資産性も重視するが、同時に個人の収入や勤務先の安定性も問われることになる。

その際に、金融機関は真面目に働いている会社員は、収入が安定している貸出先だとみなすので、そうなると稟議が通しやすくなり、より多くの金額を借りられる可能性があるのだ。

同じだけの年収を得ている経営者・自営業者と比べた場合、会社員の方が間違いなく融資が通る確率は上がる。

多くのサラリーマンは本業が忙しく、投資や副業に時間を割くことはなかなか難しい状態だと思う。

不動産投資はこのように真面目に働いていてなかなか投資や副業に時間を使えない人の方が有利に進められる、稀有な投資なのだ。

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2.頭金はいくらあれば不動産投資が始められるか

結論から言うと、数千万円規模の物件を購入したいのであれば、自己資金は最低でも300万円程度は用意しておいた方がいいというのが私の考えだ。

数千万円ぐらいの規模の物件を買って不動産投資を始めるには、最低限これだけの自己資金は必要だ。

これを読むと

「頭金は3割程度求められるので、自己資金はもっと必要なのでは?」

と思った人も居るかもしれない。

また、実際にこのような説明を不動産会社から受けた経験がある人もいると思う。

確かに、多くの物件は頭金を3割程度入れれば収支が合うことが多く、特に大手銀行がワンルームなどの区分物件へ融資する場合この傾向が顕著だ。

しかし、一棟物件の中では比較的手ごろだと言える3,000万円の物件でも、3割頭金を入れるとすると900万円もの資金が初期投資として必要になる。

これに加えて、売買時には税金や仲介手数料などの諸経費が物件価格の7%程度掛かるので、1,000万円以上必要になることになる。

この3,000万円の物件から年間50万円収益が上がったとしても、1,000万円強の初期に対して年間5%以下しか還元されないことになる。

これでも他の投資先と比べると十分高い利回りのようにも思えるが、不動産投資には様々なリスクがあるので、5%程度の実質利回りだとあまりいい投資だとは言えない。

物件価格に対して9割の融資を受けたり、10割の融資(フルローン)を受けたりすうことが可能であれば、この問題は解消される。

しかし、それには収益評価が高く資産性もある物件を探し、金融機関に持ち込む必要がある。

自己資金を300万円用意すべき理由を、3,000万円の物件購入を例にして考えてみよう。

この物件をフルローンで融資を受けたとしても諸経費が7%程度かかるので、210万円が自己資金として必要となる。

自己資金が300万円あれば90万円が残る計算にるが、リフォームなどの突発的な出費が発生したときのことを考えると、やや心もとない数字だ

汚れている部屋のリフォーム費用は単身用のワンルームで15万円程度、ファミリー用で30万円程度かかることが多く、突発的に2つ3つ部屋が空いてしまった場合、自己資金が底をついてしまう。

こうして計算をしてみると、やはり自己資金は最低でも300万円必要で、出来ればもっとあった方が安全だということが良くわかると思う。

購入後の資金繰りの一つの目安として、購入した物件価格の5%程度は常に手元に資金がある状態を出来れば作って欲しいと思う。

5,000万円の物件を保有しているのであれば250万円、1億円の物件を保有しているのであれば500万円を予備資金として有事の際に備えておくのだ。

これぐらいあれば運悪く数十万円程度かかる水回りのトラブルが立て続けに発生しても、十分余裕を持って対処出来る。

ここまで読んでみて

「私は貯金が少ないので、1億円以上の物件は買えない」

と思うかもしれない。

一般論で言うとその認識で間違っていないが、沢山の物件を買っている人の中には資金が少ない状態で始めた人も大勢いる。

そういう人がどのようにして合計数億円以上にも上る物件を購入しているかというと、いくつかのパターンがある。

  1. 1.リフォーム費用を含めたオーバーローンで融資を受けている
  2. 2.用途を定めないフリーローン等を別途受けて、自己資金を増やしている
  3. 3.物件売却を経て、多額の現金を得ている

物件を沢山購入している人は、これらのどれか、もしくは全てをやっているケースが多いのだ。

頭金として入れられる自己資金がある程度あるのであれば、一気に1億円以上の物件を狙うのもいいが、自己資金が少ない場合まず物件を一つ買うことから始めよう。

そこから上がってくる収益を蓄えて、次の物件購入の原資にすることを繰り返すことで投資規模の拡張は可能だからだ。

逆に頭金を多く入れられるだけの資金を持っている人も、安易に7割融資で物件を購入しないで、出来るだけフルローンを狙った方が良いと言える。

これは、単純に資金を効率的に使った方が良いからというのが理由だ。

金融機関からすると、頭金を多く入れてもらった方が、月々の返済額が減り、返済期間が短くなるので好まれる。

しかし投資家サイドからすると、これは逆だ。

手元に余裕資金を置いておいた方が突発的な出費に対応できるからだ。

ここまでの話を理解していれば、よく言われる「頭金を入れた方が返済は楽になる」というのは、おかしな話しだということがわかると思う。

今のように金利が低い状況下では、資金を手元に残しておいても返済に回しても返済の総額はあまり変わらないからだ。

資金を持っている人も、あまり資金がない人も、出来るだけ頭金は少なくして物件を購入出来た方が、良い投資が行えていると言えるだろう。

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3. いい物件の条件とは何なのか

不動産投資を勉強していると色々な投資法があることに驚くと思う。

新築アパートを建てる手法、築古の高利回り物件を狙う手法、低価格の戸建を買ってリフォームする手法、大規模RCを購入する手法、土地値の木造物件を買う手法など、様々な投資法が数多くある。

当然ながら、それぞれの手法で「いい物件」の定義は異なる。

手法はこの通り色々あるが、資産を持たない会社員や自営業者が不動産投資に取り組むのであれば、次の二つ要件を満たした物件を買うべきだと私は考えている。

  • ・キャッシュフローが出る
  • ・売却するのに困らない

キャッシュフローの重要性は何度説明してもやり足りないぐらいだ。

不動産投資の手法はどれを選んでもいいと思うが、キャッシュフロー(税引き前利益)を出すことにはとことんこだわって欲しい。

資産を持たない我々は、まずは現金を積み増さないと、次の展開が非常にやりにくくなる。

100万円ぐらいの貯金があったとしても、それを公言したところでいい物件情報は手に入らないが、1億円あればいい情報も入ってくるようになり、銀行もお金を貸したがるので有利な投資が出来るようになる。

これは極端な例だが、同じように100万円より1,000万円、1,000万円より3,000万円持っていた方が、物件選びにおいても選択肢が広がることになる。

資金が増えれば収益を上げるチャンスがさらに広がるというのは至極単純な話だが、不動産投資をやっていると必ずしも収益性を重視しないキャッシュフロー軽視の投資を行っている人が散見される。

多くの人が会社員向けの融資商品であるアパートローンを使って物件の融資を受けているが、この商品の融資額には実質的な限度額がある。

数億円程度アパートローンを利用して物件を買った後は、事業性融資(プロパーローン)の活用を検討することになるが、アパートローンでキャッシュフローが出ない物件を買っていると、既存物件に対する銀行からの収益評価が低くなり、物件購入をストップせざるを得ない状況に陥る場合があるのだ。

収益性の低い物件を、ステータスや資産性を目的に都心の物件や新築マンションを買うような投資は、資産保全や節税のために資産家が行うためのものだ。

資産を「持たざる者」である我々は、多少リスクがあろうとも、立地に劣るが収益性が高いエリアの物件を積極的に狙う必要があると言える。

我々が買うべき「いい物件」の2つ目の条件は、売却するのに困らない物件であることだ。

キャッシュフローが出るという条件を満たしているにもかかわらず、売却するのが困難な物件と言うのは少なからず存在する。

一番多いのが割高な物件を購入してしまっているケースだ。

しかも、このような物件の購入者は、概して年収も高く、自己資金もある程度保有している人なのだ。

個人属性が良いので、割高な物件でも融資が降りてしまうわけだが、そもそも高い値段で買っているため、売ろうとしても購入時の金額では買い手を見つけることが出来ない。

購入すべき「いい物件」の共通的な条件は、キャッシュフローが出ることと、売却するのに困らないことだ。

どちらかというと売却時に困らないことの方が重要だ。

何故かと言うと、売却に困ると言うことは出口戦略が描けないということなので、その状態でキャッシュフローが回らなくなると、破たんする懸念さえ出て来るからだ。

売却時に困らないようにするためには、とにかく割安に物件を購入することを心がけることだ。

収益物件の価格は基本的には利回りで全て決まる。

そのエリアの相場が利回り9%であれば、10%以上の物件を買うようにするのだ。

市場の状況により利回りは数%程度であれば数年のスパンで上下する可能性はあるが、利回りが低い時期に割安に物件を買っていれば、市況が悪くなり利回りが上がっていても、購入時の価格だったら買い手がつく可能性が高い。

キャッシュフローが出るかどうか、銀行評価が高いかどうかも重要だが、相場より価格が安いことが「いい物件」の必須条件だと言える。

4.インターネットで物件を探すべき理由

インターネット上には不動産会社が売り物件を登録するサイトがいくつか存在する。

有名なのは、健美家、楽待、at home、Home’s、不動産連合隊、などだ。

これら以外にも、野村不動産アーバンネットが運営するノムコムや住友不動産販売が運営するステップなど、大手不動産会社が運営するサイトにも物件情報が多数掲載されている。

これらのインターネット上のサイトからは、手軽に収益物件の売り情報を得られる反面、誰でもアクセスできるのであまり良い物件情報がないとも言われている。

お宝物件はネットには載っていない非公開情報の中にしかないという話も聞いたことがあるかもしれない。

では、実態がどうなっているのかと言うと、どうしても売れない物件だけをしょうがなくインターネットに載せているという単純な構図ではないケースも多くあるのだ。

優良物件の情報がネットに掲載されることも少なからずあると言える。

そもそも、なぜインターネットに載せる物件と載せない物件があるのかについて説明しよう。

インターネットに載せるとそれだけ多くの人に見られる可能性が高くなるため、反響が大きくなる。

少しでも高く売りたいと考える売主にとってはうってつけのように思えるが、あえてインターネットに載せていない物件も多数あるのだ。

これらの物件は不動産会社から直接提案を受けないと情報を得ることが出来ない。

物件を売る役目を担う仲介会社からすると、インターネットに載せること自体はそれほど難しくないが、物件によってはその後かなりの数の問い合わせが来ることがある。

インターネット経由で初めてやり取りをすることになるので、本当に買う気があるのか、資金調達の目途がついているのかが良くわからない人達からも買付申込書が多数送られてくることが往々にして起きるのだ。

インターネットに載せたとたんに、業務がその物件に掛かりきりになってしまうこともあり、それを仲介会社によっては嫌がることがある。

仲介会社にとって最も避けたいのが、インターネット経由で資料を取り寄せ、物件の住所から登記簿を取得して売主に直接連絡をする不動産会社の存在だ。

いわゆる「飛ばし」と言われる行為で、これにより売主が仲介会社の変更をしてしまうと、もともといた仲介会社は売却に向けて色々働いたにも関わらず、手数料が一切入らなくなってしまう。

また、売主がインターネットに載せるのを嫌がるケースもある。

自分の所有している物件が売りに出ているのを不特定多数の人に見られてしまうのを嫌う人がいるからだ。

また、販売戦略としてあえてインターネットで調べても出てこない非公開情報にして、時間を掛けて売り抜くという選択をしている場合もある。

ただし、インターネットには良い物件情報が全くないかというとそんなことはない。

仲介会社が自社で買主を見つけられないという理由で、売却物件をインターネットに掲載するケースも多くある。

抱える顧客の多さは不動産会社によってまちまちだからだ。

多数の顧客を抱えている不動産会社がある一方、不動産の管理や賃貸のみをやっており、収益物件を欲しがる顧客が全くいない会社もある。

そのような会社が、知り合いや自社で管理している物件のおオーナーなどから売り物件を預かることは良くあるのだ。

そのような経験が少なく相場を把握していない不動産会社が、物件の売り出し価格を独自の判断で決め、安い価格でいきなりインターネットに掲載してしまうこともある。

インターネットで極端に割安な物件に掲載されると、場合によっては数十本以上も買付申し込みがその日のうちに不動産会社に入ることになる。

そういう物件は激戦となるので、先着順ではなく融資などの資金調達のめどがついた人から順に交渉権を得るというやり方を取る場合が多くなる。

金額によっては現金で買う人も出て来る上に不動産会社もインターネットを見ていることがあるので、そのような人達を出し抜いて契約までたどり着くのは難しいケースが多いのも事実だ。

では、インターネットで売りに出ている物件をどうやって買うべきなのかというと、インターネットで売りに出されている普通の値段の物件を、値引き交渉(指値)をして良い物件に仕立て上げる作戦が有効だ。

長い間売れ残っている物件は、売主も諦めていることもあるので、タイミングによっては大幅な指値が効く場合もあるだろう。

インターネットには優良物件が少ないのは事実だが、自分で不動産会社を回るよりも格段に多くの情報を得ることが出来る。

良い物件を買いたいのであれば、不動産会社にもアクセスすることと並行して、インターネットを活用しながら地道に物件を探す方法が良いだろう。

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5.収益物件の「利回り」とは何なのか?

不動産投資で使う「利回り」とは、次の式で表される物件の収益性を測る指標のことを意味する。


表面利回り=年間家賃収入÷物件価格×100


利回りは%で表記される。

年間家賃収入100万円で物件価格が1,200万円で売られているとすると、利回りは100 ÷ 1,200 = 8.33%になる。

この計算結果を「表面利回り」またはグロス利回りと呼ぶ。

表面利回りは物件の収益性を比較する時に利用され、物件同士の表面利回りを比べることにより割安か割高かが簡便にわかるようになる。

そのため、物件の概要資料の多くは価格とともに表面利回りが大きく書かれていることがほとんどだ。

高利回り物件はそれだけ収益性が高い可能性があり、好まれる傾向がある。

利回りには、「表面利回り」とは別に「実質利回り」またはネット利回りというものもあり、実質利回りは光熱費や管理費用などの出費を家賃収入から引いた「実質的な手残りとなる割合」を同じく%で表す。

実質利回り(ネット利回り)の式は次の通りとなる。


実質利回り=(年間収入-年間支出)÷物件価格×100


実質利回りの方が表面利回りよりも計算結果は緻密だが、年間支出額は物件が売りに出ている段階では判明していないことも多いので、計算の簡便さに欠ける。

単に「利回り」と書いてある場合は、年間家賃収入と物件価格のみで計算する「表面利回り」を意味していることがほとんどだ。

物件を買った場合に実際にいくらが手残りとなるお金として残るのかは、融資を何年で組むのか、金利水準はどの程度なのか、空室率をどの程度で設定するのか、などによって大きく変わってくる。

それゆえ、物件を検討比較する段階では、簡便的に計算が出来る表面利回りを使うことが多いのだ。

利回りは基本的に高ければ高いほどいいわけだが、利回りのみにこだわっていると落とし穴にはまる可能性がある。

利回りが15%あれば高利回り物件だと言えるが、空室が半分ありそれを埋めるのが難しい場合、利回り9%でも満室に出来る物件の方が、実際の収益性は高い場合がある。

空室を埋められるかどうかは、利回りの数値に表すことが出来ないので、それらのリスク要因を加味した上で、検討している物件の収益性の高低を判断する必要があるのだ。

全体的な傾向として、都市部の物件は利回りが低く、地方の物件は利回りが高いことが多くなっている。

築10年~築20年程度の中古物件の目安となる利回りは下記のとおりだ。

政令指定都市(札幌、名古屋、大阪、福岡等7%-9%都心ほど利回りは低くないが供給過剰な地域もある

エリア 利回り 特徴
都心(東京) 4%-7% 需要が安定しているが利回りは低い
地方(その他の地域) 9%以上 人口減や空室のリスクがあるが利回りは高い

都心の物件は、相続税対策で購入する資産家層や、資産保全のために購入する海外の投資家が購買層として存在しているため、収益を上げる目的ではなく物件を購入する人達が一定数存在している。

その結果、需要が安定しているというメリット面と、利回りが低く物件価格が高いというデメリット面のバランスが悪い物件も成約することが多々あり、都心部ではなかなか良い利回りで購入できる機会が限られている。

都心部だから安全、地方だから危ないという構図で考えるのは危険で、どのエリアにある物件でも相場より割安で購入することが肝要だと言える。

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6.不動産投資ではなぜキャッシュフローを重視する必要があるか

キャッシュフローとは、ビジネス用語で「現金の流入と流出」を意味する言葉だ。企業で利益が上がっていても、一時的に支出が多くなりキャッシュフローが赤字になると倒産する可能性も出て来るので、企業経営においては重視されることが多い指標だ。

不動産投資の中でも「キャッシュフロー」は同じく重要な指標として扱われるが、意味合いは少し異なる。

不動産投資では税引前の利益額のことをキャッシュフローと呼ぶからだ。

代表的なキャッシュフローの計算式は下記の通りだ。


キャッシュフロー = 満室時の家賃収入の85% - 経費20% - 銀行返済


キャッシュフローは物件ごとに計算する場合が多く、キャッシュフローが多く出る物件は利益となる手残りがより多い優良な物件だということになる。

なぜ税引後ではなく税引前の金額にしているかというと、税金の課税割合はその物件だけでなく他の物件で使った経費の額なども差引して決まるからだ。

他に事業をやっているのであれば、それらの収益の多寡によって不動産業の税額は変わってきてしまう。

キャッシュフローには市区町村に払う固定資産税を含めて計算する場合が多いが、税務署に払う所得税や法人税は含めないで計算することになる。

キャッシュフローの計算式内で、満室時家賃の85%を収入額としているのは、15%の空室率を見込んでいるからだ。

「経費」は家賃の20%と設定しているが、共用部の光熱費、清掃費、入退去時のリフォーム費、管理費、固定資産税・都市計画税など全ての出費項目を含む。

式内の「銀行返済」には、返済と利子の両方が含まれる。

このようにキャッシュフローを簡便的に計算する式を用いることにより、物件を購入する前でもある程度実態に即した収益性の計算が可能となる。

不動産投資では「キャッシュフローを重視するべきだ」ということが巷でよく言われているが、これには理由がある。

キャッシュフローの重要性が叫ばれるのは、収益を早く上げることが投資を短期間で加速させて増やすことに繋がるからだ。

なぜこのようなことが言えるのかを、例を挙げて説明しよう。

次のような一棟アパートを保有していたとする。


物件価格 5,000万円
頭金+諸経費 500万円
キャッシュフロー 200万円/年


「頭金+諸経費」が500万円なので、この物件を買うために自己資金を500万円使っていることになる。

わかりやすくするために税金が発生しないと仮定すると、毎年200万円キャッシュフローが発生するため、2.5年経つと初期費用分の500万円が回収できることになる。

その後に発生するキャッシュフローは全て利益となるため、再投資可能となる。

更に2.5年経って5年経てば500万円貯まる。

そうすると同じ5,000万円の物件をもう一つ追加で購入できることになる。

これが、同じく価格が5,000万円でもキャッシュフローが100万円しか出ない物件なら、初期投資の500万円を回収して更に500万円貯めるまでに10年掛かることになり、2棟目を買うまでに2倍の時間が掛かってしまうことになる。

キャッシュフロー=利益なので、「キャッシュフローを重視せよ」というのは「利益が多く残る物件を買いなさい」と言う意味とほぼ同じだ。

そう聞くと、当たり前のことを言うなと思うかもしれない。

でも実際はそう単純な話ではなく、キャッシュフローを重視するということは、他の収益指標を劣後して考える必要があるという意味を言外に含んでいる。

具体的に言うと、キャッシュフローを重視する投資を行う場合は、次に示すような物件は決して買ってはいけない。

  • ・土地値が高く資産性が高い物件
  • ・返済スピードが速く10年で返済が終わる物件
  • ・数年後に値上がり益が見込める物件
  • ・ステータス価値がある場所に建っている物件

正確に言うと、これらの条件はあればあったに越したことはない。

ただし、キャッシュフローが出ないという条件下においては、見送った方が良いということだ。

土地値が高い物件や、ステータスがある場所に建っている物件を購入することが悪い選択だと言っているわけではない。

キャッシュフローが出るという条件を最優先する必要があり、それを満たしていないのであれば、資産性が高く立地が良くても、購入してはいけないのだ。

特に投資を始めた初期段階で、キャッシュフローが出ない物件を購入して保有している現金の大半を突っ込んでしまうと、投資スピードが大幅に遅くなる。

物件を購入して、その物件で上がった利益を次の投資資金にするという良い循環に入るためには、キャッシュフローが出ることをまず最優先で考える必要があるのだ。

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7.不動産投資のリスクとはどのようなものがあるのか?

不動産投資を実践する上でのリスクは、様々なものがある。

家賃を大幅に下げないと入居者が決まらない、火事や地震による建物の倒壊、入居者の家賃滞納など、少し考えただけでも色々なものが思い浮かぶことだろう。

不動産投資では大きな金額を動かすことになるので、少しのほころびがだんだん大きくなり、それが破たんまで繋がる場合もある。

しかしながら、シンプルに考えると、不動産投資のリスクは家賃が減るか出費が増えるかのどちらかに対する懸念だ。

つまるところ、収支が立ち行かなくなることのリスクに集約されるのだ。

不動産投資で破たんのする懸念が発生するぐらいの大きなリスクは、下記の3つに大別される。

  1. ・入居需要減によるリスク(家賃減のリスク)
  2. ・災害等の外部要因によるリスク(出費増のリスク)
  3. ・金利上昇によるリスク(出費増のリスク)

一点目の「入居者需要減によるリスク」は、入居者需要が減って空室率が高くなったり、家賃を下げないと決まらなくなることによって、収入が大幅に減ってしまうことに対するリスクだ。

入居者減については、そのエリア全体の人口が減るという半ばしょうがない理由による場合もある。

しかし、「去年は満室だったのに今年は1室も埋まらない」ということは基本的には起こりえない。

何年にもわたり徐々に需要が数%ずつ減っていき、空室がかなり増えてしまったり、大多数の部屋で家賃が大幅に減っていたりといった状況になるのだ。

入居者減のリスクは予測が可能です。昨年の同時期と比べて埋まりにくい、周辺で家賃下落が激しいなどの状況に直面したら、売却をして手じまいにしてしまうか、リフォームや募集で工夫を凝らして耐えるかの選択になる。

中古の物件を買う場合は、家賃-銀行返済の割合(返済比率)が50%以下で、収支に余裕がある物件を購入することが最大のリスクヘッジになる。

二つ目の「災害等の外部要因によるリスク」も、不動産投資を始める上での懸念事項として考えている人が多いと思う。

具体的にどのようなものが想定されるかを考えてみると次のような種類の災害が挙げられる。

  • ・地震、津波、による建物の倒壊
  • ・火事による建物の焼失
  • ・その他、落雷、洪水、積雪などによる被害

これらは全て天災による被害だが、直撃した場合の被害は甚大になり、場合によっては1,000万円単位の出費になる場合もある。

結論から言うと、これらの災害を防ぐ手立てはあまりない。

地震や洪水であればそのような被害が過去起こっているかを役所に行けば調べられるので、不安があるのであればそもそも災害の懸念がある地域の物件は買わないというのも手だ。

災害自体を防ぐ手立てはないが、天災による被害の多くは、損害保険の掛け金を増やしてカバー範囲を広くすることで対処可能だ。

日本の損害保険会社は、約款に記載しある事項であれば基本的には出し渋ることはない。

もし保険金が出ないような事態になったら、日本損害保険協会の損保ADRセンターに申し立てをすることも出来る。

私も火事により1,000万円以上の損害を被ったことが過去あったが、保険金は問題なく支払われている。

損害保険を十分に活用すれば、天災による被害の心配はあまりする必要がないと言える。

これらの災害に加えて、水道配管の破裂、基礎の傾き、シロアリの発生などの心配をする人も居るが、これらは物件購入前に修繕履歴や現地確認によってある程度把握可能だ。

事前にしっかり確認していれば、それは既知の事実となり、リスクとはなり得ない。

三点目の金利上昇のリスクは、不動産投資の中では予見しにくい種類のリスクになる。

基本的な投資スタンスとして、金利上昇時でも回るぐらいの収益性が確保された物件を購入するべきだ。

固定金利にしておけばなお安心だが、そういう選択肢がないケースも多いと思う。

返済比率が55%以下で、貸出利率の倍の金利でも収支が回る物件を購入することで、ある程度のリスクヘッジは可能だ。

それでも心配であれば、金利上昇時に連動して上がるようなベア型投信やCDSが組み込まれた投信を購入しておくという手もある。

そもそも急激な金利上昇に強い懸念を持っている人は、不動産投資には取り組まない方が良いと言えるだろう。

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8.都心物件と地方物件は、どちらの方が収益をあげやすいか?

不動産投資を行う場合、都心部の一等地にある物件と人口数万人の地方にある物件では、収益性もリスクも大分異なるため、取り組み方も変わってくる。

ここで言っている「リスク」とは、危険性ではなく将来的な価格のブレ幅を指す。

物件を購入する際は、収益をあげやすいかどうかのリターン面は最も重視しないといけないが、同時に将来的に価格が下落するか上昇するかのリスク面の配慮も必要だ。

投資対象としての収益物件は、株・投資信託・為替などの金融商品とはかなり異なる部分が多いわけだが、同じ投資商品という観点からは、似ている部分もある。

すなわち、リターン(収益性)が高い投資対象は、リスク(価格のブレ幅)も大きいという投資理論の基本的な考え方は、株も不動産も同じなのだ。

日本の収益物件は海外不動産と違い家賃収入をあてにしたインカム投資となるので、利回りが高いか低いかの水準によって物件価格が決まる。

そして、利回りを決定づける家賃収入は、景気や需給に左右されず比較的安定して入ってくる。

株や投資信託のように数日などの短期間で物件価格が大きく上下することはない。

しかし、長期的な視点で考えると、これからも発展し続ける可能性が高い都心部の一部のエリアと、人口減による需要の低下が予測される地方の地域では、リスクの割合は大きく異なることになる。

当然ながら都心物件の家賃は維持される可能性が高く、地方物件の家賃は全体としてみると下がる可能性が高いのだ。

このように、リスクが低い都心物件は必然的に物件価格が高くなるのでリターンも低く、リスクが高い地方物件はリターンが高いという構図になる。

物件を購入した段階で収益性の高低はあるかもしれないが、長期的な視点で考えると都心物件も地方物件も収益性とリスクのバランスは変わらないはずなのだ。

しながら、プレイヤーとして不動産市場の投資に参加している私の実感は少し異なる。

必ずしも教科書通りには進まないことが、投資の現場では起きているのだ。

都心物件は相続、資産保全、税金対策など、資金力がある上に収益性を求めない購入希望者が多く存在するため、価格と比較してあまりにもリターンが低すぎるケースが多くある。

本来であれば市場原理が働くため、ローリターンの物件はローリスクであり、ミドルリターンの物件はミドルリスクとなるはずだ。

このようにリスクとリターンは均衡しているはずだが、都心物件は低リスク・超低リターンの物件や、中リスク・低リターンの物件が成約されている事例が散見さる。

このような市場では、低リスクにも関わらず中リターンである物件を探すのは、かなり至難の技だと言える。

しかしながら、地方ではこの構図が逆転する。

ミドルリスク・ミドルリターン、もしくは高リスク・高リターンの物件が中心になるが、中リスク・高リターンなどリターンがリスクの割合よりも高い物件が、地方の場合は普通の投資家が接触できる情報の中に存在するのだ。

何故地方にはこのようなリスクが低く収益性が高い物件がたまに出て来るのかと言うと、そこにはいくつかの理由がある。

事例として多いのが、値付けの相場が分かっていない不動産会社が仲介に入っていたり、地元の金融機関では融資が付かないのでその地域の投資家が買えないなどの理由だ。

このような事由により安値で放出される物件に、地方物件を丹念に探しているとたまに出くわす。

地方物件に取り組んだ方が、収益性が高くリスクを抑えた物件を購入できる可能性が高いというのが私の見解だが、ここで述べているのはあくまでもかなり真面目に不動産会社をまわって情報を集めたりした場合に限る。

地方の物件は、一見すると高利回りで収益性が高い物件に思えても、実際は満室運営がかなり難しいものも多くあるからだ。

良い物件とダメな物件がまさに紙一重で売りに出されているので、注意深く調査してから購入に踏み切る必要があると言える。

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9.地方物件の人口減のリスクにどのように対処するべきか

人口減は日本が抱える根源的な問題だ。

2005年より既に人口減に転じており、2019年には世帯数も減少に転じる見込みとなっている。

海外市場に活路を見い出せるメーカーなどの企業とは違い、不動産賃貸は基本的に国内の特定地域にしか需要が存在しないため、工夫なくこれまで通り運営を続けている不動産オーナーには厳しい時代が来ることが予想される。

この傾向が顕著なのが地方の物件だ。

働き手となる年少人口の減少と人口流出が同時に起きている地域が多く、多くの地方の市町村で今後も空室が増えることが見込まれる。

しかしながら、私はまだ物件を持っていない人に対して、あえて地方の物件を選択肢に入れることを勧めることが多くある。

その理由は、地方物件には人口減による空室リスクがあるが、それを補う以上のリターンが見込める物件があるからだ。

ここで私が言っている「地方」とは、人口数万人-10万人台程度の市区町村だ。

東京、大阪、京都、名古屋、福岡、札幌などの政令指定都市ではなく、県内の主要な中心部から、車で1時間程度掛かるところなどにある物件だ。

家賃は、単身用で3万円台、ファミリー用でも5万円台からあるような地域のことを指す。

なぜ私が地方物件を勧めるのかの前に、地方物件が直面している問題について説明しよう。

地方エリアへの投資は、都市部以上に慎重になる必要がある

需要が安定している良い物件と、競争が激しく全く需要が見込めないダメな物件の差がもの凄く激しいからだ。

地方では、満室の物件もある一方、空室率が3割以上になっている物件は数多く存在する。

空室率の増加に人口減の問題とともに拍車を欠けているのが、新築の建設ラッシュだ。

地方では都市部よりも土地が余っていることが多く、デベロッパーが地主を説得して、遊休地などに新築アパートを建てるケースも増えている。

新築にも関わらず築10年程度の中古物件の家賃とさほど変わらないことも多く、競争は更に激化する様相を呈している。

地方物件は、特定の工場や大学などの需要に頼っていることも多いのも問題だ。

近年はメーカーも生き残り競争が激しくなっており、効率化のために海外に生産地を移転したり、逆に国内戻したりといったことを柔軟に対応することが多く、国内の生産需要に合わせて、派遣社員を増減させたりして対応している。

工場が稼働している時は派遣会社経由の法人契約が多くある一方、生産が一段落すると派遣社員も離れることになるので、賃貸需要が激減する物件が多くあるのだ。

このような地域に物件を保有している場合、かなり安定性を欠いた賃貸経営を迫られることになるだろう。

ここまでリスクばかりを述べてきたが、リスクを上回るリターンを得られる可能性があるのが、地方で物件を買うことの魅力的な部分だ。

地方物件を私がお勧めする一番の理由は、かなり割安で高収益な物件がみつかる可能性があるからだ。

ただし注意してほしいのは、これは総論ではなく個別論だという点だ。

地方は都心部よりも間違いなく利回りは高いが、その分リスクもある。

地方に普通に出ている物件を購入しても相応のリスクがあるため、都心部の物件と比べて割安感があるわけではない

私が地方物件をおすすめする理由は、収益性が高くリスクが低い物件が、都心部では全くでないものの、地方ではごく稀に出るからだ。

東京23区内は利回り6%前後でも普通の水準なので、10%以上でまともに稼働する物件はそうそう出て来ない。

これが地方だと利回り9%ぐらいが普通の水準だとしても、10%(もしくはそれ以上)の物件がたまに出てくる。

このような、地方でも稀にしか出ないような物件を狙って買うのだ。

東京は売り物件の数も多いが買い物件の需要はそれ以上に多く、相続税対策や外国からの購入者など、収益性をさほど重視しないプレイヤーも多く存在する。

このように競争が激しい状況下では、割安に物件を買うのは難しいことが多い。

例えば、東京の中でも渋谷区、港区、世田谷区などの城南エリアではなく、北区、足立区、江戸川区などを狙うと良いだろう。

もしくは神奈川、千葉、埼玉まで範囲に入れてもいいと思う。

私は県全体で空室率が30%を超える山梨県で複数物件を買っているが、どれも年間稼働率は98%以上だ。表面利回りは20%を超えている。

周りは空室だらけなのにも関わらず、高収益な状態を保った運営が出来ているのだ。

具体的にどのように運営するのかは後述するが、地方でも需要が確実にある物件を保有すれば、満室の状態を達成出来る可能性は十分あるのだ。

都市部で物件を買いたいなら、中古と同じぐらい利回りが取れる新築の物件を狙うのがいいだろう。

都市部の新築であれば、建設に掛かる材料費や建設費は地方と変わらず、面積当たりの賃料が高く設定できるからだ。

安定的に運用できるという面からも、初心者はまず都市部の新築を運用してから経験を積み、その後地方の中古を買うというのは良い進め方だと言える。

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10.物件の概要資料とレントロールを見るときに気を付けるべき点とは

物件の概要資料を見ると、所在地、価格、利回り、築年、構造、面積、都市計画、用途地域、容積率、建ぺい率、道路付け、などの情報が掲載されている。

概要資料の中でまず見るべき項目は、所在地、価格、利回り、築年、構造だ。

物件の資料を数百以上の見る経験を積むと、この5点の内容を見た段階でどの位の収益性の物件なのかがわかるようになる。

物件情報の8割は、この5つの項目に集約されるからだ。

検討に値すると判断した場合は、資料を更に読み進めることになるが、注意すべき点はどちらかというとネガティブな内容になる。

この5項目の内容が、額面通りなのかの検証をする作業になるからだ。

例を挙げると、次のような物件があったとしよう。

価格5,000万円

項目 内容
所在地 神奈川県
満室時家賃 600万円
利回り 12%
築年 築20年
構造 RC造陸屋根4階建
戸数 1K×10戸
面積 土地150㎡ 延床250㎡
都市計画 市街化区域
用途地域 近隣商業地域
容積率・建ぺい率 80%・200%
道路付け 北側公道4

再度になるが、まず見るべきなのは、所在地、価格、利回り、築年、構造だ。

首都圏で中古のRC物件を探しているのであれば、利回りが12%あるので金利を2%台で引ければキャッシュフローは出る。

このまま検討を進めるという判断をするのであれば、次にやるべきなのは、収入額と支出額が適正かどうかの確認だ。

まず収入額からだが、家賃収入に光熱費、水道代などが含まれていないかを確認しよう。これらはレントロールを見ればわかる。

水道・光熱費は入居者が直接水道局・電力会社・ガス会社に払うことが多いが、一部の物件では大家が一括して徴収して払っていることがある。

これらの項目が収入に含まれていると、普通の物件よりもその分だけ支出額が増えることになるので、利回りが低下する。

入居者の光熱費を負担することにより月額5万円分の余分な支出があるとすると、12%だった利回りは10.8%まで低下する。

次に、支出額が適正かどうかの確認を行う。

通常の物件の場合、支出項目は次のようなものがある。

  • ・廊下など共用部分の光熱費
  • ・清掃費用
  • ・エレベーターメンテナンス費(エレベーター付きの物件の場合のみ)
  • ・管理会社費用
  • ・固定資産税・都市計画税
  • ・募集費用(広告費、仲介手数料)
  • ・リフォーム費用

これらの項目は物件によって掛かる金額は異なるが、私は物件資料を見た段階では、満室時家賃の20%を返済以外の支出項目の総額として仮置きして計算している。

気を付けるべきなのは、これらの項目以外で多額の出費を伴う支出項目がある場合だ。

購入予定物件に次のような項目がないか注意しよう。

  • ・外部に駐車場を借りている(月数万円~)
  • ・大家負担でケーブルテレビに入っている(月数千円~数万円)
  • ・大家負担で無料インターネットを提供している(月2-3万円)
  • ・受水槽(貯水槽)があり清掃費用がかかる(年間7-10万円)

この中で特に影響が大きいのは、外部駐車場だ。

十分な数の駐車場が物件の敷地内にない場合、近くの土地をオーナーが一括で借り上げて入居者に貸している場合がある。

この費用は駐車場台数によって変わる。数十台借りている場合、場合によっては月10万円以上かかる場合もあるので、収支計算に大きな影響を及ぼすことになる。

ケーブルテレビはエリアによっては入らないとテレビが見えない場合もあるので、解約が出来ないことがある。

無料インターネットも同様で、一度設備として入れてしまったものをなくすと、入居者の満足度はかなり落ちるだろう。

ここら辺の項目は、概要資料やレントロールには載っていないこともあるので、買付申込書を入れる前に支出の一覧は必ず不動産会社経由でもらって確認しよう。

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11.人気物件の交渉権を得るにはどうすれば良いか

相場よりも割安で手ごろな価格帯の物件が売りに出ると、売主の元には多数の買付申込が入ることがある。

特にインターネットに割安な価格で物件を掲載すると、1日で何十件も買付申込が入ることもあるだろう。

このように複数の買付申込が入った場合、売主がどのようにして交渉する相手を決めるかと言うと、近年の傾向として購入希望者の融資が降りた順に契約交渉をするスタンスである場合が多くなっている。

交渉する際の優先順位としては、融資を利用することを条件としない「融資特約なし」が最優先の買付申し込みとして扱われ、融資が降りなければ白紙撤回できる「融資特約有り」の買付申込書は劣後して対応される。

不動産は物件の絶対価格が高いため、日本の不動産の場合、法人・個人問わずほとんどの人が融資を用いて購入する。

一部、現金で購入する(もしくは融資特約無で購入する)資産家や転売会社も存在するが、現金買いで満額で買付申込書を出してきた時点で出し抜くのは困難だろう。

融資特約有りで買付申込書を出している場合も、融資の審査スピードが速い金融機関(スルガ銀行やノンバンク)を使う人達が有利となるため、これらの金融機関を使わず、地銀や信金で融資を受けようとしている場合は、融資審査が降りる前に物件が売れてしまうことが多くある。

融資が降りた順に交渉をするパターンの物件について説明をしたが、物件によっては先着順で交渉を行う売主も少ないながら存在する。

このような物件をみつけたら、融資が降りるのを待って交渉するのではなく、融資特約の条項を入れた契約書を早期に締結することに注力しよう。

契約書に融資特約期間として1ケ月程度の期間を明記し、その間に融資付けを行うのだ。

人気物件の交渉権を優先的得るための画期的な方法というものは存在しない。

元付の仲介会社と仲良くなり交渉権を得る方法もあるが、それはあくまでも自分が確実に買えるという前提がある場合だ。

いくら売主側の仲介会社と仲良くなったところで、融資が降りる可能性が低いと判断されれば、物件は他の人に回してしまうことになるだろう。

融資が降りた順の物件に買付を通すには、出来るだけ早く融資審査の結果が出るように常日頃から金融機関の開拓をして備えておくことが一番有効な対策になる。

先着順の物件の場合は、物件の交渉権確保を急ぐと同時に、可能であれば融資を整えている最中に契約書も締結出来ると良いだろう。

良い物件を必ず確保出来る方法などは存在しないので、とにかく沢山の買付申込を行って数を打つと同時に、少しでも確率を上げられるよう融資審査の次善準備を怠らないようにしておくのが人気物件を買うための一番有効な方法となる。

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12.融資を受けて物件を買うべき理由とは

収益物件を購入する際に、例え現金があったとしても融資を受けて買うことを私はお勧めしている。

融資の割合も5割や6割ではなく、少なくとも9割以上は金融機関から借り入れを行って物件を買った方が良いだろう。

その理由は、融資を使うと投資する際の資金効率が格段に良くなり、ドンドン収益を上げることが可能になるからだ。

不動産を単なる投資対象として考えた時に、株、債券、為替、金などと比べて優位な点があるわけではない。

80年代後半のバブル期には「土地神話」があり、「国土の狭い日本は利用できる土地が限られるので、土地の価格は永遠に上がり続ける」というような説がまことしやかに語られていたが、それが間違いであったことはその後長らく続いた景気後退期における不動産市場の顛末を見れば明らかだ。

では、なぜ不動産が投資対象として優れているかと言うと、2つ理由がある。

1つ目の理由は、「家賃は価格硬直性があり、価格が緩やかにしか上下しない性質を持っている」ことだ。

2つ目の理由は、「融資が使うことにより、少ない自己資金で多くの資金を動かすことが出来る」ことだ。

これらの2つの点は互いにデメリットを補完し合っている点に注目して欲しい。

融資を引くことにより自己資金400万円で5,000万円の物件を買ったとする。

この物件は10室あり家賃は5万円/月だとする。

この計算だと年間600万円の家賃収入を得られる計算になるが、仮に家賃が景気により上下すると仮定し、5万円の家賃が4万円になってしまったらどうなるだろうか?

そうなると、年間家賃収入は480万円まで減ってしまうので、銀行への返済や物件の管理費用などを入れると赤字になってしまう可能性がある。

しかし、実際はこのように景気変動による家賃の下落は少ないのが実状だ。

融資の割合を高くしても安心して物件の購入が出来るのは、景気変動が起きても入居中の部屋の家賃は変わらないという前提があるからなのだ。

日本では家賃20万円以上の高級物件でない限り、景気変動により家賃が上下することはあまりない。

一度でも賃貸のアパートやマンションに住んだ経験があればわかると思うが、2年ごとの更新時でも家賃が上がったりすることはないし、それは慣習的に認められない風土が出来上がっている。

この前提がない限り、前述した例のように400万円しか自己資金がないにもかかわらず5,000万円の物件を買うなどの行為は、怖くて出来ないというのは普通の感覚だろう。

次に、なぜ融資割合を高くした方が良いのかについて説明しよう。

先の物件の場合、5,000万円の物件を買うのに自己資金は400万円しかなかった。

物件を購入するのには仲介手数料などの諸経費が物件価格の7%程度必要なので、諸経費額は350万円になる

物件価格と同等程度の融資を引く「フルローン」を金融機関から引き出さないと、物件は買えない。

このように頭金を入れなかったケースと、自己資金が2,000万円あり、頭金を1,000万円入れた例と比べてみたのが次の2つの表だ。

項目 物件の内容
物件価格 5,000万円
家賃収入 600万円
利回り 12%
満室時家賃 600万円
利回り 12%
融資期間 20年
金利 2.5%
支払い 元利均等
諸経費 350万円

「頭金なし」と「頭金1,000万円」の比較シミュレーション

項目 頭金なし 頭金1,000万円
自己資金(頭金+諸経費) 350万円 1350万円
年間返済金額 318万円 254万円
固都税・管理費(20%) 120万円 120万円
空室控除(15%) 60万円 60万円
融資期間 20年 20年
税引前キャッシュフロー 102万円 166万円
年間返済金額 318万円 254万円
自己資金の回収期間 3年6か月 8年2か月

固都税・管理費は家賃の20%、空室控除は家賃の15%で計算している。

注目すべきなのは、自己資金の回収期間だ。

頭金を1,000万円入れた場合、返済金額は少なくなっているが、回収期間は頭金なしの場合と比べて2倍以上の期間が掛かっている。

この例のように頭金を1,000万円も入れてしまうと、同じように次の物件を買おうとするのに8年以上も待たなくてはならなくなる。

これでも自己資金に対する利回りは12%以上になるので、一般的な投資商品としては決して悪い水準ではない。

しかし頭金ゼロの場合は、自己資金に対する投資利回りは30%近くにもなる。

このやり方であれば、数年ごとに自己資金が回収できるので、ドンドン物件を増やすことが出来るようになる。

そうなると、頭金を1,000万円入れた場合と比べて、投資効率の差は更に広がることになる。

格差が広がっていると言われている昨今でも、高額な収益物件を現金で購入する人は少数にとどまる。

その代り、不動産に積極的に融資する金融機関は多くあり、可能性は低いが、フルローンも出ている。

資産を持たない人でも融資を受けて優良物件を購入できる機会は十分あるので、収益物件を買うには適した投資環境だと言える。

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13.メガバンク・地銀・信金の融資基準

融資を受けるためには、各金融機関の特徴を知り、それに合った物件を持ち込む必要がある。

この項では、収益物件の融資に対する、メガバンク、地銀、信金、ノンバンクの特徴について説明するが、この内容はあくまでも一般論の範疇に留まる。

融資に対する金融機関の姿勢は個人に対する評価やタイミングによって大きく変わってくるので、必ず例外がある。

同じ金融機関でも、支店や稟議を書く担当者によっても結果が大きく変わることは良く起きる。

しかしながら、金融機関ごとの基本的な融資姿勢を抑えておかないと、やみくもに打診して失敗を重ねることになるので、知っておいて損はないだろう。


メガバンク

メガバンクは金融機関の中でも一番融資基準が厳しく、審査にも時間が掛かる。

融資規模が10億円を超える案件は行内に多くあり、他の金融機関と違い数億円規模の不動産融資について、融資規模が大きいと見なされることは皆無だ。

顧客には富裕層が多くいるため、不動産融資についても個人属性のハードルが高く、年収1000万円以上・自己資金数千万円で融資の土台に上がれる。

金利は地銀や信金と比べても低く、支店が多いことから融資エリアが非常に広いことも特長的な点だ。

フルローンで融資を受けている人もいるが、基本的には物件価格の7-8割程度の融資割合となる場合が多い。


地銀

地銀は、全国地方銀行協会に加入している第一銀行と、第二地方銀行協会に加入している第二地銀を合わせて「地銀」と呼称されている。

地銀は融資等による企業の資金調達を通じてその地域の経済発展に寄与することを目的としているため、融資を受けるには物件所在地の市町村に支店があることが望ましい。

スルガ銀行など県外の人にも融資を出す地銀も一部存在するが、基本的には申し込みを行った人の居住地にも支店があることが求められる。

例えば、東京に在住している人が北陸の物件を購入しようとする場合、北陸に本拠地があり、東京にも支店がある銀行だと、検討してくれる確率は高くなる。

逆に、北陸にしか支店がなく、申込者も過去北陸に住んでいた、配偶者や親戚が北陸出身者である、などの地縁が全くない場合は、検討の土台に上げることが難しいケースが多くなる。

金利はメガバンクと信金の間ぐらいの水準であることが多く、アパート経営向けのパッケージローンを作っている地銀もいくつかある。

収益不動産への融資に積極的なのは、横浜銀行、千葉銀行、静岡銀行、スルガ銀行、関西アーバン銀行、福岡銀行などだ。


信金

信金は信用金庫法に基づいて設立されており、地域で集めたお金をその地域で貸し出すことによりその地域の発展に生かすことを目的としている。

銀行と違い営利目的として設立されてなく、信金法によって該当エリアの居住者しか会員になることは出来ない。

また、加入時点で従業員300人以下、資本金9億円以下などの基準がある。

このようにメガバンクや地銀などと比べても信金は特異な存在であり、不動産投資において信金との付き合い方についても一定の型のようなものはない。

パッケージングされたアパート経営向けのローン商品もなく、融資審査ではすべて事業性融資として扱われる。

特徴的な点として、支店長の権限が比較的強く、かなり柔軟な対応をしてくれる場合がある点が挙げられる。

多くの地銀が融資金額に一定の上限を設ける中、信金と良好な関係を築き、10億円以上の融資を受けている人も存在する。

経営者の人物面や信用面を重視する傾向が強いこともあり、信金を開拓する際は出来るだけ紹介で行った方が良いだろう。

金利水準は比較的高く、耐用年数も厳しく見られることがあるが、付き合いが深まると柔軟に対応してくれるケースも存在する。


ノンバンク

ノンバンクとは貸金業法に基づいて設立されている会社で、銀行が貸付するための原資を個人・法人が預けている預金で調達しているに対し、ノンバンクは銀行からの借入や他のノンバンクからの融資により貸し出すための資金を調達している。

区分のワンルームなど2,000万円前後までの融資は信販系のジャックスやアプラスを使う人が多く、それ以上の融資は、三井住友L&Fやセゾンファンデックスが使える。

融資審査は比較的早いが、金利は4%台-5%台など、高めであることが多い。

不動産に対する融資姿勢はいつでも常に積極的で、銀行や信金と違い、融資期間内に繰り上げ返済をすることについて後ろ向きな姿勢を見せることもない。

年収が低く自己資金が少ない人にも貸し出しをしているが、ノンバンクから借り入れをしていることを他行は良く思わないことがあるので、メガバンクや地銀から融資を受けられる人は、ノンバンクは劣後して検討する方が良いだろう。

日本政策金融公庫、商工中金

日本政策金融公庫と商工中金は政府が出資している政府系金融機関で、中小企業の資金調達の円滑化を目的としている。

不動産にも積極的に融資をしているが、日本政策金融公庫の場合、4800万円(各種制度を併用すると7200万円)が一つのハードルになる。

物件評価も独自の計算式を使うため、築古の木造にも融資を行うが、最大15年の融資になる場合が多く、高利回り物件を持ち込まないとキャッシュフローは出ない。

商工中金は耐用年数を厳しく見るため、築浅物件に向いている。

どちらも全国に支店を展開していることが特徴で、融資エリアも広く対応している。

年収600万円前後未満の人は、日本政策金融公庫をメインの融資先に据えて物件探しをするのがいいだろう。

14.満室で運営するための取り組み

収益物件を購入する場合、満室で運営できるかどうかは最も重視しなくてはならない。

そのための方法は色々なやり方があり、独自の手法を生み出している人も中にはいる。

ただし、前提として知っておいて欲しいのは、満室に出来るだけの潜在能力がない物件はどんな取り組みをしたところで挽回が難しいという現実があるという事実だ。

不動産投資は物件を買う前に成功するかどうかが8割方決まっている。

残り2割をどれだけ工夫して頑張ったからと言って、需要がない物件が常に満室になるような逆転劇を起こすのは困難だ。

中古物件の賃貸需要は年々厳しくなってきている。国交省の調べによると、2000年代に入り持ち家は平均で年間60万戸以上、借家は40万戸以上が毎年供給されている。

このような状況下では、これまで満室だった物件も何も策を講じなければだんだん空室が増える可能性が大いにある。

満室運営に向けて行うべき項目を次のようにレベル1からレベル3に分類した。

レベル1-物件購入後に必ずやるべきこと-

  • ・賃貸に強い管理会社を選ぶ
  • ・周辺相場以下の家賃・敷礼・広告費にする
  • ・室内の原状回復とクリーニング
  • ・共用部の清掃
  • ・マイソクの作成
  • ・キーボックスの設置
  • ・問い合わせ件数と内見数の定期確認

レベル2-満室運営のために行うべきこと-

  • ・ライバル物件の詳細な調査
  • ・検索サイトの掲載
  • ・不動産会社への賃貸付け依頼回り
  • ・キックバックの設定
  • ・照明・カラードアホンなど必須設備の設置

レベル3-空室利率の高い地域で取り組むべきこと-

  • ・室内のカラーコーディネート
  • ・家具家電設備の追加
  • ・キッチン・バス・トイレの簡易リフォーム
  • ・モデルルームの設置
  • ・ホームページの設置

私は物件運営では費用を掛けずに対策を講じることをお勧めしている。

外壁の塗装やキッチン・浴室の全交換などの対応を載せていないのは、これらをやれば容易に空室を埋めることは可能だが、多額の出費を伴うので本末転倒になってしまうからだ。

レベル1は必ずやるべき項目だ。

当たり前のことが多いと思われるかもしれないが、過去に私が相談を受けて来た空室物件を抱える不動産オーナーは、レベル1の項目が徹底できていないことがほとんどだ。

それは同じ地域の他の物件も同じなので、需要が安定している地域であればレベル1を実施するたけで満室にすることが可能なことも多くある。

レベル2はレベル1をやっても埋まらなかった場合に対応する項目だ。

ライバル物件の詳細な調査や、不動産会社に賃貸付けを依頼して回るなどの地道な活動も行うことになる。

物件の供給数が多すぎて強い差別化を行わないと決まらないエリアの場合はレベル3の対応で差別化を行おう。

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15.物件を購入後必ずやるべきこと(レベル1の対応)

募集をする上で最低限やるべき対応がレベル1になる。

空室が多い売り物件の多くがこのレベルまでも対応できていないことがほとんどだ。


賃貸に強い管理会社を選ぶ

物件運営で最も重要なのは賃貸付けだ。

その地域で最も営業力の強い管理会社を選ぼう。


周辺相場以下の家賃・敷礼・広告費にする

周辺相場を調べ、それを基準に保有物件の家賃を設定する。

供給が多く賃貸需要が均衡していない地域の場合は、家賃水準も相場よりも下げた方が良いだろう。

これは購入する前の段階でそのような想定を作っておく必要がある。

敷金・礼金・広告費も同じだ。

地方だと敷金・礼金は取れない地域が多いので、周辺の物件に合わせて決める必要がある。


室内の原状回復とクリーニング

室内の原状回復とクリーニングは必ず対応する必要がある。

投資家タイプには少ないが、入居が決まってから清掃を行えばいいと考える大家も巷には多くいる。

しかし汚い部屋を見て住みたいと思う人はあまりいない。

クリーニング済でも数か月経つとほこりや目立ったり下水の匂いがする場合も多いので、マメにチェックするようにしよう。


共用部の清掃

廊下や敷地内にチラシが散乱していたり粗大ゴミがあると、物件が荒れた雰囲気になる。

購入時に全て綺麗にするようにしよう。


マイソクの作成

マイソクとは入居者募集のためのチラシのことだ。不動産会社に広く募集をかける場合は、より物件のアピールポイントが明確になったマイソクを作る必要がある。

管理会社が作ることが多いが、内容をチェックして必要に応じて修正しよう。


キーボックスの設置

キーボックスとは、空室の鍵を入れておくダイヤル式の格納庫だ。

ドアノブなどに掛けておくことが多い。

これがないと賃貸付けを行う不動産会社は毎回鍵を借りに管理会社まで行く必要があり、敬遠されてしまう可能性がある。


問い合わせ件数と内見数の定期確認

空室が定常化している場合、オーナーに「絶対に満室にする」という決意が足りないことが原因になっている。

空室が発生していることを大きな機会損失だと捉え、管理会社に頻繁に問い合わせをする必要がある。

そのときに聞くべき内容が、問い合わせ件数と内見数だ。


問い合わせ件数が多く、内見数も十分なのにも関わらず成約しないのは、入居者の期待と実際の物件にギャップがあるからだ。

厳密に言うと内見数は営業マンの案内の方法により増減するので、必ずしも物件に興味ある人ばかりが内見しているとは限らない。

基本的には管理会社と相談してこのギャップを埋める算段を立てない限り、問い合わせ数・内見数だけが多い物件になってしまう。

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16.満室を目指すために行うべきこと(レベル2の対応)

ライバル物件の詳細な調査

同じエリア・家賃帯で成約しているライバル物件が、どのような募集内容なのかを確認しよう。

例えばファミリー物件を保有しているのであれば、入居希望者の候補となるであろう2LDK、3LDKの物件を全て挙げて内見をさせてもらう必要がある。

入居者目線で確認すると自分の物件で足りないところがわかることが多い。


検索サイトの掲載

募集を依頼すれば最低1つの検索サイトには掲載されていると思うが、主要なサイト(SUUMO、HOME’S、at home)全てに登録されているかを確認しよう。

掲載にはお金が掛かるし、その不動産会社では契約していないサイトがあるかもしれない。

その場合は、管理物件を持たない賃貸専門でやっている不動産会社に掲載を依頼するなどの方法を取ろう。

多くのサイトが、注目物件として取り扱う設定が出来るようになっているので、管理会社に依頼してこれらの設定をしてもらうことを依頼しよう。


不動産会社への賃貸付け回り

管理会社以外の不動産会社にオーナーが直接賃貸付けを依頼することが募集に効果的な場合がある。

物件の特徴や値引き可能額などを直接伝えることが出来れば、不動産会社も募集がしやすくなるからだ。

管理会社と相談して、これらの取り組みをオーナーがやるべきかどうかは事前に確認しよう。


キックバックの設定

キックバックとは、成約時に営業マンに直接現金や商品券などを渡すことだ。

金額は数万円ぐらいが一般的だ。

不動産会社の売上にならないため禁止している会社もあるが、このような慣習がない地域では大きな威力を発揮することもある。

どうやって渡すかは直接営業マンに確認しよう。


照明・カラードアホンなど必須設備の設置

照明、カラードアホン、ウォッシュレット、ガスコンロ、独立洗面台などは、賃貸マンションでも付いていて当たり前の設備だ。

これらの設備は、数万円程度の安価な金額しかかからないので、費用対効果が非常に高いことが特徴だ。

しかし実際に周辺の物件を見てみると、全ての設備がついている物件は非常に少ない場合が多々ある。

照明とガスコンロはついているがウォッシュレットがついていなかったりする。そのような場合は、これらの必須設備を追加するだけで十分な差別化を図ることが出来る。

17.空室率の高い地域で取り組むべきこと(レベル3の対応)

地域全体の空室率が3割を超えるなど空室の割合高い地域は、入居者の需要よりも物件の供給量が極端に多くなっていることが多く、入居者に選ばれるためには差別化対策を徹底しないといけない。

しかしながら前提事項として書いた通り、お金を沢山かけて差別化するのは本末転倒だ。

レベル1・レベル2までの対策は全て実施したうえで、さらにその上で出来るだけ費用対効果が高い取り組みを実施することにより、空室率が高い地域でも満室経営を行うことは現実的に実現可能となる。


室内のカラーコーディネート

室内にアクセントクロスを付けたり、フローリングの配色を合わせてオシャレな空間を演出する対応だ。

センスが問われることになるが、最初から完璧な配色を作り上げることは難しいので、管理会社やリフォーム会社と相談しながら対応しよう。


家具家電設備の追加

家具家電付の賃貸住宅も増えたが、まだまだ選択肢が多いわけではない。

家具家電がついていると特に学生や一人暮らしを始めたばかりの社会人などの入居が見込める。

設備は、テレビ、コーヒーテーブル、簡易ソファ、ベッドぐらいで問題ない。

これらの設備は中古でも全く支障がないので、ネットオークションなどを利用して安く手に入れよう。


キッチン・バス・トイレの簡易リフォーム

水回りの設備を全面刷新すると1室あたり100万円を超えるお金がすぐ飛んでしまう。

出来るだけ費用対効果の高い取り組みをすることが重要となるので、現状の設備を活かしつつ、キッチンにダイノックシートを貼ったり、バス(浴室)に鏡や木製のダイノックシートを貼ることにより、マイナス点を補うことを行おう。


モデルルームの設置

机やイスなどを入れてモデルルーム化し、説明用の自作POPなどを置くことが入居者募集に効果的な場合がある。

特にファミリータイプを希望する家族の場合、モデルルームを見ることにより生活空間のイメージが出来るようになるので、内見の際に好印象を残すことが出来る。

モデルルームで使用した設備などは、希望者がいたらあげてしまおう。


ホームページの設置

保有物件の専用ホームページを作ることが募集に効果的な場合がある。

「地域名+マンション」などで検索に引っかかるようにしておくと、その地域で探している人が直接検索してホームページに訪れる場合があるからだ。

ホームページには、間取り、物件の写真、家賃、アピールポイントなどを記載すると良いだろう。

最近はデザイン性の高いホームページをウェブ上で簡単に作れるサービスもあるので、入居者募集対策を完璧にやりたい場合はチャレンジしてみても良いと思う。


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この記事の執筆者:不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明

不動産投資家。大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。本業とは別に愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、合計120室超を保有。投資総額は6億円超。地方高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。
運営サイト「不動産投資ユニバーシティ」の全ての記事を執筆・監修しており、自身が実践して得た不動産投資に関する300以上のノウハウを無料で公開している。著書『会社に勤めながら資産をつくる「不動産投資」入門』(日本実業出版社)は3回増刷を重ねており、アマゾンカテゴリーランキング1位を獲得した。

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この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
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