退去時の金銭トラブルはこれで防げる!退去費用の目安と交渉方法

2020年12月16日10,393

賃貸住宅の退去時に一番起こりやすいトラブルは、大家と借主間の「金銭トラブル」である。なかでも、敷金にまつわるトラブルがあとをたたない。

高額なクリーニング費用の請求により、入居時に預けていた敷金が返ってこなかったり、敷金の金額を超える請求により追加費用を支払ってほしいとオーナーに言われたりする。オーナーからクリーニング費用の請求が来たら、何を基準に請求金額が妥当なのか判断すればいいのだろうか?

この記事では、退去時に起こりやすい金銭トラブルの事例とクリーニング費用の支払い基準、退去費用をできるだけおさえる方法を紹介していく。ぜひ参考にしてほしい。

退去時に起こりやすい3つの金銭トラブル

賃貸物件を退去する時は、なるべくトラブルなく引越ししたいものだ。しかし、突然オーナーから思いもよらない高額な請求をされたり、入居の際に預けていた敷金の返還が無かったり、想定外のトラブルが発生してしまうことも多い。ここでは、退去時のトラブルで起こりやすい事例を3つ紹介していく。

退去時のトラブル1.高額なクリーニング費用の請求

退去時のトラブルで圧倒的に多いのは「敷金が返還されない」という問題だ。国民生活センターの発表によると、毎年1万件以上の敷金・原状回復費用のトラブルの相談が寄せられている。(国民生活センター「PIO-NETに寄せられた相談件数の推移」)

敷金は本来、家賃の滞納や、退去時に修繕や清掃が必要になった時のために「預けている」お金であり、使う必要がなければ借主に返還される。しかし、家賃の滞納や目立った汚れもないのに返還されない、それどころか追加のクリーニング費用まで請求されたというトラブルが相次いでいるのだ。

賃貸契約では、退去時に借主は部屋を借りる前の状態にする「原状回復」を行うことが義務づけられている。原状回復に必要な費用は、年月が経つにつれて劣化した場合であればオーナーの負担になるが、タバコで壁紙が変色しているなど借主の過失の場合は敷金から引かれることになる。しかし、誰がどこまで支払うかの線引きはあるものの、過失か劣化かどうかの判断が難しいため、トラブルが起こりやすいのが現状だ。

退去時のトラブル2.ウソの理由でクリーニング費用を請求された

次に紹介する退去時トラブルの事例は、ありもしない理由をこじつけてクリーニング費用を借主に払わせようとするオーナーの例だ。

退去時に原状回復費用の請求書が来たので内容を確認すると、総額19万8千円。壁紙の張替えだけで6万4千円も取られていた。タバコを吸わない借主だったにも関わらず「タバコで壁紙が汚れている。全面張替えをしたので費用は借主負担」など、壁紙の張替え費用を請求したいために言いがかりをつけるオーナーも一部だが存在する。

こういった場合は、国民生活センターに相談すれば、費用の負担がゼロになるケースが多いため、覚えておくといいだろう。

退去時のトラブル3.立ち合いの際に言われていない部分まで請求された

最後に紹介する事例は、退去の立ち合い確認の際に何も言われなかった部分まで、あとから請求された事例だ。

退去時、オーナーではなく管理会社の担当者が立ち合い、その時はクリーニング費用として5万5千円になると言われた。しかし、2週間後にオーナーから「管理会社と連絡が取れないから別の業者に依頼し、16万円の請求となる」と言われたのだ。この場合、契約時の特約などがない限りは、国土交通省で定められた原状回復のガイドラインに沿って、オーナーが支払うか借主が支払うか相談になる。

原状回復のガイドラインについては、つぎの章でくわしく見ていく。

退去時の費用はどこまで支払うべきなのか?

退去時トラブルを防ぐために、どこまでを誰が負担するのかを把握しておくことは非常に重要である。前の章で少し触れたが、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドラインで明確に線引きされている。

 

■原状回復における費用負担の線引き例

 

オーナー負担

借主負担

風呂

壊れてはいないが次の入居者のために交換

空焚きして壊れてしまった、普段の清掃を怠りカビで汚れている

キッチン

冷蔵庫背面の黒ずみ

通常の使用を超える汚れや異臭

長年家具を設置したことによるへこみ、設置跡

シミ・カビ、故意の傷

壁紙

日照による変色

画鋲やピンの穴

煙草のヤニ汚れ

不注意による破れ

ペット飼育による傷・汚れ

釘穴・ネジ穴

鍵の交換

次の入居者のための交換

紛失・損壊した場合

 

たとえば、退去の際に風呂釜を交換した費用は、風呂釜を交換するべき理由によって支払い主が変わる。特に壊れておらず、正常に使える状態だが次の入居者のために新しくしたい、という理由であればオーナーが負担する。しかし、借主の過失で設備を壊した場合の設備交換であれば、借主が費用を負担しなくてはならない。

キッチンや床、壁紙なども同様に、長年住み続けたことによる自然な汚れはオーナーの負担、借主の過失で生じた汚れや傷、故障は借主負担となる。

くわしくは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」や、国民生活センターの「賃貸住宅の退去時に伴う原状回復に関するトラブル」、東京都住宅政策本部の「賃貸トラブル防止ガイドライン」を確認するといいだろう。

経年劣化・通常摩耗・耐用年数の考え方

賃貸物件での経年劣化とは、太陽光によって色あせたり、雨風や湿気などの影響で時間とともに品質が低下したりすることだ。また、部屋を借りている人が普通に生活をすることによって起こる摩耗や汚損は「通常摩耗」とよばれる。借主は、経年劣化や通常摩耗として判断された部分は原状回復の義務はない。しかし、借主の過失や故意に設備破壊してしまった場合は修繕費用の支払い義務が発生する。

ただし、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」において、経過年数による原価割合の考え方について、つぎのような記載がある。

財産的価値の復元という観点から、毀損等を与えた部位や設備の経過年数によ って、負担割合は変化する。具体的には、経過年数が多いほど賃借 人の負担割合が小さくなるようにする。最終残存価値は 1 円とし、賃借人の負担 割合は最低 1 円となる。

これは、原状回復義務が発生する場合、すべてが借主の負担になるのではなく、経過年数によって借主の負担割合が決まるというものだ。

壁紙やカーペット、フローリングなど設備ごとに耐用年数(使用に耐える年数)が設定されていて、耐用年数を超えた設備の価値は最終的に1円になる。たとえば、壁紙の耐用年数は6年に設定されていて、6年で残存価値が1円となるような曲線(または直線)で負担割合を決めることになる。

(引用:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)

退去時に支払う費用の目安

退去時に請求された費用が妥当か判断するには、退去時の費用の一般的な目安を知っておく必要があるだろう。退去時の費用は物件の場所や大きさ、施工会社、部屋の状態など複数の要因によりさまざまだ。参考として、実際にあった退去費用の事例を2つ紹介していく。

家賃4万円5千円のワンルームマンションに4年住んだ場合

敷金

9万円

部屋の修繕費用

6万円(退去後16万円の追加請求)

ハウスクリーニング費用

2万円

退去時の支払い

0円(敷金返還なし)

 

ひとつ目に紹介するのは、家賃4万5千円、町田市のワンルームアパートに4年間住んだ場合の退去費用の事例だ。

入居時に敷金として家賃の2ヶ月分を預けていたが、退去時の返還は無かった。しかし、後日電話で「洗濯機からの水漏れでフローリングの損傷がひどい。全面張替えになるため修繕費として追加で16万円支払ってほしい」といわれた。

しかし、この洗濯機は元々物件に付属していたもので、入居者は当初の状態のまま使用していただけであることを伝えた。結局、16万円の請求はなく、それ以降、電話が掛かって来ることはなかった。

今回のケースでは、入居者の追加負担はなかったものの、「自分の非ではない」と伝えなければ16万円の請求がきていた可能性が高い。フローリングの傷みなどが発生していても、前提条件が違えば費用負担の考え方が変わるため、請求が妥当かどうかは自分でしっかりと確認しなければ損をすることになる。

また、こういったケースは入居時にあらかじめ部屋の写真を撮っておくことで、トラブル回避につながる。

家賃9万円の1Kに8年間住んだ場合

敷金

18万円

部屋の修繕費

6万円

ハウスクリーニング

3万円

退去時の支払い

0円(敷金9万円返還)

 

退去事例の2つ目は、家賃9万円、品川区の1Kに8年間住んだ場合の退去費用の例だ。

敷金は家賃の2ヶ月分として18万円預けていた。タバコも吸わず、掃除も頻繁にしていたため、修繕費6万円、クリーニング代3は万円で済んだ。残った敷金9万円が返還されることになった。

8年間入居していたため、家具が当たってしまったりした部分は修繕が必要となった。しかし、フローリングや壁紙の耐用年数を超えていたため、費用負担は少額で済んだ。また、まめに掃除をしていたため、クリーニング費用も高額な請求にはならず敷金も返還された。普段から綺麗に使用していれば不当な金額を請求されることはないだろう。

退去時の費用をおさえる4つの方法

高額な修繕費を請求されたり、借主の過失ではない修繕費が不当に請求されたりするなど、退去時の金銭トラブルはあとをたたない。少しでも修繕費やクリーニング費用をおさえる方法を4つ紹介していく。

退去費用をおさえる方法1.あらかじめ自分で掃除しておく

退去時の掃除を面倒に感じる人は多いだろう。業者のクリーニングが入るのに、その前に自分が掃除をする必要はない、という意見もよく耳にする。

しかし、クリーニング業者が入るからといって全く掃除をしないのと、可能な限り自分で掃除をしておくのとでは、じつはハウスクリーニングにかかる金額が変わってくる。特に水回りの掃除は金額に差がでやすい。なぜなら、台所まわりの油汚れや風呂のカビは、借主が清掃を怠った末の過失とみなされ、借主が支払うべき項目として決まっているからだ。トイレや洗面台、フローリングの汚れなども同様のため、退去前の清掃はハウスクリーニング費用をおさえるうえで重要である。

ただし、どれだけ自分で綺麗に掃除をしても、オーナーは新しい入居者に対して「ハウスクリーニング済」と言えるようにしておきたいため、部屋の状態にかかわらず業者にクリーニングを依頼する場合がほとんどである。

退去前の掃除でクリーニング費用の減額を見込める場合があるが、費用がゼロになるわけではないということは覚えておこう。

退去費用をおさえる方法2.穴やへこみを補修する

退去費用をおさえる方法のふたつ目は、穴やへこみを補修することだ。画鋲やピンの穴など小さなものであれば、生活上の自然消耗とみなされ、オーナー負担となる。しかし、釘やネジ穴などの大きなものは入居者負担となりやすい。また、不注意による壁紙のやぶれも借主の負担となるため、補修しておくと修繕費用がおさえられる場合がある。

しかし、長期間居住していた場合は、経年劣化を考慮して、壁紙の価値がほとんど残っていないという評価になる。(国土交通省「原状回復のガイドライン」参照)

壁紙の価値がほとんど無い状態であれば、補修する器具や用具を揃える費用のほうが高くなる可能性もあるため、居住年数を考慮したうえで補修するかを判断したほうがいいだろう。

退去費用をおさえる方法3.立ち合いの時間を夕方にする

退去費用をおさえる方法の3つ目は、退去の立ち合いを夕方にすることだ。昼間の明るい時間に立ち合いを行うと、壁紙の汚れやフローリングの傷などが目立ちやすい。できるだけ夕方に立ち合いをすることで、指摘を減らせる可能性があるだろう。後日、傷や汚れがある事がわかっても、修繕費の連絡をしてくるオーナーは稀である。

ただし、退去時に照明器具を運び出している場合は明かりがつかないため、完全に日が暮れると立ち合いは不可能になる。

退去の立ち合いにかかる時間は、おおむね30~40分程度、長くて1時間で終わるため、逆算して立ち合いの時間を決めるといいだろう。

退去費用をおさえる方法4.内訳明細書をくわしくチェックする

高額な退去費用を請求され、少しでもおかしいと思った場合は、請求書だけでなく内訳明細書を送ってもらおう。何にどれだけの請求が来ているかの確認は重要だ。管理会社やオーナーにもよるが、原状回復のガイドラインを無視して、本来ならば借主が支払うべきでない項目まで請求してきている場合がある。消費者生活センターに相談すると、その金額が妥当かどうか、交渉できそうなポイントなどを教えてくれる。相談の結果に基づいて、費用削減の交渉に入るとスムーズだ。

退去費用の減額を相談する場合の上手な交渉のしかた

退去費用に納得がいかなかった場合、管理会社やオーナーに交渉をするのだが、どういった態度で臨めば交渉が成立しやすいのかを紹介していく。

理性的な態度で交渉する

まずは、初めから喧嘩腰な態度や高圧的な態度は控えた方がいいだろう。不当な請求をされて、怒りたい気持ちもわかるが、最終的な目的は退去費用の減額である。先ほど紹介した「原状回復のガイドライン」に法的拘束力はないため、ガイドラインに則していなくとも罰則はない。そのため、「法的には問題ない」と押し通される場合もある。理性的で論理的な交渉のほうが有利にはたらくケースが多い。

根拠を提示する

退去費用の減額をしてほしいからといって、むやみに値引きをしてほしいと伝えても応じて貰えないことがほとんどだ。

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを元に、自分なりの根拠をもち、消費者生活センターなどに相談して第三者の意見を聞いたうえで、管理会社やオーナーとの交渉に入ろう。

それでも聞き入れられない場合は、過去の裁判の「判例」(消費者生活センター「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」P51~)を探すといいだろう。契約書に記載があった場合でも、不当な請求については契約が無効と判断されるケースがある。判例はネットでも探せるため、同様の判例を見つけたら「裁判になったら請求が無効になる」ということを伝えるといいだろう。

退去時トラブルが起こったら相談できる場所

もし、退去時トラブルが起こってしまった場合、相談できる場所を知っておくといいだろう。当事者の立場ではなく第三者の目線からアドバイスをうけられるのはもちろん、法的な側面からのアドバイスをうけられる。

トラブルの際に相談できる場所

国民生活センター(消費生活センター)

消費生活全般に関してのアドバイスがうけられる

日本賃貸住宅管理業協会

賃貸借問題についてのアドバイスがうけられる

※webフォーム・書面のみの受付

司法書士総合相談センター

法的な側面から敷金問題などの相談ができる

弁護士

法的な側面から幅広い相談ができる

2020年4月に法改正、トラブル減少の見込み

今まで敷金については不動産業界の習慣としてやりとりされていただけで、法律では何も触れられていなかった。ガイドラインは存在してもあくまでガイドであり、そこに拘束力は発生しない。「敷金が返還されない」「高額な原状回復費用を請求された」などの苦情や相談が多いのが実態だ。

しかし、2020年4月に法改正が行われ、敷金の返還や原状回復の負担割合についての明確な定義とルール法律として明文化することになった。(民法(債権関係)の改正に関する要綱案

法律を根拠として協議を進めることができるようになるため、これまでのような敷金返還にまつわる金銭トラブルは減少していくことが予想される。

退去時トラブルを防ぐにはガイドラインを理解しよう!

退去時に起こるトラブルとして「敷金が返還されない」「高額な修繕費の請求」などの金銭トラブルが多いことがわかった。

退去時に行う「原状回復」の費用を、誰が負担するかによって請求金額は変わってくる。原状回復費用の負担割合についての考え方として、「普通に住居しているうえで付いた傷や汚れはオーナー負担」「故意、過失によって付いた傷や汚れは借主負担」となる。

原状回復のガイドラインに沿って、オーナーや管理会社に退去費用を交渉しよう。あらかじめ入居時に写真を撮るなど証拠を残しておくのも有効だ。証拠が無い場合でも賃貸契約書をチェックし、交渉の際は、感情的にならずデータや根拠を示して論理的に交渉するといいだろう。

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この記事の監修者

不動産投資ユニバーシティ代表 志村義明
大学を卒業後、大手シンクタンクに入社。リテール金融ビジネス向けの業務に従事。愛知、埼玉、山梨等で不動産賃貸業を展開し、会社員時代に合計100室超を購入。高利回り物件の投資を得意とし、保有物件の平均利回りは16%超にのぼる。現在は不動産会社(宅地建物取引業者 東京都知事(2)第98838号)を経営。
詳細プロフィール

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